加藤のデモテープにリンが涙した理由とは…8・22デビュー/加藤登紀子&ノゾミ・リン<1>
日本生まれで中国、米国にもルーツをもつノゾミ・リン(24)が22日に、今年デビュー60周年を迎えたシンガー・ソングライター加藤登紀子(81)プロデュース曲「渡り鳥の子守歌」で配信リリースデビューする。同曲は業界初となる日本語、英語、中国語の3カ国語同時リリース。CDは9月17日発売となる。加藤とリンが、日刊スポーツの取材に応じた。【取材・構成=川田和博】
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-2人が出会ったきっかけは
加藤 60周年記念コンサートを「ハルビンでしたいな」っていうのを聞いてくださったリンさんのお母さんが、いろんな意味で尽力してくださって実現したんです。それで、ノゾミさんが音楽活動していると聞いたのね。ハルビンのコンサートは「若いアーティストを紹介するような機会にしたい」というのが私にはあったので、歌を聞いたら、それがすごく良かったんです。テイチクスタッフにも聞いてもらったら「リリースしましょう」ということになった。だから会う前から耳友達なんです。
-聞かせていただきましたが、意味が分かるからか、日本語は少しもの悲しさを感じました。英語は映画のエンディング曲のような壮大さがあって、中国語が一番力強く聞こえました
加藤 中国語は声のパワーが変わるんです。「見上げてごらん夜の星を」を日本語と中国語でレコーディングしたことがあるのですが、中国語で歌ってる時の方が、ボリュームが上がるんです。中国語は声が響くんですよね。
-言語が変わるだけで曲のイメージがこんなに変わるとは、正直思っていませんでした
加藤 英語は元々メッセージの強い言葉で、日本語のように、行間に思いをにじませるようなものではない。だからちょっと飛躍しているんですけど(笑い)英語は私も分かるけど、中国語は日本語とどういう関係になってるのかが、分からない。
リン ほぼ日本語の通りで、近いです。中国語は2人の先生に訳してもらいましたが、その1人は以前ご一緒させていただいて、詞の書き方がとても好きなんです。
-英訳はリンさんが担当したと聞いていますが
リン はい。加藤先生が日本語で詳しく説明してくれて。それがすごく助かりました。
加藤 日本語は短い言葉で語っていて、そこから先は「好きに想像してください」というような部分もあるでしょう。説明をしなくて通じるようなことも、文章で書くように説明していくと、翻訳しやすくなるんですね。
-この曲のテーマというか、伝えたいメッセージはどんなことですか
加藤 「明日の見える地図はどこにもない」というのがこの歌のテーマでね。「あなたが明日行く道はこうですよ」というのはどこにもない。でも、「なぜか旅をすることがもう決まっていた」ような感じがするってあるでしょう。「この旅をするために、生まれてきたんじゃないかしら?」って。そういうことを歌にしようと思った。
-リンさんは、この曲を初めて聞いた時の印象は
リン もう涙が…。すごいすてきで。ボーカルとギターだけのデモを送ってもらって、それを聞いて、自分が生きてきた人生にすごく合っている曲だなって。自分の心の思いと同じストーリーで本当にびっくりしました。
加藤 この曲はメロディックで、歌が遠くへ飛んでいく感じっていうのかな。それは心がけたつもりなんです。細かいところは言葉によって変わってくるんだけど、この曲には大きなメロディーラインがあるんです。ずっと空を飛んでいくような心地っていうのかしらね。空を飛んでいく鳥の心地を歌にしたかった。(つづく)
◆ノゾミ・リン 2000年11月6日、東京生まれ。幼少期を日本と中国、高校はカナダ・バンクーバー、大学・大学院は米ニューヨークで過ごし、現在はロサンゼルス在住。11歳で作曲を始め、18年に4曲入りアルバム「WEST COAST」をインディーズで配信リリース。