お正月に実家に帰省すると、「背が縮んだ」「耳が遠くなった」「もの忘れが激しくなった」「腰が曲がった」「足腰が弱くなった」など、「親の老い」を実感し、寂しくなったと同時に、これからの親の暮らしについて真剣に考えようと、思った人も多いだろう。


 そんな、親の(老後・介護の)ことを身近に迫った問題として考える40代~50代の子世代とその親世代に役立つセミナーやトークセッション、相談コーナーを設けたイベント『銀座オヤノコト.塾』が14日、東京・東京交通会館12階ダイヤモンドホールで行われた。


 同イベントは、高齢期を迎えた親を持つ子世代=「オヤノコト(R)」世代とその親世代のカップリング=「オトナ親子」を対象に「親子コミュニケーション」の情報提供や関連商品・マーケティングを展開する『株式会社オヤノコトネット』(代表取締役:大澤尚宏)が主催。「歳を重ねるごとに不安を感じない社会の構築」という企業理念を発信し、親のこと・老後のことに役立てていただくことをコンセプトとしている。


 2009年11月に創業し、今年で10年になる『株式会社オヤノコトネット』の代表取締役で『オヤノコト』編集長の大澤尚宏氏は、親のことを思う時期について、「個人差はあるでしょうけど、子供が30歳半ば過ぎで親が70歳過ぎ。ご両親のどちらかが病気になったり、亡くなったりしたあたりがひとつのターニングポイントになります。「そろそろ親のこと」を商標にしているのも、気付きを与えるためのキーワードなんです。備えたい気持ちはあるのに、どこから手を付けていいかわからない、誰に相談していいかわからない、というのが本音ではないでしょうか?そこで、わたしたち『オヤノコト』は仕事や家族のことに日々忙しい「オヤノコト」世代に寄り添い、「読者は家族」「読者は友人」と、語る。





(『株式会社オヤノコトネット』の代表取締役で『オヤノコト』編集長の大澤尚宏氏)


 離れて暮らす親が「老老介護になった」「一人暮らしになった」でも、何からどう手をつけていいのかわからない。


 ネット、スマホを繰っても、この情報化社会なのに、自分がピンポイントでほしい情報がなかなか見つからない。


 さらに言えば、見つけたサイトは信用できるのか。


 そんな風に感じている人は多い。


 そこで、ある日突然「親のこと」に直面した子世代の、その具体例を大澤氏は紹介する。


 ケース1


 自宅の庭で父親が倒れた。70歳過ぎた母親は、父親が運転する車で買い物などに行っていた。「お父さんが車の運転ができなくなったら、買い物にいけない。どうしよう。原付買おうかかしら」と相談にきた。


 ケース2


 「昼間、一人だから食事も作らなくなり、お嫁さんが作りおきした食事も食べなくなった。介護離職するわけにもいかずどうしよう」


 大澤氏は、「これは、実際に、同社に相談があったケース。みなさまならどうしますか?弊社がアドバイスしたのは、ケース1では、電動の三輪自転車があることを伝えました。ケース2では、自立型のサ高住(サービス付き高齢者住宅)や老人ホームを勧めました。


 たとえば、ケース2の場合、(多くの人は老人ホーム=介護が必要になったら入るところというネガティブなイメージを持ちがちだが)元気なうちから入って安心を買うというサ高住や老人ホームがあるんです。そこで、ためしに体験入居2週間したら、その母親は、「ここでいいわ」と、満足されたそうです。老人ホームは暗いイメージあったので入りたくなかったけれど、世代が近い人がいる、サークル活動があるから楽しい」と、具体例を入れて説明する。


 このように、親の車運転。老人ホームへの呼び寄せなど、個人では誰に相談していいかわからないということがあるが、ケース1のような場合に直面しても、「電動三輪自転車」を知らないと、検索しても「電動三輪自転車」には行き当らない。


 このような親のためのグッズについて、大澤氏は、「まだまだありますよ。例えば、高齢者の運転で、ブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故のニュースが連日のように流されていますが、後付けでアクセルブレーキの踏み間違え防止するような装置も、当社を創業した約10年前から売られていました。たしか、今は値段は4万円ぐらいです。でも、なかなか知られていない」と、強調する。


 さらに、大澤氏はケアについての具体例も説明してくれた。


 難聴を放置すると認知症になる確率がぐんと上がる。


 聞こえないから会話ができない。


 できないから話かけない。


 人としゃべらなくなる。部屋に閉じこもる。


 結果、認知症になる確率が上がる。


 こういう場合は、なるべく早く補聴器を使うか耳鼻咽喉科に行くことを勧めるが、補聴器もトラブル多いので、いい店を選ぶのが大事。



 さらに、怪我や事故も気になるだろうが、事故と言えば外というイメージだが、実は統計を見ると77%が家庭内での事故。


 しかも1位がリビング。(平成27年高齢社会白書より)


 高齢になると、ちょっとした段差でも足がもつれて転ぶ。


 筋力が弱っていて受け身がとれないから骨折。


 けれど、実は倒れにくい靴下がある。


 履くとつま先が上がるという優れものだが、介護ショップにおいてあることが多いから目立たないし売れない。


 それと、こんなケースもあったそうだ。


 40代の男性が、帰省した際に母親のクルマの助手席に乗ったとき、母親は目の前の信号が赤信号なのに話に夢中になっていて止まらなかった。


 男性が心配になって、近くの病院に見せたところ、「お母さん年だからね、大丈夫ですよ」と、医者からは言われた。


 だが、心配性の男性は、もっと大きな病院に行って詳しく調べてもらったら、軽度の認知症だったことが分かったというのだ。


 大澤氏は、「信号の話、自転車の話など、具体例がいっぱいあるのが大事。体験談をもとに、こういうケースにはこういう対応をしたという蓄積が大事なので、読者レポートで紹介したいですね。安心・安全で役立つ情報を提供していけるサイトを目指しています」と、今後のサイトの方向性について言及する。


 電動三輪自転車も読者と一緒に試乗してみて、記者の感想や読者の意見を掲載する。老人ホームもそう。


 息子が大学入学して都心で一人暮らしさせるマンションを探すのは、検索サイトでいい。でも、70歳、80歳、90歳の親の終の棲家となる可能性すらある、親のための住まい探しだからこそ、慎重に選ぶべきです。


 通販のカタログからチョイスする感覚とは異なりますよね。


 親を入れた時にちゃんと大事にしてもらえるのか。介護やケアはハードじゃなくてソフトが大事なんです。


 そういう体験記を掲載していきます。編集部員は40代や50代多いので、「自分の親が入居するとしたら、という視点で取材するべき」と、伝えています。自分の言葉で表現しよう。気持ちが入っているかどうか重要。


 最後に大澤氏は、「体験記は、マガジンだけでなく、WEBサイト(オヤノコト.net)でも紹介しています。問題提起をしたうえで対処方法を提供し、啓発して未然にリスクを抑えるというのが弊社の役割。啓発していけるような情報を拡散していきたい」と、述べた。


 イベントでは、元NHKアナウンサーの徳田章氏(66)は、「私の体験談。親とのつきあい方」と題した基調講演を行った他にも、親の呼びよせや老人ホーム・サ高住の選び方セミナー、聞こえなどの各種相談コーナー、トークセッション、商品・サービス紹介コーナーなども用意された。


 





(元NHKアナウンサーの徳田章氏)
















情報提供元: News Lounge