Sports Doctors Network(以下、SDN)は、世界的なスポーツチームのヘッドドクターや医療・スポーツ・⾷の専⾨家が⼀堂に会する「Sports Doctors Network Conference 2025 in TOKYO ―最先端スポーツ医療を、すべての⼈へ―」が、東京⼤学安⽥講堂にて、6月24日(火)に開催された。

SDNは、レアル・マドリードメディカルアドバイザーを務めるNiko Mihic(ニコ・ミヒッチ)氏をCEOとし、世界最⾼峰のクラブチームやナショナルチームで絶⼤な実績を持つ医師たちが集結し、アスリートのパフォーマンス最適化から⼀般医療への応⽤に⾄るまで幅広く⽀援を⾏うことを⽬的として設⽴された。

アジア初の開催となる本カンファレンスでは、ノーベル財団理事⻑のCarl-Henrik Heldin(ヘルディン)教授や、レアル・マドリード、ロサンゼルス・レイカーズのチーフ・メディカル・アドバイザー、ハーバード⼤学医学部教授など、医学界を代表する世界的な専⾨家が来⽇し、講演を⾏った。

また、オリンピック⾦メダリストの室伏広治⽒や元サッカー⽇本代表の鈴⽊啓太⽒、テニスプレイヤー伊達公⼦⽒、宇宙⾶⾏⼠の⼭崎直⼦⽒、経済学者の成⽥悠輔⽒、フリーアナウンサーの滝川クリステル⽒など、スポーツに限らず、各界を代表するスペシャリストが登壇し、エリートアスリートケアの⼀般活⽤や宇宙医療の未来、⾷とパフォーマンスなど、多岐にわたるテーマで講演を実施した。

「Sports Doctors Networkとは 癌と⾷ 未来をどう設計するか」というトークセッションでは、⼭⽥早輝⼦氏(COO/ Head of Asia-Pacific)、成⽥悠輔⽒、ヘルディン氏が登壇。ノーベル財団理事⻑であり分子生物学者、医学研究者でもあるヘルディン氏は、がんについて、がんになりやすい食事やがん予防の重要性を説き、さらに「予想として、がんはなくなりますでしょうか?100年経ったらなくなりますか?なくなる、という言葉は強すぎるかもしれないですが、40年前にがんと診断されていれば死亡するリスクは2/3だったんです。今は死亡リスクは1/3に減りました。完全にがんを撲滅するのは難しいですが、段階的に改善されています」と説明した。

また、ヘルディン氏は「健康に関する知識を持っているがみんなそれを行動に移すのは難しい」と問題提起。歴史的には、科学者が研究し、その研究結果をもとにタバコやアルコールといった有害でもあるものを政治家が規制していった、と振り返った。

ヘルディン氏の話を受けて、成田氏は「一つ思うのは、政治や政府、権力が実はとても重要なんじゃないかなと。経済学者らしくはないかもしれないですが、こと食や健康に関しては政府の役割がすごく大きいと思います。その理由の一つは、健康な生活とわかっていてもできない、不健康とわかっていてもやめられないということ。だからこそ、タバコやアルコールに税金をかける。タバコについてはゾーニングもありますね。それに類することを、食べ物や飲み物でするのも不可避なのかな。もう一つの理由は、実は健康、不健康がわかることが難しいということ。食の健康への影響を厳密に科学的に検証することは難しい」と、食や健康に関して持論を述べた。

つぎに「エリートメディシンの一般活用と宇宙医療の未来」と題されたトークセッションには、梅澤⾼明⽒、⼭崎直⼦⽒、ミヒッチ氏が登壇。トークセッションの中で、宇宙飛行士の山崎氏は、自身の宇宙滞在期間の経験をもとに、宇宙での暮らし、食生活、トレーニングなどについて説明した。

宇宙にいる間は、歩く必要がなく骨の密度が1か月で約1.0%~1.5%ほど減り、筋肉量は太もも周辺が特に減ると話し、そのために宇宙飛行士は宇宙でトレーニングをしていると説明した。

ミヒッチ氏は、サッカー選手のトレーニングや食事管理などの説明の中で、筋肉の量が減少していく状態を指す「サルコペニア」もトピックに上げた。ミヒッチ氏は「宇宙に2週間いると地上では歩くことが困難になりますが、たとえばケガをして入院したときも、何も運動をしなければ筋肉量が低下します。スポーツでもケガをすることがありますが、24~48時間以内にケガをしていない部位の運動を始めます」と言い、地上でもケガをした場合は、ケガをした部位以外は運動をして筋肉量を減らさない重要性を解説した。

 

そのほかにも、ミヒッチ氏はビタミンや鉄分といったアスリートの体に必要な栄養素を食事で摂り、サプリメントで補う必要性も話し、山崎氏は宇宙での栄養管理の方法や習慣を紹介していた。

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 金メダリストも宇宙飛行士も登壇、医療とパフォーマンスの未来が語り合われる