ファッション誌で専属モデルを務めるアイドルが増えている影響もあり、今やアイドルは女子中高生のファッションリーダー的な存在にもなっている。最近では、雑誌やテレビで見せる「衣装」だけでなく、「私服」にも注目が集まるように。常にトレンドを意識しなければならないスタイリストのコーディネートと異なり、アイドル自身が選んだ私服は多種多様。プロ顔負けのファッションセンスを披露するアイドルがいる一方、なかには私服のせいで評価を落としてしまう者も?

 ティーン向けファッション誌『SEDA』5月号のブックインブックが、本来のターゲット層だけでなくアイドルファンの間でも話題だ。登場しているのは、元モーニング娘。の高橋愛。高橋をモデルにこの春のおすすめファッションを紹介するページだが、その見出しでは「青文字界のスーパースター 高橋愛」とべた褒めだ。

 女性向けファッション誌にそれほど詳しくない人のために、簡単に説明しておこう。「青文字界」とは青文字系雑誌界隈のことで、「青文字系雑誌」とは、原宿辺りで見かける「個性的」で「カジュアル」で「ストリート色」が強く「男性に媚びない」ファッションを多く取り上げる雑誌の総称だ。『JJ』『ViVi』『Ray』『CanCam』など「赤文字系」と呼ばれるファッション誌に相対するものとして名付けられた。ちなみに「赤文字」とは、前述の各誌の表紙タイトルに赤やピンクが用いられることが多かった点に由来している。代表的な青文字系雑誌には、『mini』『CUTiE』『sweet』『Zipper』『KERA』『mina』など。もちろん、件の『SEDA』もそのひとつだ。

 とにもかくにも、原宿辺りのファッション好きの「スーパースター」であると、元モーニング娘。の高橋愛が激賞されているのだ。前述した青文字系雑誌にたびたび登場する高橋だが、彼女のファッションに注目が集まるようになったのは、そうしたモデル活動がきっかけではない。モーニング娘。在籍時から、ブログで披露していた「私服」の数々が同世代や少し年下の女性たちから「かわいい」「おしゃれ」と、SNSや口コミで人気になっていったのだ。『SEDA』のブックインブックでも、彼女の「ヘビロテ私服」を紹介。自らのファッションを紹介するアプリ「WEAR」のフォロワー数も135万人と、高橋は群を抜いている。

 その他にも、テレビ番組『お願いランキング』の「アパレル女子に人気のインスタ」で3位、『めざましテレビ』の「春コーデ参考にしたい女性芸能人ランキング』でも3位と、ファッショニスタとしての彼女の人気は本物のようだ。

 現役のアイドルたちにも、私服で注目を集める者が増えている。たとえば、「アイドル おしゃれ」で検索すると、トップで登場するのは、Berryz工房(無期限活動停止中)の夏焼雅だ。以前から「ファッション好き」を公言し、「ハロプロのおしゃれ番長」の異名を持っていた夏焼。いかにもアイドルらしいガーリーなファッションから、パンキッシュなスタイルまで、さまざまなコーディネートをブログや「WEAR」で紹介。確かに、ファッションが好きなのが伝わってくる。夏焼をリーダーとする新グループの募集要項にも、歌やダンス能力以前に、「ファッションが好きでおしゃれ」であることが挙げられていたほどだ。本人のこだわりや事務所サイドの思惑は、よくよく理解できる。ただ、高橋愛のように、自慢のファッションが同世代の女性やファンの「共感」や「憧れ」を集めているかといえば、正直、微妙なところだ。ネット上の評価も「おしゃれ」という声の一方で、「個性的すぎる」「ダサい」という厳しい声が少なくない。「おしゃれに見える」という点で重要なアイテムの組み合わせやサイズ感などにもう少し「こなれ感」が出てくれば、先輩・高橋愛のようなファッショニスタにもなれるかもしれない。

 ファンはもちろんのこと、スタッフやスタイリストなどからも「おしゃれ」と評価が高いのが、乃木坂46の伊藤万理華だ。彼女の私服スナップを見れば、単にトレンドを追っただけの「おしゃれ風」でないことは一目瞭然。使っているアイテムひとつひとつは、派手目な柄ものなど、どちらかと言えば扱いが難しいものが多い。それでも、色やサイズ、素材感をうまく合わせ、ファッション誌に登場してもおかしくないようなスタイルにまとめているのは、センスの賜物。なにより、洋服で楽しく「遊んでいる」のが伝わってくるのも、彼女の着こなしをおしゃれに見せているひとつのポイントだろう。個性的でかわいらしい、まさに今どきの青文字系ファッションだ。

 アイドルらしいガーリーなビジュアルの伊藤万理華に対し、金髪ショートヘアのボーイッシュスタイルで人気なのが、プティパ -petit pas!-の篠崎こころ。『Zipper』の専属モデルとしても活躍中で、ストリート系ファッションが好きな女子中高生の注目を集めている。伊藤万理華や篠崎こころよりも、もう少し「大人」なスタイルの参考にするなら、prediaの村上瑠美奈の私服などもおすすめだ。

 かつて、アイドルたちにとってプライベートが垣間見えてしまう私服は、隠すべきものだった。それが今では、同性や同世代の共感や憧れを得るための、強力な「武器」になりつつある。「アイドル✕ファッション✕原宿」をテーマにしたイベント「iCON DOLL LOUNGE」も回を重ね、この4月24日には、会場を日比谷野外音楽堂に拡大して開催。アイドルたちの私服を紹介したストリートスナップ雑誌『idp magazine』も、好評につき第2弾が4月23日に発売される。今後、アイドルにとって「ファッション」はますます重要な要素となっていくだろう。

 アイドルひとりひとりの個性やセンスを見ることができる「私服」。それはまさに、多様さでより多くのファンの心をつかむグループアイドルの魅力とも共通している。ならば、プロのスタイリスト顔負けのセンスを見せるアイドルがいる一方で、「ダサさ」に磨きをかけるアイドルがいてもいいのかもしれない。

【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第23回】

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ