経済方面に「五輪の呪い」なる言葉がある。これは五輪開催都市が大会後に経済の停滞や競技施設の維持に悩まされることを指しており、近年では長野やアテネ、ソチなどが代表例とされている。さらに、ブラジルにおける最近の政治的混乱まで「五輪の呪い」とされているが、これはいささか勇み足にすぎるだろう。また、東京においても五輪関係者の政治的失脚や不祥事が相次ぎ、建築計画を返上されたメインスタジアムの設計者が亡くなったこともあり、ネットを中心に「五輪の呪い」がささやかれている。

 しかし、そういった比喩を超えて、実際に参加選手が急死するという、文字通りの呪いがロンドン五輪には存在するというのだ。

 発端は去年11月にフランスのTVメディアで、ベラルーシの陸上選手ユーリャ・バリーキナが交際相手に殺害された事件を報じた際、彼女がロンドン五輪の出場選手であったことと同時に、大会出場選手で16人目の死者であることに言及し、さらに「ロンドン五輪の呪い」と名付けたのである。

 そして12月には、やはりロンドン五輪に参加したホンジュラスのサッカー選手が何者かによって射殺され、つづいて今年もオーストラリアのボート漕手がガンで急死したことから、真面目に呪いを語る人が現れ始めたのである。

 オリンピック選手といえば健康かつ優れた身体能力を持つ若者とのイメージが有り、実際に平均年齢も26歳前後と言われている。また、彼らの死因も大半が事故死や自殺、あるいは殺害というショッキングなものであり、メディアを通じて拡散された呪いの噂は、多くの人々から注目を集めた。

 しかし、ロンドン五輪開催国であるイギリスのメディアは呪いの噂に対して「参加選手は1万人を超えており、若さを考慮しても統計上は年に7人ほど何らかの原因で死亡することとなる」と指摘した。つまり、これまでに18人の死者はさほど驚くべきことでもない、よって呪いは事実無根との記事を公表したのだ。

 英仏メディアの対決となった格好だが、図らずも呪いの噂は五輪出場選手のハードなトレーニングや殺害に至るほど複雑な人間関係、社会的な位置づけなどをあからさまにしたといえる。リオ五輪が始まると、オリンピックはスタジアムの外からも多くの話題を提供するかも知れない。

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【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ