「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録されて2か月。メディアは、歴史問題で対立する韓国との争いにばかり目が向けられてしまったが、落ち着きを見せたところで、今回登録された世界遺産の“本当の価値”を書籍でまとめてくれたのが、東進ハイスクールの人気講師であり、歴史コメンテーターとしても活躍する金谷俊一郎氏だ。先月、サークルKやファミリーマートなどコンビニ限定発売の書籍『明治日本の産業革命遺産』(アントレックス)を上梓した金谷氏に、その真意を聞いてみた。

 −−コンビニ向けに世界遺産の本を作ろうと思ったきっかけは?

 金谷「世界遺産とは、本来ユネスコが『後世に残しておくべきだ』と考えた遺産のことなので、後世に残すためには、一人一人が世界遺産について知っておく必要があります。なので、普段本をあまり読まない人に語りかけたい、書店に足を運ぶような層以外の方にも読んでもらいたいと思い、コンビニ向けの本を作ることにしました」

 −−テレビでも度々世界遺産についてコメントなされていますが、特に今回の明治日本の産業革命遺産に注目されているわけは?

 金谷「ズバリ2点あります。まず、この遺産は、『日本のものづくりのすごさ』が凝縮されたもので、だからこそ、世界が後世に残そうと思ったことを分かって下さい。そして、もう一つは『日本再生』です。幕末、欧米に植民地侵略される危険すらあった日本が、わずか30年で世界の大国にまでなった。その後、第二次世界大戦ですべてを失った日本ですが、今度はわずか20年強で経済大国になった。その底力のすごさがこの世界遺産に凝縮されています。今、日本に元気がないという人もいるけど、歴史に目を向ければ、日本はドン底から、何度も自力で立ちあがってきた国です。これからもまた自らの力で、元気を取り戻す可能性を秘めているのです」

 −−今回の遺産群は観光スポットとしても興味深いものでしょうか

 金谷「そうですね。そこにあるものは一見すると、ただの工場跡や、石碑かもしれません。ただ、その場所は100年以上前に、実際に歴史を変えるような偉業とともに、多くの人々がいた場所なのです。それを想えば、格別の感慨に浸れるでしょう。もちろん事前の予備知識が無いと、その感慨も受けられないので、ぜひとも本書で予習をしてから行ってもらいたいと思います」

 −−特に本の読みどころを教えて下さい

 金谷「なぜ、その遺産をユネスコが後世に残そうと思ったのか。その理由の部分をかみしめて欲しいと思います。そこがわかると、自然と遺産にも愛着が湧くし、大切に残していこうという気持ちも起こるし、足を運んだときに楽しさが違うはずです」

 −−ちなみ、今回の世界遺産認定には、韓国から物言いがつきましたが、金谷氏の立場としてはどのようにお考えでしたか?

 金谷「正直言いまして、世界遺産は、格付けランキングじゃないのだから、物言いなんかつけなくて、後世に残して自国の主張を言い続ければいいのにと思いました。原爆ドームが世界遺産に登録されようとしたとき、アメリカが反対しましたが、単に賛成・反対するのではなく、その遺産を通じて、両国が互いの国を考えるきっかけになれば良いと思います」

 −−最後に、読者へのメッセージをお願いします

 金谷「世界遺産に登録されるには、それなりのスゴイ理由があります。それを知ると世界遺産にもっと親しみが持てるようになります。行ってみたくなります。自国のすごいものを知ることは、とっても意義深くて、何より楽しいものですから、是非とも本書を手に『世界遺産ハンター』の旅に飛び出してください」

■『明治日本の産業革命遺産』(アントレックス)全国のファミリーマートやサークルKサンクスにて、発売中

■金谷俊一郎 歴史コメンテーター。歴史のみならず、日本の様々な物事に関して分かりやすい解説に定評があり、テレビやラジオ、全国の講演会にて活躍。20年以上東進ハイスクールにて日本史トップ講師として活躍し、多くの支持を得ている。テレビ出演に、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)、『ネプリーグ』(フジテレビ)、『ひるおび!』(TBS)、『一泊二日で五運成就!? よくばり開運ツアー』(テレビ朝日)など。

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ