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昭和の大人気マンガ「あしたのジョー」。主人公・矢吹丈のライバル力石徹が、壮絶な試合に勝利した後に亡くなった。マンガ史に残る衝撃的な死が描かれたのは、「週刊少年マガジン」1970年第9号(2月22日発売)でのこと。
世界初とも言われる、マンガの架空キャラクターの葬儀は3月24日に行われることに。全国から力石の死を悼む弔辞が寄せられたため、その声に応えた…という反面、翌月から放送されるテレビアニメ放送のPRイベントの意味合いも大きかったようだ。普通の葬儀だとつまらないわけで、ファンを楽しませる内容になっていた。
本誌で参列者を募集、先着500名、入場無料。場所は講談社講堂で行われ、平日に子どもから大人まで大勢のファンが詰めかけた。おみやげ(香典返し?)として、ちばてつや先生のサイン色紙などが配られたという。
講堂にはボクシングリングが設置され、祭壇には力石の遺影が。アニメ主題歌を歌う尾藤イサオがボクサーと模擬試合を披露し、そして歌唱披露。テンカウントが打たれ、寺山修司が作った弔辞が読まれる、といった具合だった。もちろん本物のお坊さんを招いて読経もされた。
架空のキャラをウルトラマンショーのように実在する体で姿を披露することはあるが、力石徹は紙に描かれた、完全なる二次元のキャラクターだった。それを実在したかのように扱ったイベントはこれが初めてだろう。そして、これ以降、マンガ・アニメキャラがファンの心に実在し生きる存在であることを位置付けたのではなかろうか。おたくの芽生え的なイベントだったのかもしれない。
1981年に日本テレビ系で放送されたロボットアニメ。主人公マーズの双子の兄で、特に女性から人気の高かったマーグが、19話「マーグ・地球に死す!」の回で死んでしまう。
この予告に対し、制作会社には「マーグを殺さないで」という内容の抗議文、電話、嘆願書まで舞い込み、さらにカミソリ入りの封書まで送られたとか。
あまりの騒動に、日本テレビとアニメ雑誌アニメディア協賛による葬儀イベントが日本テレビ南部館で行われる事態に発展。多くのファンが喪服で駆けつけ、知らないテレビ局員は何事か?!と戸惑ったそうだ。
後日談だが、ファンが送ったマーグの助命嘆願書は映画化への署名につながり、その数が10万人以上に膨らんだことから実現。映画のエンドロールには、スペシャルクレジットとして、署名10万の中から活動に尽力した人物を中心に、物凄い数のファンの名前が表記された。ファンへの粋なはからいだった。
2007年4月18日、高野山東京別院にて、ラオウの葬儀「ラオウ昇魂式」が営まれた。本物の寺院で行われる葬儀は架空キャラでは初めてとされる。これは、主人公ケンシロウと死闘の末に絶命するエピソードを描くアニメ映画「真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章」公開に際したイベントであった。
葬儀委員長の谷村新司、ラオウの声を演じた宇梶剛士ら関係者をはじめ、北斗の拳ファンの著名人たちが集まり、ラオウの冥福を祈った。
参列するファンには、「可能な限り喪服で」「お香典は受けつけません」といった事項が促され、本当の葬儀の形式がとられた。雨の中3000人のファンが焼香の列に並んだという。
特に有名なのは、この3つとされる。実は他にも、アニメファンの間で有名な葬儀イベントは…
タッチの「上杉和也」
機動戦士ガンダムの「ガルマ・ザビ」
時空要塞マクロスの「ロイ・フォッカー」
銀河英雄伝説の「ヤン・ウェンリー」
忍者隊ガッチャマンFの「南部孝三郎長官」
があるそうだ。
アニメ・ヒーローのサブカルチャーが世界的にも注目を集めていることを考えると、人気キャラが物語で死んだ場合は葬儀イベントを催せば、ファンも喜ぶし、限定グッズなども売れるだろう、興行収入が見込めると思うのに。まあ、架空とは言え不謹慎な考え方なのかも知れないが…
ワンピースの「エース」
NARUTOの「ネジ」
鋼の錬金術師の「ヒューズ」
などが死んでしまった時は、ファンから葬儀イベントかなにかを開催して欲しいとの声が上がっていたと聞く。ただ、こんな考え方もできる。葬儀をしてしまうと、もう絶対にマンガ・アニメで会えなくなってしまうという寂しさも襲う。
架空だからこそ、実はあの時、すぐに仲間の手で助けられていた、仮死状態だった、ニセモノだった、魔法で蘇った…など、ムリヤリにでも再登場させることは叶わないわけではないのだから。