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アメリカ・カリフォルニア州に本拠地を置くIT企業クラリス・ジャパン株式会社が、新バージョン「Claris FileMaker 19」の発売を発表しました。同時に、「Claris FileMaker Cloud」の東京リージョン提供を開始。また、「Claris Connect」に日本のサービスに対応したコネクタが初めて追加されたことが発表されました。
今回、クラリス社のCEOで、クラリス・ジャパン株式会社の社長も務めるブラッド・フライターグさんに、新サービスの魅力や経営者としての心構え、充実したキャリアを送るために大切にしていること、そして世界中に未曽有の影響を与えている新型コロナウィルスという壁にどう立ち向かっていけばいいのかなどについて、ビデオインタビューでお話を聞くことができました。
――ブラッドさん、本日はよろしくお願いします。今回「Claris FileMaker 19」の発売、「Claris FileMaker Cloud」の東京リージョン提供、「Claris Connect」の新コネクタ追加といった情報がリリースされるわけですが、まずは「Claris FileMaker 19」の強みや特徴を教えてください。
ブラッドさん:「Claris FileMaker 19」は、我々からは初のオープンリリースという形になります。オープンリリースが何を意味するか、具体的に言いますと、プロのデベロッパーさん(開発者)や我々のコミュニティの高度なデベロッパーさん向けに、「FileMaker」から幅広く「JavaScript」のライブラリへ繋ぐことができる環境を提供するということです。つまり、膨大な量の「JavaScript」を我々のプラットフォーム上に盛り込んでいただくことができ、これによって事実上、何千というアドオンのコンポーネントを作っていただくことができるようになります。この何千というアドオン・コンポーネントを、市民デベロッパーの皆さんにお渡しすれば、そこからプロジェクトのマネジメントやデータの可視化、カレンダー、そういったドラッグ&ドロップのコンポーネントを作って活用していただくことができるようになるんです。
――「Claris FileMaker 19」と旧バージョンの最大の違いは何ですか?
ブラッドさん:いくつかの要素があるのですが、まず「Claris FileMaker 19」をオープンリリースすることによって、AIとの統合が可能になります。具体的には、MacOS やiOSのCore MLを活用できるということですね。もう一つの特徴としては、「Claris FileMaker Cloud」が日本のデータセンター環境を活用することです。まもなく、日本のデータセンター環境において「Claris Connect」を統合化して提供していくことになります。日本独自のクラウドサインやチャットワークとの統合も可能になります。さらに「FileMaker Server」がLinux向けに使えるようになります。というわけで、より幅広いオーディエンス向けに我々のプラットフォームを拡張するという意味で、今回はとても大きなリリースになりますね。
――今回リリースするサービスも含めて、クラリス社は今後、どういった分野を強化していく方針でしょうか?
ブラッドさん:1年ほど前に会社の名前を改めまして「クラリス」という名前を発表しました(※2019年8月にFileMakerからクラリスに社名変更)。そのときに、今までよりも大きなビジョンを発表していたのですが、まず一つは「カスタム App」です。二つ目が「統合化の可能」。また、将来のプラットフォームを見据えた時に「インテリジェントなオートメーション」、これはつまり、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を含めて進んでいくということを発表しています。引き続き、ローコードの考え方に基づいてプラットフォームの開発を行っていきますので、クラリス社で開発するとなったときに、コンピュータ・サイエンスの学位が必要だということにはなりません。
――新たなサービス以外のことについても、お話をお聞きしたいと思っています。現在、ブラッドさんやクラリス社はどんな状況にあると考えていますか?
ブラッドさん:今までのところは順調に推移しているところです。また、幸運なことにも社員は皆が健康ですし、こうした大きな変化の中においても、私の家族も元気でいることができています。
――大きな変化という言葉には、やはり新型コロナウィルスも含まれていると思うのですが、クラリス社としては、テレワーク等も含めてどんな対応を行っているのでしょう?
ブラッドさん:非常に様々な形での適応をしなければならない状況になったのだと思います。というのも、今は全社員がリモートで仕事をしていて、もともとはカリフォルニアの本社も含めて、各拠点で物理的にオフィスの中で連携を取ることに慣れていた我々が、こういった環境下においては、全員がリモートで仕事をしており、コラボレーションもオンラインで行っていますし、今日のようにWebexといったテレミーティングやSlackを通じて作業をするといった形になってきています。ワークフローそのものが大きく破壊されたということなのですが、非常にうまくいっています。チームのメンバーも非常にうまく適応してくれているので、生産性の面でのロスというものは感じていません。
――新型コロナウィルスに関連して、他業種との連携はどんな状況でしょうか?
ブラッドさん:コミュニティのデベロッパーの皆さんにも、新型コロナウィルスに対しての支援という面では、色々な動きが見られています。ボランティアという形で、3000時間もソリューションの構築に時間を割いてくださるコミュニティ・デベロッパーさんがいるんです。これは特に、新型コロナウィルスの影響を受けてしまうような分野に対して、素早くソリューションを構築するという意味での動きになります。会社としても、フリートライアルの延長や、ライセンスに対してのコストを発生させないといった対応を行っています。ということで、今回の新型コロナウィルスに対しては、非常にインスピレーションに富んだ、イノベーティブなソリューションが素早く構築されています。もしご興味があれば、医療の現場とのコラボレーションについて、もう少し詳しくお話します。
――ぜひお願いします。
ブラッドさん:医師の皆さんが素早くリモートワークに切り替えたときに、SMSのソリューションを作り、それを「FileMaker」のプラットフォーム上で展開したという例があります。医師が患者さんに対してSMSを送って、(体調を)確認をしていくというソリューションになります。特に、高齢者の方は、なかなかアプリを自分でダウンロードすることが難しいかと思うのですが、テキスト形式やSMSであれば、きちんと答えを返せるということもあって、非常に多くの患者さんに、このソリューションを通じて、患者さんが抱える心配事などに耳を傾けることができるようになりました。万が一、新型コロナウィルスに感染したかもしれないという場合でも、このソリューションを通じて基本的な診断を行うことにより、わざわざ患者さんに病院まで来てもらい、そこでウィルスに晒す・晒されるということを避けることもできるようになりました。このソリューションは数週間のうちに立ち上がったもので、使いたいという医師の皆さんに対してはノーコストで提供される仕組みになっています。
もう一つ、ご紹介したいソリューションがあります。もともとは、病院の中で在庫や資産の管理に用いていたアプリケーションを、新型コロナウィルスの登場によって、IoTのセンサーを患者さんに付けて、各患者さんの酸素レベルや体温を計りながら危機対応を行っていたという例があるんです。非常にたくさんの新型コロナの患者さんが来院し、厳しく圧倒されるような病院の環境の中で、そういった対応をされていたのです。
――この新型コロナウィルスという災厄に対して、恐怖したり、希望を失いかける人も少なくないと思います。しかしお話にあったように、今だからこそ生まれるソリューションや、プラスが生み出される側面もあると思います。ブラッドさんが発見した「プラス」には、どんなものが挙げられますか?
ブラッドさん:個人的な話になるのですが、今は家族が一緒にいます。私には二人の子どもがいて、一人は二千マイルほど離れた大学に通っていたのですが、その子が今は実家に戻ってきていて、毎晩皆で夜ご飯を食べているんです。そんなことは今まで一度もなかったので、そういう意味でも、家族が一緒にいて繋がることができているということが、一つの前向きなポイントかなと思います。
――日本では会社の性質上、通勤せざるを得ない会社員も少なくありません。そういった人々も含め、不安にさいなまれている日本のビジネスマンたちに対して、ブラッドさんご自身が一人のビジネスマンとして送りたいメッセージはありますか?
ブラッドさん:私自身は、社員に対して積極的にトレーニングを行うための投資を増やしています。特に技術者が最新のスキルを持てるようにという意味でのトレーニングですね。また、会社に新たなテクニックを導入することにもなりました。経済が一時停止している機会を活用して、社員のスキルをもう一度再構築することに取り組んでいるんです。私もオンラインで教育を受けたり本を読んだりしていますので、このタイミングはそういったことに活用できるのではないでしょうか。
――働き方に関しては、働き方改革関連法が施行されてから、およそ1年が経ちました。ブラッドさんが感じる課題と、御社のサービスで解決できることは何だと考えていますか?
ブラッドさん:その質問については、プロダクトマネジメントおよびデザイン担当バイスプレジデントのシュリニ・グラプに答えてもらいましょうか。
シュリニさん:トレンドとしても普遍的なことなのだと思います。すなわち、押し寄せるデジタル化の波によって、会社員の皆さんも、政府自身も、より自分たちの生活をリラックスした形で送ることができるようになっていると思います。毎日毎日、朝から晩まで会社に行かなくても良くなっているということですね。もともと、テクノロジーとして生んだビジョンとも繋がります。インターネットもそうですし、コラボレーションツールであれば「Slack」などもいい例になりますね。世界中の社会が、今どのような状況でより良いライフワークバランスを取れるかを模索していると思います。これは「どこにいたとしても、自分のペースで社員の皆さんが生産性を上げていくことができるように」ということを意味しています。これはまさしく、我が社が支えることができる分野です。コラボレーションをしたり、カスタム App を作ったり、オートメーションも様々な統合を通して実現するということによって、各社員の皆さんが、よりリッチで生産性の高いアプリケーションを構築し、使うことができると思います。それは自宅にいたとしても、職場にいたとしても、移動中であったとしても同じですね。
――新型コロナウィルスによってテレワークが脚光を浴びましたが、これまでの日本には、出社して物理的にオフィスで働くという、ある種の文化が根付いてきました。ライフワークバランスという意味において、日本の企業は今後どんな変化を遂げていくべきでしょうか?
ブラッドさん:私にとっても新しいことです。もともとは、クラリス社のオフィスに来て仕事をしていたわけですが、今回このような状況になって、実際にチームのメンバーが生産性を高く維持できているのを見ていると、私自身、もう少し長期間にわたって、フレックスな形で仕事の仕方というところの体制を考えてもいいんじゃないかと、オープンな気持ちでいます。
とにかく、こういった環境では生産性が上がっているかという部分を見ていくということ、そして社員のエンゲージメント(従事度)を見ることも、とても大事になってくると思います。なので、今までとは少し変わったバランスの取り方を見ていく必要がありますね。ただ、たまにはオフィスに来るのもいいと思います。オフィスに来て、皆の顔を見ることができれば、エネルギーも出てきますし、お互いの信頼感も高まると思います。一緒に食事をとったりコラボレーションもできますよね。とはいえ、1週間のうち、5日続けて来社しなくてもいいのかなとは思いますね。家族と一緒にいながら仕事をしたりということになれば、社員の満足度も高まるでしょう。