フジテレビの看板バラエティ『めちゃ×2イケてるッ!』が来年、20周年の節目を迎える。そのルーツは、1992年から深夜枠で放映された若手のネタ見せ番組『新しい波』にまでさかのぼる。ここで跳躍したナインティナイン、極楽とんぼ、よゐこ、オアシズ(光浦靖子・大久保佳代子)、本田みずほが番組終了後、新番組『とぶくすり』のレギュラーに抜てきされたのが、きっかけだった。

 『とぶくすり』はおよそ半年で打ち切りになり、メンバーは後番組でお色気路線の『殿様のフェロモン』に続投。こちらも早期打ち切りを余儀なくされ、後続番組『とぶくすりZ』をへて、95年10月、『めちゃ2モテたいッ!』が開始した。

 このとき、本田はメディアから姿を消した。交際していたよゐこ・濱口優とのツーショット写真が写真週刊誌に掲載され、芸能界引退に追い込まれたことが原因だと、一部でささやかれた(現在は、吉本新喜劇の座員)。

 “めちゃモテ”になってから、武田真治、雛形あきこ、鈴木紗理奈が参加。翌96年、“めちゃイケ!”に改題されて、ゴールデンタイムに進出。この4年後にようやく、『新しい波』でクビを切られた大久保が合流した。

 今でこそ引っ張りだこの大久保だが、当時の肩書は「OLの大久保さん」。コールセンターで働きながら芸人を続ける、2足のわらじシステムだった。その合間をぬって単発企画に協力していたが、番組内のポジションは“半分素人”。そんな大久保がついに、千載一遇のチャンスをつかんだ。99年に展開された“加藤浩次との一大恋愛叙事詩”の3部作だ。

 これは、大久保がOLで貯金した50万円を加藤が借りて、元カノに借金を返済するという第1部にはじまり、第2部では、加藤と大久保の縁談が成立。最終章となる第3部では、ふたりの逢瀬が写真週刊誌にスクープされ、結婚を決意するが、すべては活動を休止していたオアシズの復帰という売名行為だったという、壮大などっきり物語だ。ここで腕を試され、演じきった大久保は、レギュラーの座をゲット。遅まきながら、光浦と肩を並べた。

 その相手を務めた加藤のターニングポイントといえば、やはり相方・山本圭壱が犯した例の事件だ。それまでも、ステージで下半身を露出して書類送検になったり、交際していたホステスに中絶を迫ったことが告発されるなどして、お騒がせ芸人だったが、06年には、未成年女性を相手に飲酒、猥褻な行為があったとして、事務所を解雇。芸能界から追放された。今年、ソロで活動を再開したが、“めちゃイケ”への復帰は発表されていない。

 しかし、それを上回る番組史上最大のピンチといえば、“ちっちゃいおっさん”ことナイナイ・岡村隆史の休業にほかならない。10年6月、病気療養を理由に岡村が芸能活動を休止。このピンチをチャンスに変えるべく、番組は初の壮大なレギュラーオーディションを開催した。プロ・アマ問わずの参加条件に一般人も食いつき、1万人以上の応募が殺到。明石家さんま、ザ・ぼんちのおさむといった大御所も、本気で受けた。そんななか、ドリームチケットを手にしたのは、ジャルジャル=後藤淳平&福徳秀介、たんぽぽ=川村エミコ&白鳥久美子、敦士、重盛さと美、三中元克の7名。一般人だった三中の合格は、青天のへきれきだった。

 20年の重みがあるぶん、大好評企画を挙げれば枚挙にいとまがないが、そのほとんどはやはり、“めちゃイケの守護神”岡村が肝となっている。SMAP・中居正広、モーニング娘。、AKB48グループ、EXILEグループ、少女時代、ビッグダディなど、その時代を象徴する人と次々と本気でコラボ。なかでも、『笑っていいとも!』を機に親しくなった中居とは、“ワンハンドレッド”(ナインティナインの99+中居の1人=100)を結成。今なお続く“日本一周”シリーズを、ロングセラーに導いた。そのいっぽうで、サッカー、ボクシング、女子プロレス、劇団四季などとも、マジコラボ。身体能力の高さをいかんなく発揮し、笑いと感動を同時発信した。

 “めちゃイケ”の歴史は、岡村の足跡といえなくもない。しかし、笑いはひとりの力で成立しない。ヒットの影には、絶対的ブレーンの企画統括・片岡飛鳥氏がいて、相方の矢部浩之がいて、信頼できる共演者がいて、支えた視聴者がいた。四半世紀にわたって挑戦を繰り返してきた“めちゃイケ”。来年16年に投下するのは、いったい何か−−。

(伊藤雅奈子=毎週木曜日に掲載)

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ