終戦の日に無料ライブイベント「HAL SUMMER LIVE~非戦~」を初開催したHAL(左)

音楽家で著述家のHAL(56)が「終戦の日」の15日、東京・渋谷PLEASURE PLEASUREで無料ライブイベント「HAL SUMMER LIVE~非戦~」を初開催した。戦後80年の節目に、音楽を通じて「戦わない選択」を伝えることを目的に企画。「非戦とは思想ではなく、生き方の選択」と語るメッセージが、会場を包み込んだ。

HALは沖縄・コザ(現沖縄市)で育ち、戦争の記憶と沈黙の中で生きてきた。ライブでは、71歳で亡くなった坂本龍一さんの「非戦」の思想を受け継ぎ、「武器より楽器を」「暴力より表現を」「支配より共鳴を」といった言葉を、音とともに会場に力強く響かせた。

そしてHALは、坂本さんとの縁を振り返りつつ「誰の命も奪わない生き方を、音楽で伝えたい」などと語り、来場者らと静かに共鳴。HALの代表曲14曲のほか、特別ゲストに元オフコースのシンガー・ソングライター松尾一彦を迎え、祈りと記憶を紡ぐようなステージを展開し、満席の観客が耳を傾けた。

同イベントはクラウドファンディングによって一部運営費をまかない、無料で開催した。HALは「終戦の日が流れる限り、何十回でも続けていきたい」と語り、非戦の活動を継続させるべく12月5日に東京・恵比寿ガーデンホールでの開催も発表。戦争の記憶を風化させず、音楽で「非戦」を継承する。この日のライブは静かで力強い一歩となった。

◆HALの話 

音楽家として活動しながら、カウンセラーとしても29年間、延べ20万人以上の皆さまと向き合ってきました。私にとって「音楽」とは、心の予防薬です。

今回のテーマ「非戦」は、決して国と国の戦争だけを意味するものではありません。人は誰しも、心の奥で何かと戦っています。パートナーとのすれ違い、家族や職場での衝突、地域社会の中での対立、日本国内での分断、そして世界規模での争い--。その“戦い”は、ミクロからマクロまで、形を変えて存在しています。

私はライブの中で、「本当の非戦は、自分と戦わないことから始まる」というお話をしました。自分の心を責め続けたり、許せなかったりすると、その戦いは外側にも広がっていきます。逆に、自分との和解ができれば、その波は人にも社会にも届いていく。音楽はその橋渡しになれると信じています。

カウンセリングは「心の薬」ですが、音楽もまた心を癒やし、守る力を持っています。病気を完全に治すことはできなくても、音楽が心の予防薬となり、聴いてくださった皆さんの日々の中で小さな平和の芽が芽吹くことを願っています。

お盆の最中にもかかわらず、多くの方が足を運び、静かに耳を傾け、共に歌ってくださったことは、私にとっても忘れられない時間となりました。今回のライブが、そのきっかけのひとつとなれば、これ以上の喜びはありません。

◆HAL(ハル)1968年10月18日、沖縄県出身。琉球王朝時代から続く正当なユタ(琉球王国が制定したシャーマン)。05年から拠点を神奈川県に、09年から東京に移して活動し、同年メジャーデビュー。年間90本近いライブ活動や講演会を行っている。17年からは海外での演奏活動も始め、台湾やニューヨークなどでも活発にライブ活動を行っている。18年から米ツアーを開催。TBS系「サンデー・ジャポン」、フジテレビ系「HEY!HEY!HEY!」など数々のテレビ番組にも出演。スピリチュアル・アーティストとして、書籍出版、絵画、写真など、幅広く活動を行っている。

情報提供元: 日刊スポーツ_芸能
記事名:「 HAL、終戦の日に坂本龍一さんの思想継ぎ無料ライブ「非戦」初開催 松尾一彦もゲスト登場