前山&西井の女役の姿が絶賛のDステ19th『お気に召すまま』


 10月14日にスタートした俳優集団D-BOYSによるDステ19th『お気に召すまま』(本多劇場)の東京公演も、残り一週間を切った(30日まで)。


 Dステではこれまで、演出に青木豪氏を迎え、シェイクスピア作品の『ヴェニスの商人』(2011年)、『十二夜』(2013年)をオールメール(全員男優)で演じてきた。そして、シェイクスピア没後400年にあたる今年、その第3弾を上演中。


 一度観劇した人たちのSNSでの感想は、「観終わったらすぐに次が観たくなった」「今までのと、ぜんぜん違う話見てるみたいでビックリ。セリフが足されていたり少し変えられていたりして、わかりづらかった状況や意図や文脈がすんなり理解できた」などに代表されるように、「わかりやすくて面白い」というものが多い。


 さらに、今回の見どころのオールメールについても、「西井幸人くんはまさにシーリア。本当にかわいくて特に後半のロリータの衣装がよかったな」「前山くん美しすぎ!!女性よりも女性らしい」「Dステでは、シェイクスピアが生きていた時代がそうだったように、男性が女性の役を演じる。シェイクスピアが観ていた光景を観ている感覚になるから好き」と、好評だ。


 難しいといわれるシェイクスピア演劇だが、喜劇『お気に召すまま』は一番“幸福な恋愛物語”とも言われ、オーランドーとロザリンドを中心に、様々な恋愛模様が繰り広げられる。


 今回の舞台では、松岡和子氏の翻訳をベースに、青木豪氏が演出と上演台本を手掛け、セリフ回しやテイストはしっかり残しつつ、大胆なアレンジと演出でかみ砕き、若年層や演劇に敷居の高さを感じている人にもわかりやすく、肩の力を抜いて観られるように仕上げられている。


 「保“笑”します。この面白さ」と、チラシにある通り、ラブコメディという言葉がぴったりで、いま最も笑えるシェイクスピアだ。劇場は、連日、大盛況で観客は爆笑の渦に巻き込まれる2時間20分。


 その人気ぶりは、リピーターチケットの売れ行きにも表れており、最初は、D-BOYSファンや各役者さんについているファンが間近で見たいと、息を感じられる前の方の席で観覧する。


 客席全部を使った演出で、観客席の上の階段通路から何度か下りてきたり、横の通路を使った芝居をするので、舞台全体を見たい場合は、客席の中ほどよりやや後ろがちょうどいいということで、再び観劇に訪れるお客さんがいるほど。



 入場時にバイオリンとギターの生演奏で迎えてくれるのも温かみがある。ステージでは開演前より、役者さんたちが、化粧したり、発声練習したり、柔軟体操したりしている。側転すると、黄色い歓声とともに拍手が起きる。すると、「何も起きませんので。ただアップしているだけですから」と、気軽に会場に声をかける。


 役者さんによる注意事項が語られると、公爵役の松尾貴史が登場。挨拶と思いきや、音楽とともに舞台が始まった。フィナーレからカーテンコールもそうだが、この劇には幕(緞帳)が一回も昇降することがなく、劇の前後に区切りがないというのも、森の劇場のようで格式ばっていない感じがする。


 弟によって追放された前公爵(松尾貴史)の娘・ロザリンド(前山剛久)と今は亡き栄光の騎士の長兄オリヴァー(三上真史)に虐げられている三男・オーランドー(柳下大)が、公爵(松尾貴史)主催のレスリング大会で出会い、互いに一目ぼれして、物語が動き出す。


 虐げられている三男の境遇を語るところもしんみりしそうだが、突然、にぎやかな鶏が登場したり、兄と組み合ったときに、弟の強さを示すようにかなり大げさな効果音とまるで漫画でのしになるような兄の超弱なリアクションが会場の笑いを誘い、グイグイと物語の中に観客たちを引き込んでいく。


 それと同時に、オールメール(全員男優)により、ロザリンドを演じる前山とシーリアを演じる西井が舞台に登場すると、前山の美しさと西井の可愛らしさに会場は息をのみ、2人が男性であることを忘れてしまいそう。ロザリンドは背も高く、身のこなしや口調が育ちの良いお姫さま然とした立ち居振る舞いなのに対し、公爵の娘・シーリアは元気で天真爛漫なキュートな女性。



 そんな中、物語は、ロザリンドとオーランドーは別々の理由から、アーデンの森へ向かう。そこでは前公爵が自然を満喫して楽しんでいるのに対し、鬱ぎ屋の旅人・ジェイクイズ(加治将樹)は卑屈で理屈っぽいセリフが多い。それでも、「ここでそれ振る?」と、演者の加治が自身のことをイジる自虐セリフで笑わせる。


 森の中では、男装したロザリンドが羊飼いたちの恋愛騒動に巻き込まれる。また、オーランドーは男装したロザリンドの正体に気づかずに、彼(彼女)に恋の告白の稽古相手になってもらう。


 ところが、明らかに熱くなってとっちらかっているのはロザリンド。男装しているから男言葉でありながら、「私、ロザリンドよ」と言っているようなセリフが次々出てくる。この辺りは、実生活では男装することはないだろが、相手の気持ちを推し量るために、わざとツンデレを演じたり、好きじゃないそぶりをしたりというところと似ている。


 初めて人を好きになったときのドキドキ感、イライラ感、感情と反対のことを言ってしまう、態度をとってしまうなど、誰もが一度は経験した“恋の病”がセリフと演技で繰り広げられていく。


 そこへ、森に入り、獣に襲われたところを弟のオーランドーに助けられ、仲直りした兄オリヴァーが、オーランドーの現状を伝えに現れる。すると今まで冷静だったシーリアが、道案内するのに超多弁になるのもかわいらしい。


 フィナーレは結婚の神ハイメンからの祝福を受け、盛大に結婚式が行われるという、超ハッピーエンドなのだ。


 「どうせ、チケット完売でしょ?」と、二の足を踏んでいるファンはもちろん、「シェイクスピアは難解で・・・」と、ハードルの高さで二の足を踏んでいる方、さらに、いろんな劇団が演じてきたシェイクスピアおよび『お気に召すまま』を観劇してきた演劇ファンの方も、当日券は毎回用意されているということなので、ぜひ、観てほしい。


 同舞台は、東京公演が本多劇場で10月30日(日)まで。山形公演がシベールアリーナで11月12日(土)、13日(日)の2日間。兵庫公演が兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで11月19日(土)、20日(日)の2日間上演される。


 





情報提供元: News Lounge