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先日、腸と免疫の関係をより深く知り免疫力の強化に役立つ情報を共有する「新しい生活様式で迎える初めての冬に備える免疫力強化法」と題されたセミナーが都内で開催され、編集部は、「大腸」の免疫力を高めることで感染症に負けない身体づくりを目指す方法について取材してきました。
セミナーでは、免疫・感染制御研究が専門の新藏礼子氏(東京大学 定量生命科学研究所 免疫・感染制御研究分野 教授)が免疫力を語る上で欠かせない“IgA”について、また、森田英利氏(岡山大学大学院 環境生命科学研究科 教授)は、腸内細菌研究から見えてきた腸内環境と長寿との関連性や免疫との関係について説明しました。
セミナー後半には、特別ゲストとして医師で健康ソムリエの石原新菜先生と映画コメンテーターでタレントのLiLiCoさんが登場。石原先生が日常生活で取り入れやすい免疫力を強化する調理レシピなどを紹介し、最近、免疫力低下が気になるというLiLiCoさんと共にトークセッションを行いました。
ウィルスや菌は身体の粘膜から侵入します。皮膚は多層構造で異物が侵入しづらくなっていますが、粘膜は、身体の外と内側とが一層の内皮細胞のみで隔てられているため異物が侵入しやすく、そのために様々な免疫が生まれる部位でもあります。
冬を迎えるにあたり大事にしたいのがこの粘膜の免疫です。免疫には、私達が生まれながらに持つ自然免疫と生まれてから発達する獲得免疫があり、獲得免疫は自然免疫で防げなかった異物の特徴を把握し攻撃します。ワクチンを接種することで、あらかじめ病気を予防できるのは、この獲得免疫の働きがあるからです。
獲得免疫が取り込んだウィルスや菌など異物の情報は、T細胞とB細胞に伝えられ「抗体」ができます。しかし、獲得免疫が情報を伝えて抗体をつくるためには最低でも2週間が必要であり、異物が大量に侵入してくると免疫は負けてしまいます。そこで、異物の侵入を減へらす「マスク」「手洗い」「うがい」「ソーシャルディスタンス」が有効なわけです。
さて、粘膜のなかでも特に生体防御の最前線として「粘膜免疫」を発達させてきたのが「腸管」です。腸管には免疫細胞の7割が存在するといわれており、そのなかで最も多く産生されている抗体がIgAです。
IgAには常在菌に含まれる悪玉菌のみを排除する働きがあり、IgAが弱いと腸内細菌のバランスを保てず腸内環境が乱れてしまいます。IgAが強いと、30μg~60μgほどの少量毒素が体内に入っても持ち堪えられ対抗できます。つまり、体内に敵の抗体がなくても、強いIgA抗体があれば防御力に代わることがきるのです。
近年、IgAの産生には短鎖脂肪酸が重要であることがわかってきており、新藏教授はIgAの質の高め方は研究中であるとしながらも、増やすためには腸内細菌のエサになる善玉菌を増やすことが大切だと話します。ビフィズス菌などの善玉菌が食物繊維やオリゴ糖をエサに大腸でつくる代謝物‐短鎖脂肪酸を増やすことがIgAを育てるのです。
写真)新藏礼子教授
現在、日本には100歳を超える長寿が約8万人おり、なかでも奄美群島には全国平均の約3倍の長寿島民が生活しています。この長生きの秘密はどこにあるのでしょうか。
通常、老化によって免疫は衰えていき、IgAの反応が低下することで補足できない菌が増え、腸内のバランスが崩れてビフィズス菌などの腸内細菌が減少し悪玉菌優位の環境になります。ところが、奄美群島に住む70~90代の長寿島民らの糞便を採取したサンプルからは、ビフィズス菌・アッカーマンシア属・メタノブレビバクター属といった腸内細菌が多く見つかっており多様性に富んでいたそうです。
腸管バリア機能に重要な働きをする細菌 アッカーマンシア属は、肥満や糖尿病などの生活習慣病発症との関連性が指摘されています。また、メタノブレビバクター属は、日本人にはほとんど存在せず欧米人に多いと言われている古細菌で、奄美群島の地域性が関係しているようです。
森田教授はこれらの調査結果から腸内細菌が健康長寿に寄与している可能性を示唆し、なかでも奄美群島の長寿人口が多い理由のひとつとして、発酵食品(菌)と食物繊維(エサ)がバランスよく組み込まれた、奄美群島の伝統食「ソテツ味噌」や発酵飲料「ミキ」を存在と食習慣を挙げています。
ソテツの実と大豆または玄米に麹をつけ発酵させた「ソテツ味噌」は、味噌汁をはじめ豚肉や魚、ニガウリ、ピーナツ、黒砂糖などと混ぜておかず味噌、お茶請け味噌としても親しまれており、その他、パパイアや島バナナ、島ラッキョウ、海藻類など食物繊維豊富な食材を漬けて食べる習慣もあります。一方、米粥と擦り下ろしたサツマイモ、砂糖で作る「ミキ」は、赤ちゃんから高齢者まで幅広く愛飲されており、いずれも一般的な家庭料理です。
写真)森田英利教授
このように善玉菌を活発にし、IgAを育てる腸活レシピを私達も習慣的に摂りたいものですが、身近な食材ではどのようなものがあるのでしょうか。
8月に膝蓋骨を折る怪我をしたLiLiCoさんは、今まで以上に健康に興味をもったことを明かし、「できるだけ自然に免疫力をあげたい。50歳になるし顔の皺とか見た目よりも大腸を強くしたい!」と石原先生(イシハラクリニック 副院長 / 健康ソムリエ)から、この冬にむけ免疫力をアップするためのレシピを教わりました。
免疫をつくるIgAを増やす手助けをするためにも、ビフィズス菌が生み出す短鎖脂肪酸や、ビフィズス菌のエサとなるごぼう、大麦、らっきょうなどの水溶性食物繊維を摂取できる2つの「大腸活レシピ」を紹介します。
■根菜のスパイシーヨーグルトソース
ビフィズス菌入りヨーグルトにカレー粉を加えて、香りと色を楽しむレシピ。生姜やニンジン、ブロッコリー、カブなどの根菜に含まれるビタミン類は免疫力の強い味方。食物繊維も豊富で生姜は身体を温める効果もありますね。
材料(2人分):かぶ(1個/120g)にんじん(1個/60g)ごぼう(1個/60g)
ブロッコリー(1個/50g)
<スパイシーヨーグルトソース>
ビフィズス菌入りヨーグルト(100g)
A生姜(みじん切り10g)ニンニク(みじん切り2g)みりん(大さじ1)
B顆粒コンソメ(小さじ1)マヨネーズ(20g)カレー粉(小さじ1)
作り方
1.かぶは葉の付け根を少し残し皮をむき、6 等分のくし形に切る。にんじんは厚さ 5 mmの斜め切り、ごぼうは小さめの乱切りにする。
2.耐熱皿に1の野菜を盛り、ラップをかけ 600w のレンジで 6 分加熱する。
3.ブロッコリーは小房に分けラップで軽く包み、 600w のレンジで 1 分加熱する。
4.耐熱のボウルに A を入れ 600w のレンジで 40 秒加熱したら、 B およびビフィズス菌入りヨーグルトとよく混ぜる。
5.1と2を皿に盛り合わせ、4のソースを添える。
■サーモンの味噌ヨーグルトソース
ビフィズス菌入りヨーグルトと味噌を加えてダブル善玉菌をゲット。日本人に不足がちなビタミンDやたんぱく質を鮭で摂ることもできます。水溶性食物繊維が豊富な“なめこ”をヨーグルトに入れるだけのお手軽、簡単なレシピをお試しあれ。
材料(2人分):サーモンの切り身(2切れ)塩・こしょう(各少々)小麦粉(適量)オリーブ油(大さじ1)
<付け合わせ>
ベビーリーフ(適量)ミニトマト(4個)
<味噌ヨーグルトソース>
ビフィズス菌入りヨーグルト(100g)なめこ(15g)
A薄口しょうゆ(小さじ2/5)水(小さじ1)
B味噌(信州味噌/小さじ1)塩・こしょう(各少々)
パセリ(みじん切り少々)
作り方
1.サーモンの両面に塩、こしょうを振り10分おき、小麦粉を全体にまぶす。
2.フライパンにオリーブ油を中火で熱し、1のサーモンを両面こんがり焼く。
3.耐熱容器になめこと、Aを入れ 600w のレンジで 40 秒加熱する。
4.ボウルにビフィズス菌入りヨーグルト、Bと3の煮汁を入れよく混ぜる。
5.皿に2のサーモンを盛り4のソースをかけ、3のなめことパセリを散らす。
6.ベビーリーフとミニトマトを添える。
LiLiCoさんは、「こういうことを、もっと学校で教えてくれればいいのに。こういう情報は自分だけで止まってはいけない。友達と共有したい。外国人と日本人では腸の長さが違うと聞くので、専門的な話をもっと知りたい!」と、免疫力をアップさせる「大腸活レシピ」に興味津々でした。
人は体温が1℃下がると免疫力が30%低下するといわれており、冬は空気の乾燥と気温の低下により身体の内と外でウィルスが活発になる環境が整います。感染症やウィルスに負けないためにも、「マスク」「手洗い」「うがい」プラス「大腸活レシピ」で身体の内から強くなりたいものです。