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しかも、実際のカンヌ映画祭の期間中に撮影したというのだから、驚きです!
本作の主人公を演じたのは、韓国の女優=キム・ミニ。2016年のカンヌ映画祭には、彼女が主演したパク・チャヌク監督『お嬢さん』が出品されており、カンヌに来てた訳です。
もう一人の主人公を演じるのは、フランスの名女優=イザベル・ユペール。彼女も主演のポール・ヴァーホーヴェン監督の『エル ELLE』が出品されており、カンヌに来てたんですね。「今なら、名女優2人を出して、1本映画が作れるぞ!」と考えたかは知らないですが、ホン・サンス監督は2人をスカウト。即興的に1本の映画を作ってしまったんです!! 恐ろしいフットワークの軽さ!!
ストーリーもそのまま、カンヌ映画祭の裏話を寓話的スタイルで描いたんです。すると、虚実入り乱れた不思議な映画が出来上がりましたとさ!!
本作の面白いのは、断片的に語らていく複数のエピソードが、実は繋がっている事が徐々に明らかになっていく構成。キム・ミニの演じる映画会社で働く主人公は、カンヌ映画祭の真っ只中、女社長から一方的に解雇。突然すぎて帰国もできず、街をフラフラ。
一方、イザベル・ユペール演じるもう一人の主人公は、カメラが趣味の教師。たまたまカフェで話し掛けられた相手は、韓国人の映画監督。
のちに、主人公の2人が出会い、意気投合。会話の中で、映画監督の愛人が、主人公をクビにした女社長なんだと発覚するんです。……といったように、まるでパズルのピースがハマっていくように、ストーリーの全体像が見えてくるんです。
ただ、当たり前ですが、全体が見えているのは、観客だけなんです。なので、「どこで女社長の正体に気づくのか?」とか「映画監督と女社長の間で、実は、こんな会話がされていたなんて!」と、静かな作風の中で、やたらヒヤヒヤさせられたりもします。
実は、本作のホン・サンス監督と主演のキム・ミニが愛人関係なんですね。不倫を報じられた2人は、タッグを組んだ過去作『夜の浜辺でひとり』(2017)の記者会見にて、報道を認めたんです。なので、カンヌに来ていた韓国人映画監督は、ホン・サンス監督を地でいくキャラな訳ですね。
本作には、カメラを持った教師も登場しますが、撮影という行為も映画のメタファー。
ちなみに、キム・ミニが演じる主人公は映画会社の営業という設定。カンヌ映画祭と同時期に開催される国際映画見本市=マルシェには、世界各国から映画関係者が集まる一大イベント。
カンヌ映画祭を題材にした映画『カンヌの恋人』(1979)や『カンヌ 愛と欲望の都』(2002)辺りを観ると想像しやすいかもしれません。
さらに、本作で撮影されたカフェも実際にあるお店との事で、その場面に登場する看板犬も、実際のお店の犬なんだとか。どこまでも、現実と地繋ぎな映画なんです。もはや、カンヌを観光した気分にさえさせてくれます。
監督と主演女優のスキャンダルな関係を頭に入れて観ると、また見え方が変わってくると思いますし、寓話風味の大人の恋愛ドラマとしても楽しめる一本でした!!
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