松村雄基「殴った方の痛みを感じる年になって来た」主演舞台で日系マフィア役/連載2
俳優松村雄基(61)が、8月26~31日に東京・日本橋の三越劇場で舞台「祖国への挽歌~日系人マフィア モンタナジョーの生涯」に主演する。実在した日系アメリカマフィア、モンタナ・ジョーを演じる。日系2世としてカリフォルニアに生まれ、第2次世界大戦中は強制収容所に入れられ、日系人の442部隊に所属してヨーロッパ戦線で活躍した。19年、23年に次ぐ2年ぶり3度目の上演に臨む、松村に聞いてみた。【取材・構成=小谷野俊哉】
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モンタナ・ジョーは1919年に米カリフォルニア州ストックトンに生まれ、2004年に84歳で、その生涯を閉じた。
「僕が演じるのは、第2次世界大戦の戦前、戦中、戦後。全く知らない想像でしかない時代。でもちょっと、今の時代に似てる部分があるんですよね。人種差別の問題とか、アメリカファーストで自国だけを第一と思うような人たちが台頭して、最終的に大国同士がぶつかっていく。そういうのは、戦後80年の時を経ても人間ってやっぱり変わらないんだなと思う。そういう普遍的な問題もある。激動の時代を腕一本で誰にも頼らずに生きていこうという生き方は、今の時代にも必要だと思うんですよ、それにしてもね。差別、今よりもっとひどかったと思うんですよ。日系人というだけで、12万人が強制収容所に入れられたんですから」
第2次世界大戦でアメリカと戦った日本の血を引いているというだけで、いわれなき迫害を受けた。
「一世で渡っていた人たちが、せっかく20年、30年かけて築いた土地を一夜にして没収されて、いきなり監獄、収容所ですからね。そんなことってあるんだなぁと、今だったら想像つかないですよね。その当時の差別とかは本当に大変だったろうなと思うんです。だけど今も一緒で、そこだって分からないじゃないですか」
現代は世界中から、リアルタイムでニュースが入って来る。ガザ地区やウクライナの戦禍の映像が、日本のお茶の間に映し出される。
「日本だって台湾有事があるし、東海沖の地震があるかもしれませんし、気候もめちゃくちゃじゃないですか。そういう意味じゃ、トランプ関税のかけ方なんて完全に差別じゃないですかね。何度、大臣がアメリカまで行ったんですか。日本だから、あんなことをされるんですかね。ああやって、大国が本当に自分の国が危ないなと思ったら、そういうことになっちゃうわけですよね」
19年、23年に次ぐ、3度目の上演。その間に世界の情勢は、より危機感を増してきた芝居の中で演じる80年前の過酷な現実が、今も繰り返されている。それでも、演じる楽しさにあふれている。
「楽しいというか、役でなければできないことがありますよね。マフィアのボスの役で、みんなを従えてと。そういう時は爽快感をちょっと感じるんですけどね。でもやっぱり、いい年になりましたので、若い時のけんかして勝手をするみたいなだけではなくなりました。殴った方の痛みとか、そういうものを感じる年になって来ましたので、やればやるだけ難しいなと思います」
(続く)
◆松村雄基(まつむら・ゆうき)1963年(昭38)11月17日生まれ、東京都出身。80年テレビ朝日「生徒諸君!」で俳優デビュー。84~85年TBS「スクール☆ウォーズ」。88年映画「恋子の毎日」。94年(平6)NHK連続テレビ小説「ぴあの」。99年舞台「ミュージカル 南太平洋」。18年映画「聖域 組長の最も長い一日」主演。178センチ。B型。