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2月8日、阪神キャンプでこんな光景が見られた。走者を置いた実戦形式の内野守備練習で、前進守備を敷いていたショート鳥谷が打球を処理し、軽快なフットワークで本塁に送球した。三塁走者は打球が転がるのと同時にスタートを切っていたが、完全にアウトのタイミングだった。しかし、捕手が三塁走者にタッチをした瞬間、ホームベース後方に立っていた審判が「セーフ」をコールした。矢野燿大作戦兼バッテリーコーチが慌てて審判のもとに歩み寄り、“確認”を行う。
捕手の左足がホームベースの一部に乗っていたという。ランナーの走路を妨害したと見なされ、セーフと判定されたのだ。
今シーズンより、プロ野球のルールが一部変更された。守備側の選手がランナーの進路を妨害した場合は「セーフ」になる。本塁ベース上での捕手と走者の激突を防ぐためのルール変更で、今後、捕手はホームベースを完全に空けておかなければならない。したがって、捕手は本塁ベース前に立ち、捕球後、ミットを動かしてタッチすることになる。俗に言う、“追いタッチ”のかっこうだ。
「昨季で退団したマートンが本塁ベース前で相手捕手を何度も突き飛ばし、病院送りとなったケースもありました。スライディングを試みた走者が捕手のブロックに合い、故障することもあり…」(球界関係者)
ホームベースを完全に空けておくルールになれば、走者はスピードを緩めずに突っ込むこともできる。ただでさえ、“追いタッチ”では遅れてしまうのに、だ。
キャンプを見ると、どの球団も新ルールの確認を兼ね、本塁送球の連係プレーに時間を割いていた。2月2日、巨人も派遣審判とともに守備練習で確認を行ったが、高橋由伸監督は審判団に「送球が一塁方向に逸れ、捕手がホームベースに寝そべるように戻った場合も適用されるのか」など、実戦で起こりうるケースを具体的に挙げ、長く話し込んでいた。
「審判団は『状況によってはVTRで確認する』とも各球団に伝えています。1点を争う場面になったら、走路妨害かどうかで、相当もめると思われます」(プロ野球解説者)
新ルールでは送球が逸れ、結果的に捕手がホームベースをふさいでしまった場合も「走路妨害」と見なすという。捕逸により、投手がホームベースのカバーに向かったときや、スクイズプレーも同様である。これまでタイミング的に「アウト」だったケースも「セーフ」になるだろう。
内野手はより正確な送球コントロールとスピードが要求される。捕手が追いタッチをやりやすくするため、野手は「向かってやや右側」に狙って投げなければならない。
「審判によって、走路妨害かどうかの判断が異なる可能性も高い。内野手は前進守備の位置も今まで以上に前方に変えなければなりません。そうなると、強い打球を捕球できなかったなんて場面もあるかもしれない。三塁に走者を置いたら、1失点を覚悟するスタイルに変わるかもしれません」(前出・同)
怪我防止は重要だが、各チームとも総失点を増やすのは必至。あくまでもキャンプ第2クールを見た限りだが、この新ルールにまだ適応できない捕手も実際にいた。繰り返しになるが、新ルールの確認プレーの後、どの球団からも退団したマートンを恨む声が聞かれた。冗談だと思うが、憂さ晴らしでセ5球団が「阪神戦で猛打爆発」なんてことにならなければいいのだが…。
【記事提供:リアルライブ】