12月6日、アニメ特撮ソングの帝王・水木一郎(74)さんが亡くなられました。水木さんの代表曲として真っ先に上がるのが「マジンガーZ」でしょう。歌詞の最後にある「マジンガー・・・ゼ〜〜〜ット!」のおたけびは、のちに「○○するんだゼッ〜ト!」とコメントなどの締めで使うようになり、テレビ番組やイベント会場で盛り上がりました。

 水木さんの持ち歌は約1200曲、その中には「ゼッ〜ト!」のように力強く叫ぶ歌がたくさんありますが、その“おたけび”の原点とされる曲をご存じでしょうか。それは特撮『超人バロム・1』(‘72)の主題歌「ぼくらのバロム・1」です。

「ぼくらのバロム1」 歌詞)

マッハロッドで ブロロロロー ブロロロー ブロロロー
ぶっとばすんだ ギュンギュギュン
魔人ドルゲを ルーロルロロ
やっつけるんだ ズババババーン
バロムクロスで キューンキュン
ふたりがひとり バロローム
みんなでよぼう バロムワン
必ずくるぞ バロムワン

超人超人ぼくらの バロムワン

水木さんは1968年に歌謡歌手としてデビューしますがヒット曲に恵まれず、‘71年に知人の誘いでアニメ『原始少年リュウ』の主題歌を歌います。最初はおとなしめの曲でした。

その翌年にオファーされたのが『バロム・1』です。一転して力強い曲調でしたが、歌詞を見て驚きます。「ブロロロー!・ズババババーン!」……擬音ばかりで意味がよく分からず、水木さんは「恥ずかしくて歌えない」と渋ります。それでも、この擬音はドラマの中で聞こえる大切な音だと説明を受け、しかも擬音は力強く叫んで欲しいとオーダーされ、言われるがままレコーディングを行います。「ブロロロロ〜〜〜ッ!」は喉を痛めそうなレベルのおたけびでした。

(「超人・バロム1 音楽集CD」/日本コロムビア)

子どもたちの歌声が勇気をくれた

このころ、まだ水木さんはヒーローソングを歌うことに迷っていたそうです。「マンガの歌」だと冷やかされ、しかも顔はテレビに映らなかったからです。

そんなとき衝撃的な出来事が起こります。外で遊ぶ子どもたちが「♪ブロロロ! ブロロロ〜〜〜ッ!」と『バロム・1』の歌を楽しそうに叫んでいたのです。そう、最初は渋ったあのおたけびが子どもたちの心をつかんでいました。水木さんは「僕の歌を歌ってくれている」と感激します。これがアニメ特撮ソングを続けるきっかけのひとつになりました。また、自分が主人公のヒーローになりきり魂を込めて歌うことを心情とし、その後は自然な流れで“おたけび”が増えていったそうです。

♪「変身忍者 嵐! 見参〜!」(『変身忍者 嵐』‘72)

♪「ゴッドマン! ゴッドマン! ゴッドスパーーーーーク!」(『行け!ゴッドマン!』‘72)

♪「セタップ! セタップ! セタ〜ップ!・・・仮面ライダーエーックス! エーックス! エックス〜!」(『仮面ライダーX』‘74)

♪「宇宙の騎士 宇宙の騎士 テッカマ〜ン!」(『宇宙の騎士テッカマン』‘75)

♪「カゲスター カゲスター カゲスター(カゲッ!)」(『ザ・カゲスター』‘76)

♪「ガッキーン アターック!」(『マグネロボ ガキーン』‘76)

 〜〜〜他にも数え切れないほど“おたけび”はあります。おそらく日本の子どもたち全員が何かの曲を口ずさみ叫んでいるでしょう。ただ、水木さんはおたけびがトレードマークのようになっていますが、しっとりと聞かせる挿入歌のバラードや優しい曲調のエンディングテーマにも名曲はたくさんあります。基本的に歌唱力が素晴らしいので、機会があればいろいろな水木節を聞いていただきたいと思います。最後に、水木一郎アニキ、約50年僕たちに勇気をくれる歌を歌い続けてくれて本当にありがとうだぁ、ゼ〜〜〜ット!

(新山蹄雄)

情報提供元: TREND NEWS CASTER
記事名:「 【追悼】アニメ特撮ソングの帝王・水木一郎の「ゼッ〜ト!」おたけびの原点は「ブロロロ〜!」  コラム