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マンガやアニメーションなど4つの部門ごとに優れた作品を表彰する「文化庁メディア芸術祭」がお台場・日本化学未来館にて、19日から27日にかけて開催されています。
第23回目となる今年の「文化庁メディア芸術祭」は107の国と地域から3566もの作品が寄せられ、その中から選出された作品が日本化学未来館に展示・上映されています。
例年、4部門内での賞は大賞・優秀賞・新人賞のみでしたが、今年からは社会の中に実装され、人々の行動様式やメディアテクノロジーのあり方に新たな変化をもたらし、大きな影響を与えた賞に対して贈られる「ソーシャル・インパクト賞」と、18歳未満の作家による作品の中から優秀な作品に贈られる「U-18賞」の2つが新設されました。受賞作品数が増えたこともあり、どの部門を取っても見どころが多く、1〜2時間じゃ十分に回りきれないほどの展示作品数は圧巻です。
また、今年は新型コロナウイルス感染防止対策として、来場人数を制限し、事前予約制での開催となったが、パネルにかざした手の動きをセンサーが感知してページをめくり漫画を見ることができる鑑賞コーナーを設置したり、直接来場できない人に向けてVR映像を特設サイトで配信する等、新しい生活様式に合わせた試みを行っている点も見どころの一つです。
大賞「海獣の子供」 作者:渡辺 歩
監督の渡辺さんが「空気感・色や音まで伝わってくる濃密な(原作の)漫画をアニメーションでどこまで表現できるかというところにスタッフ全員で挑みました。」と語る本作は、手描きとCGを組み合わせてキャラクターの心情や海の生き物の生き生きとした様を壮大なスケールで描いており、展示された原画からは作品に注がれた確かな「命」を感じました。
優秀賞
「ある日本の絵描き少年」作者:川尻 将由
「ごん」 作者:八代 健志
「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」 作者:レミ・シャイエ
「Nettle Head」 作者:Paul E. CABON
ソーシャル・インパクト賞「天気の子」 作者:新海 誠
社会的影響の大きさを鑑み、選出された「天気の子」。今回の展示では新海監督のビデオコンテなども展示されています。
大賞の「海獣の子供」、ソーシャル・インパクト賞の「天気の子」、海、空、宇宙の不思議を詰めたような作品が並んで展示されている様が印象的でした。
新人賞
「向かうねずみ」作者:築地 のはら
「浴場の象」作者:CHENG Jialin
「Daughter」作者:Darian KASHCHEEVA
大賞「ロボ・サピエンス前史」作者:島田 虎之介
マンガ部門の大賞は、ロボットと人間が共存する時代を舞台に、ロボット達の様々なあり方や、人間とロボットの複雑な関係をシンプルな線描と記号的な背景、詩的な余白によって描くオムニバス作品「ロボ・サピエンス前史」。
優秀賞
「あした死ぬには、」作者:雁 須磨子
「ダブル」作者:野田 彩子
「鼻下長紳士回顧録」作者:安野 モヨコ
「未来のアラブ人 中東の子ども時代(1978-1984)」作者:リアド・サトゥフ/訳:鵜野 孝紀
ソーシャル・インパクト賞「闇金ウシジマくん」作者:真鍋 昌平
2004年から15年にわたる雑誌連載が2019年に完結した「闇金ウシジマくん」はドラマ・映画などのメディアミックスもされ、「ウシジマ」の4文字は人の世の「闇」の代名詞となるまでに至り、ソーシャル・インパクト賞を受賞。
新人賞
「大人になれば」作者:伊藤 敦志
「花と頬」作者:イトイ 圭
「夢中さ、きみに。」作者:和山 やま
大賞「[ir]reverent: Miracles on Demand」作者:Adam W. BROWN
アート部門は、第23回にして初めて、バイオアートと言われるアートが大賞を受賞しました。微生物を含む培養液をパンに滴下し、培養された微生物が粘性の赤い液体を生成してパンを「出血」させ、何世紀も前に教会で見られたような血を用いた「奇跡」が生み出される様が視認できるようになっています。科学で奇跡を起こし、「奇跡とは何か」を考えるインスタレーションです。
優秀賞
「between #4 Black Aura」作者:ReKOGEI
「Ferriscope」作者:Bull.Miletic
「Soundfolm No.1」作者:Natura Machine
「Two Hundred and Seventy」作者:Nils VOLKER
ソーシャル・インパクト賞
「SOMEONE」作者:Lauren Lee McCarthy
鑑賞者がAIアシスタントとして一般家庭に介入する作品となっており、人間がAIの立場となって振る舞うことでテクノロジーと人間との関係を批評的に可視化しようとする作品。
新人賞
「drawherats」作者:Sebastian WOLF
「Latent Space」作者:Marian ESSL
「Lenne」作者:細井 美裕
大賞「Shadows as Athletes」作者:佐藤 雅彦/佐藤 匡/石川 将也/貝塚 智子
日本オリンピックミュージアムに設置されたウェルカムビジョンのためにつくられた映像作品のひとつがエンターテイメント部門の大賞を受賞。
「影」に着目し、競技を行うアスリートを天地が反転した状態で撮影した映像は、名前や容貌、国籍や年齢が得られません。鑑賞者がその欠落した情報を自分の中で補って理解しようとすることで、実体を直接見るよりも選手の必死さやひたむきさが伝わってくる作品となっています。
優秀賞
「大喜利AI&千原エンジニア」作者:「大喜利AI&千原エンジニア」制作チーム
「amazarashi武道館公演『朗読演奏実験空間”新言語秩序”』」作者:『朗読演奏実験空間”新言語秩序”』プロジェクトチーム
「CELLMate」作者:Solmaz ETEMAD
「SEKIRO:SADOWS DIE TWICE」作者:SEKIRO開発チーム
ソーシャル・インパクト賞「移動を無料に nommoc」作者:吉田 拓巳
U-18賞「まほう」作者:石巻のこどもたち
「石巻の子どもたちとアートを作ろう」プロジェクトとして、宮城県石巻市の子どもたち9人を中心にクリエイティブ集団goen°によるディレクションのもとで製作された映像作品「まほう」が新設されたU-18賞を受賞。夢や理想を描いた絵やオブジェの映像を小林武史とSalyuによる楽曲「魔法」にのせて映像作品に仕上げた作品となっています。
新人賞
「トントンボイス相撲」作者:「トントンボイス相撲」制作チーム
「Buddience 仏像の顔貌を科学する」作者:赤松 卓太/露木 卓也/竜沢 賢吾/尾崎 風椰
「PickHits」作者:前川 和純/松原 晟都
アニメーション部門・マンガ部門はきっと知っている作品の名前を見つけられるのでは?貴重な原画等は眺めているだけでも楽しめます。また、エンターテイメント部門は実際に体験できる展示も多く、アート部門も五感で体感するものが多いので、年齢を問わず楽しめる祭典となっています。
「第23回文化庁メディア芸術祭受賞作品展」は、今月27日(日)まで、東京・お台場の日本科学未来館で開かれています。