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そのピタゴラ装置、実は今から100年くらい前に、すでにイタリアで開発されておりました。しかも、開発したのはナント!イタリアが世界に誇るアーティスト、ブルーノ・ムナーリ様(1907-1998)でございます。
デザイナーだけでなく、教育者や絵本作家など様々な顔を持つムナーリ様は18歳の時に、イタリアの前衛美術運動のひとつ、「後期未来派」という活動にご参加。そこで、「役に立たない機械」という作品を発表されております。
こちらの作品は、糸で吊られたモビールで、微妙な空気の動き(風)につれて色の組み合わせが様々に変化する作品となっております。
機械が賛美された時代に、あえて何の役にも立たない機械を生み出すムナーリ様。さすがでございます。学生時代に友達を笑わせようとして作り始めたのがきっかけだったとか。
さらに面白いのが、1942年、ムナーリ様はピタゴラ装置の絵本も出されております!!
それが、こちら。
「ムナーリの機械」(訳:中山 エツコ 著:ブルーノ・ムナーリ)でございます。
こちらの絵本、開くと、左ページにプロセスがテキストで書かれ、右ページに、その装置が描かれております。ムナーリのデザインとユニークな発想が両方楽しめる作品になっております。
ピタゴラ装置の面白いところは、“途中の手の凝った無駄なからくり”でございますが、こちらのムナーリ様のピタゴラ装置は、からくりだけでなく、目的もユニークでございます。からくりの詳細は、ネタバレになるので、ここでは紹介できませんが、タイトルだけでご想像くださいませ。
「目覚まし時計をおとなしくさせる機械」、「疲れたカメのためのトカゲ・モーター」、「造花のにおいをかぐための装置」、「蚊を死ぬほど辱める機械」、「雨利用のしゃっくりを音楽的にする機会」、「汽車出発時のハンカチふり機械」…
さすがムナーリ様、タイトルだけで惹きつけられるのでございます。
ちなみにお値段は、なんと!2900円(税別)。30ページでございます。子供の絵本というより、中山秀ちゃん風に言うと、“シャレオツ”な大人のアートブックなのでございます。
ぜひ、デザインの巨匠、ムナーリ様のピタゴラ装置、ご堪能くださいませ。
ちなみに、最初、この「ムナーリの機械」がピタゴラ装置のルーツであるとご紹介するつもりだったのですが、実は、もう少し前に装置が発表になっておりました。
それは、「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」と呼ばれているものでございます。
1910年代に、アメリカの漫画家のルーブ・ゴールドバーグ様が発案された表現方法で、ニコニコ大百科によると、「普通に行えば単純な作業をあえて多くの手順を通して行う装置。その複雑さや面倒臭さ、無駄の多さを通して機械化へとつっぱしる世界を揶揄したもの。解りやすく言えばピタゴラ装置のことである」とのこと。
…つまり、ピタゴラ装置は世界的にみれば、「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」なのでございます。
ちなみに、すこし前に話題になった「OK Go」の「This Too Shall Pass」のPVも、世界的には、「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」と呼ばれております。
以上、ピタゴラ装置のルーツに関するルーズな考察でございました。
(文:N田N昌)