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その証拠に、短編作品で「飛び出す、絵本」という小説も執筆されております。(「本からはじまる物語」などに収録)こちらは、絵本が生息する森に、主人公が助手を連れて絵本狩りに行くお話。森の中の様々な場所から有名絵本が飛び出してまいります。
「ピーター・ラビットの仲間の群れだ!取れ、取れ!網を振りまくれ!人気もあってよく売れる!ひとつでも多く捕まえるんだ!」といった具合に、次々に絵本が登場たします。他に「ウォーリーを探せ!」、「せいめいのれきし」、「ちいさいおうち」、「おしいれのぼうけん」、「うろんな客」、「もりのおばけ」、「いやいやえん」なども登場。絵本好きな人がこの小説を読むといかに恩田様が絵本好きかよく分かるかと…。
そんな恩田様が先日の「SPA」のカルチャー☆フェスのインタビューコーナーに登場。その中で、恩田様が「夏休みに読みたいおススメ本3作品」を紹介されておりましたが、その3冊のうち、なんと2冊が絵本でした。さすが、恩田様でございます。その2冊は、ともに海外の絵本で、典型的な大人絵本。大人が楽しめるエンターテイメントでございます。是非、夏休み以外でも読んで頂きたい!
“読んで”と言ったもの、実はこちら2冊とも、文字(テキスト)のない絵本でございます。しかし、観終った後には映画を1本観たような気分になれる傑作でございます。読みごたえというか見ごたえ十分でございます。
まず、1冊目は、こちら。
「ジャーニー 女の子とまほうのマーカー」(作: アーロン・ベッカー)
最近、「メアリと魔法の花」という映画がございましたが、こちらの主人公が使うのは「魔法のマーカー」でございます。そう、筆記具のマーカーでございます。部屋の壁にドアを描くと、本物のドアが現れたりするのございます。このマーカーを手にした主人公の少女が冒険する物語でございます。
絵がとても素敵で、眺めているだけでも美しい作品でございます。ちなみに、この作品がデビュー作なのに「コルデコットオナー賞」を受賞、ニューヨークタイムズには「デビュー作にして巨匠の仕事」と紹介されております。
そして、2冊目がこちら。
「アライバル」(作・絵: ショーン・タン)
こちらは、男が妻と娘に別れを告げ、海を渡って見知らぬ土地にゆき、新しい生活を始めるという内容の絵本でございます。移民のお話でございます。でも、得体の知れない生き物も登場します。その混在感が魅力なのでございます。テキストがないので、大人でも慎重に観ていかないと分かりづらいところがあります。大人が真剣勝負でよむ絵本でございます。そこが良いのかと…。
ページ数もコマ割りされた頁もたくさんあるので、かなり見ごたえはあります。お値段も2625円と、絵本としてはかなり高めでしたが、大人の絵本としては異例の売り上げをあげている絵本でございます。絵もパステル調のモノトーンで、精密なタッチで描かれている幻想的な世界観は、まさに大人好みでございます。
この作品は、アングレーム国際コミック・フェスティバル最優秀作品賞・世界幻想文学大賞アーティスト部門、ヒューゴー賞プロ・アーティスト賞など、世界各国で29の賞を受賞、世界中に衝撃を与えたグラフィック・ノヴェルとも言われております。絵本通の恩田陸様のおススメの大人絵本2作、是非、ご体験くださいませ。「アライバル」は、かなり手ごわい1冊でございます。(文:N田N昌)