幼いころ、白衣を着て仕事をする歯科医師の父の姿に憧れを抱き、同じ道を志した石幡一樹氏。埼玉県久喜市の久喜駅より徒歩すぐに医院を構える「いしはた歯科クリニック」の理事長として、他の歯科医師たちと日々患者の治療にあたっています。得意とするのは、インプラントや義歯、そして父譲りの顎関節症の治療です。他県からも患者が訪れる理由と、石幡氏の歯科医師としての使命について聞きました。

他県からも患者が訪れる歯科医院

私は、埼玉県久喜市で歯科医院を営んでいます。当院の強みは、インプラントと顎関節症の治療です。評判を聞き、東京や千葉、山形など遠方から来院される患者様もいます。

開業から12年が経過し、その間、保険診療で作る義歯は3〜4年しかもたないという現実を見てきたことで、インプラントに惹かれるようになりました。というのも、保険診療内で作る義歯は、それ自体がもたないだけではなく、健康な歯に義歯を引っかけて使うため、長期使用により健康な歯を揺さぶることによりダメージを与え、さらに歯を失う事態になってしまうこともあるのです。

自費で作る義歯はまだ良いのですが、それでも摩耗は防げず、定期的に手を加えなければ噛み合わせを維持できません。また、取り外してケアをする煩わしさは、保険診療内で作るものと変わりません。正しい噛み合わせを維持することは、口内環境だけではなく、全身の健康維持に重要なことです。特に、両側の奥歯でしっかり噛むことは、平衡感覚の維持に不可欠。転倒により骨折し寝たきりとなり、誤嚥性肺炎を起こして亡くなる高齢者を多く見てきました。両側の奥歯でしっかり噛めるようにすることは、転倒防止にもつながるのです。
「入れ歯がダメになったら作り直せばいい」ではなく、「今ある歯をこれ以上失うことを食い止め、生涯しっかり噛めるようにする」。人生100年時代において、最後まで食を楽しむことは大切なことです。しっかりと噛めるように口内環境を整えることは、健康寿命の延伸につながる。今後20、30年生きることを考えると、インプラントの良さをご理解いただけるのではないでしょうか。

私が歯科医師として最も大切にしているのは、患者さんが今ある歯をこれ以上を失わないようにして生涯しっかり噛めるためには何が最善であるかということです。
歯を失い、部分入れ歯を入れざるを得ない状況になった時に保険の部分入れ歯を選択すると歯をどんどん失っていくことは論文で示されております。ずっと歯医者に通院しているのに徐々に歯を失って入れ歯は大きくなっていき、噛めなくなるようでは何の治療をしているのかわかりません。今しっかり治療をすることでそれが達成できるならある程度の費用はかけるべきです。何でも噛めて美味しく食事が出来ることは人生の幸せの上位だと思います。この価値観に共有する人の人生を豊かにしたいと考えております。

父の思いを継ぎ、顎関節症の治療法を標準治療として全国に広めたい

当院のもう1つの強みである顎関節症の治療は、私が歯科医を志すきっかけとなった亡き父から受け継いだものです。顎関節症には、明確なエビデンスのある治療法が確立されておらず、大学病院でも治すことが難しいとされてきました。そんななか、父は自身が顎関節症を患ったことからその治療法を模索し、見事症状を改善。その治療法を顎関節症に悩む他の患者に採用したところ、その方たちの症状も改善されたのです。

父は学者肌の歯科医で、残りの人生を著書や論文執筆に捧げたいと思っていました。しかし、志半ばで急逝。顎関節症に関する父の治療法を息子の私が引き継いだところ、顎関節症の分野を極めてきたわけではない私でも、患者様を治すことができました。世の中には、どうしても顎関節症が治らずに困っている患者様が多くいます。一人でも多くの患者様を救うために、父が研究してきた治療法を顎関節症の標準治療として世に広めたい。これが私のミッションであり、ライフワークです。

私が得意とする義歯やインプラントは、他の歯科医でも対応できます。これからも力を入れ続けることに変わりはありませんが、歯科医として一番業界に貢献でき、かつオンリーワンとなれるのは顎関節症の治療だと思っています。私も講演当初は不慣れで緊張していましたが、私は講演会の経験を重ねることで人前でも話せるようになりました。講演会を開いて治療法を広めていくことは、父への孝行にもなるでしょう。

患者が「生涯噛んで食べられる」よう

義歯、インプラント、顎関節症の治療。こうした強みを打ち出していくことで、志を同じくする歯科医師が共に働いてくれるようになりました。私ではなくても対応できる治療を他の医師に任せられるようになったことで、より難しい状態にある患者様の診察に集中できるようになっています。

現在は歯科業界全体の1%しかいない日本補綴学会専門医ですが、今後の目標として、日本補綴(ほてつ)歯科学会の指導医の資格を取り、当院で3年間勤務したら認定医になれるようにしたいと思っています。院内での技術継承も行いつつ、講演会や書籍を通して「いかに患者様を生涯噛めるようにするのか」について、次世代に伝えていきたいですね。治療法のマニュアルを作るために、来年には一般の方向けに顎関節症に関する書籍を出版し、ゆくゆくは歯科医師向けに顎関節症に関する書籍の改訂版を出したいと思っています。

2024年7月には、埼玉県大宮区に分院を開くことになりました。久喜よりもアクセスがしやすくなる分、他県からの患者さんにもより通っていただきやすくなります。「治療がやり直しになってばかりで困っている」「本気で噛めるようになりたい」「これ以上歯を失いたくない」「生涯美味しく食事を食べたい」という患者様に、ぜひお越しいただきたいですね。歯の健康に向き合いたい患者様の思いに、ぜひお応えしたいです。

私は歯科医の仕事が100%好きだと断言できます。患者様に「おいしく食べられるようになりました」「自分の歯のように噛めるようになりました」と言われるのが、本当にうれしい。父がそうであったように、これからも仕事に対して誠実に向き合い続けたいです。

医療法人社団樹伸会いしはた歯科クリニック
理事長  石幡一樹
https://ishihata-dental.com/

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 顎関節症の治療を広めることで、歯科業界に寄与したい。 父から受け継ぐ歯科医師の思い