ゲーマーがプロのレーサーになる。そんな時代が到来している。

 20日まで千葉県の幕張メッセで開催している東京ゲームショウで17日、SEC(ソニー・コンピュータエンタテインメント)のブースで、プレイステーションで展開している、レースゲーム「グランツーリスモシリーズ」を使ったドライバー発掘・育成プログラム「GTアカデミー by 日産×プレイステーション 2015」についてのメディアセッションが行われた。

 同プロジェクトはグランツーリスモのトップゲーマーを本物のレーサーに育成しようというプログラムで、既にヨーロッパでは08年にスタートしている。ドライバー選考としては最初に『グランツーリスモ』を使用するのが大きな特徴だが、その後は体力測定や、実車を使ったトレーニング、フィジカル強化など、本物のレーサー育成プログラムで訓練する。過去のアカデミー卒業生は既にプロレーシングドライバーで活躍している選手もおり、第1回ヨーロッパ大会チャンピオンのルーカス・オルドネス選手は、2014年から日本のスーパーGTにも参戦。2011年ヨーロッパ大会チャンピオンのヤン・マーデンボロー選手に関しては、F1への登竜門と言われるGP2シリーズに初めて参戦し、ゆくゆくはF1参戦があるのではと噂されているとか。

 会場にゲストとして登場したスーパーGTのGT500クラスのドライバー・柳田真孝選手は、最近の『グランツーリスモ』はプロドライバーでも使っていると話す。同作にはイギリスの「シルバーストン・サーキット」や、日本の「富士スピードウェイ」など、実在のコースが忠実に再現されており、車の挙動もクラッシュがないだけでリアルな動きをするという。もはや振動やGがないだけで実車と変わらないようになって来ているというとで、柳田選手は「もうシミュレーターですね。初めて行くコースでは必ず(グランツーリスモを)使います」とコメントした。また、通常レーサーになるにはレーシングカートから始めて、10年以上の時間とお金がかかるということで、「とにかくすごく大変なんです。(ゲームでの育成プログラムがあると聞いて)僕の苦労した10年はなんだったんだと正直思いました(笑)」と自虐気味に語った。

 日本での選考は今年の7月に初開催。選考方法はまず、『グランツーリスモ6』を使ったタイムトライアルをし、オンラインやイベント会場にて成績上位20名を選出。さらにその20人が国内決勝「ジャパンファイナル」に進み、上位6名がイギリスのシルバーストン・サーキットでの「レースキャンプ」への出場権を獲得するというものだったそう。

 さらに、シルバーストン・サーキットでインド、日本、タイ、フィリピン、インドネシアの計30人から、アジア地域の代表者1名が選考された。残念ながら最終選考で優勝したのは日本代表選手ではなく、フィリピンの選手で、優勝者はヨーロッパなどほかのエリアの代表者とチームを組んで、いきなり、2016年のドバイ24時間レースに出場するそうだ。

 会場にはジャパンファイナルに入賞し、日本代表としてレースキャンプへと進んだイ・ジョンウ選手と高橋拓也選手の2名も登壇。ふたりとも20歳で、実車でのレース経験は全くなかったと話す。

 イ選手は日本留学中になんとなくエントリーし、レースキャンプまで残ってしまい、家族から「勉強せずに日本でなにやってるんだ!」と怒られたそうだ。高橋選手も趣味のレース観戦に出かけた先で、たまたま予選が開催されていたので参加しただけとのこと。

 よく「ゲームしてないで勉強しなさい!」と怒られた人は多いと思うが、今はゲームで別のスキルが磨ける時代にまでなっている。高橋選手は「GTアカデミーによって、モータースポーツ、ドライバーの裾野がかなり広がった。僕たちは実際のレースを戦いながら、彼らや、みなさんが参戦してくるのを待っている」と未来のレーサーにエールを送り、セッションを締めくくった。来年同イベントが開催された時は、腕に覚えのある人は参加してみてはどうだろうか? もしかしたらレーサーへの道が開けるかもしれない。(斎藤雅道)
 

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ