役所広司へ直撃インタビュー!


 今月12日から役所広司主演の映画『孤狼の血』(監督:白石和彌/配給:東映)が公開される。


 昭和60年代の広島・呉市をモチーフとした場所が舞台。タイトルの「孤狼」から感じ取れる通り、まさに一匹狼という言葉がふさわしい一癖も二癖もある暴力団係の刑事・大上章吾(役所)と、その大上につけられた松坂桃李演じる新人刑事・日岡秀一が、地元で抗争を繰り広げている2組の大規模なヤクザ組織と渡り合っていくハードボイルド作品だ。


 かつての『仁義なき戦い』を彷彿とさせ“THE・東映”と冠しても言い過ぎではなく、性別に関係なく血湧き肉躍るような仕上がり。銀幕の中では、ダンディーでギラついた役所と、これからの映画界を背負って立つような好演を松坂が見せている。そんな本作に出演する役所へ、某日本作にまつわることを直撃してみた。


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 本作の話が来た時のことへ、「なんかこういう映画久しく観ていないなって。僕もこういう映画やってなかったかなって思って、すごく興味がありました。白石監督のいままでの作品を観ていても勢いのある監督だし、白石監督と初めてお会いしたときも『元気のある日本映画を作りたいです!』ということで、ぜひ参加したいと思いました」と、快諾したという役所。


 そこで原作と台本をしっかり読み比べたそうで、「原作の大上は映画の脚本よりもっとハードボイルドで格好良かったです。脚本の方は、もうちょっとリアリティーがあって愛嬌があるキャラクターになっているのを感じました」という。具体的にどう違うと感じたのかへ、「原作だと格好良すぎるな。照れるなぁって感じだったんです(笑)。脚本はすごく監督の色を加えた大上だったんで、非常に愛すべき身近な感じがしました」。


 その大上を演じるうえで、「やっぱり根っこは正義の味方だと思うんですけど、それをことさらに、“自分がやっていることが本当の正義だ”ということではなくて、無意識で暴力団との交渉の上で目指すものの中で1番いい方法と思っているだけなんです。僕はいい人なんだよというところを見せない」という、大上の美学を意識していたそうだ。


 大上と日岡の関係性はどう考えて演じていたのだろうか。「表現としては必要ないと思いましたが、気持ちの上では、こいつが自分の後を引き継いでくれる男かもしれないという気持ちは大切にしようかなと思って演じていました。彼(日岡)の正義感は青くはあるんですけど、そういう彼本来の持っている正義に対する思いは正しいことは正しいし、これでこれから、彼が本当に受け継いでくれる刑事かもしれないという思いはあったんじゃないでしょう」と、託すような気持ちだったよう。


 では、日岡を演じていた松坂についてはどうだろうか。「松坂くんは前も映画『日本のいちばん長い日』で一緒に仕事をしました。この作品では、前半、後半にかけて成長していく過程は見事です」と、手放しで褒め「ラストはパート2を予感させる感じで、呉原という街で活躍する雰囲気が匂っています。これから、松坂桃李の呉原の刑事が始まるんじゃないかと僕は思いましたね。そこに到達するまでうまく流れができている気がしました」と、松坂も引き立っているものになっているとコメントを寄せた。


 撮影に入るに当たって、1番準備したのは「方言ですね。呉弁です」という役所。「クランクイン前からずっと練習していました。言葉からそこの土地で育った人間が染み出してくる感じがありましたし、実際に呉という街に、腰を据えてスタッフ・キャストもやりましたし、街から聞こえてくる言葉も呉弁ですし、そこは大切にしたいなと思いました」と、本作のためには必要不可欠な要素だったと捉えていたようで、「2ヶ月くらいはどっぷり練習して、いまだに使っているんですよ」と、“抜けない”とも。


 撮影現場での印象的な出来事へは、「タンを吐くシーンが3度あるんです。カーって(笑)。『ええっ!?』って思いましたけど、監督の師匠である若松孝二監督を思い出して、映像のなかでカーっペッてやる人は少なくなったなって。昭和のアウトローを出すにはいいのかなって」と、承諾したのだとか。思わず記者も「タンをお願いしますと言われたんですか!?」と身を乗り出すと、「そうです、そうです(笑)」と、実際にそれらしく実演しようとして、場を沸かせていた。


 さらに、役所としては、本作にいち役者としても期待を寄せているようで、「こういう映画というのは若い時に単館系でよくやっていたんです。それがぱったりなくなってきた時間が長くて、やっぱりああいう映画があったなというのを忘れかけたころにこの話があったので、日本映画って予算的にも厳しい中で、こういう熱くて激しい映画を作っていた時代があったんです。そのころは日本映画が豊かなような感じがしていましたね。あのころはいろんなものが映画の中にあって、非常におもしろかった時代なんだなってあらためて思いました。東映さんが次にこういうテイストのものを作っていくかは分かりませんけど、大手映画会社としては東映さんしかできない、お家芸だと思います(笑)。こういうものがもうちょっと増えると面白いかな。女の人はこういう暴力的なことは嫌いかもしれませんが、男の子は映画館から出てくるときにね、おっ、ちょっと強そうな気分になって出てきたなと思うような映画がもうちょっとあってもいいかなと思いました」と、熱くメッセージを寄せることもあった。


 男性には血肉沸き踊るものだが、女性に向けては「『馬鹿だねぇ、男って!……でも、可愛いな』って思って観てくれると、こういう作品は女の人も受け入れてくれるんじゃないかなって」と、呼びかけていた。


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 インタビューを終え、写真撮影の際にはあれこれとポーズや移動をお願いした。その際、少し早口で伝えてしまうミスをしてしまったが、「これで大丈夫ですか?」と、すぐに優しい声で聞き返してくれたりと、どんな相手でも“分からないことはちゃんと聞く”という、飾らないで人にしっかり向き合う役所の一面を見たような気がした。そんな役所が、劇中では大上としてどう大暴れするのかは、ぜひ劇場で確認していただきたい。


 映画『孤狼の血』は12日より全国公開!


 衣裳協力/GIORGIO ARMANI(ジョルジオ アルマーニ)


 <問い合わせ先>


 ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社/03-6274-7070


 スタイリスト/安野ともこ(コラソン)


 


 ヘアメイク/勇見 勝彦(THYMON Inc.)


情報提供元: News Lounge