「ジャージー・ボーイズ」の画期的な公演、脇役として支えてきた俳優4人が…
1960年代に「シェリー」などの大ヒット曲で知られる米国の4人組ボーカルグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の成功と挫折を描いたミュージカル「ジャージー・ボーイズ」が東京・日比谷のシアタークリエで上演中です。2016年に初演され、今回は4度目の上演ですが、9月4、5日に画期的な公演があります。長年、脇役として「ジャージー・ボーイズ」の舞台を支えてきた4人の俳優が主役のフランキー、トミー、ボブ、ニックを演じるのです。
フランキーに大音智海、トミーに加藤潤一、ボブに石川新太、ニックに山野靖博の4人が演じます。数多くの舞台に出演していますが、大きな舞台では脇役が多く、彼らの名前を知っている人は、ミュージカル通と言っていいでしょう。そんな彼らによる公演の発案者は演出家の藤田俊太郎さんです。演出家蜷川幸雄さんの弟子で、若き日には俳優もしていた藤田さんは、才能豊かな端役を主役に起用しての公演の構想を抱き続けて、ようやく実現しました。そういえば、蜷川さんも演出した帝劇の舞台「近松心中物語」で主演の平幹二朗さんが腰痛で降板した時、周囲の反対を押し切ってアンサンブルで出演していた無名の本田博太郎を代役に起用したことを思い出します。頑張っている俳優を大事にするあたりは、師匠譲りかもしれません。
当初は1回限りの公演の予定でしたが、それが2回となり、しかも、2回とも前売りは完売しています。「ジャージー・ボーイズ」を見続けてきたファンは、脇役として舞台をしっかりと支えてきた4人の実力、魅力も知っているのでしょう。商業演劇である東宝の公演で、今回のようなスターに頼らない公演は珍しいことですが、1度だけに終わらず、2度、3度と継続していくことが、次代のミュージカル公演の在り方に向けて大事なことかもしれません。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)