山口県下関市で水産業を営むナンスイ株式会社は、主に韓国から輸入した質の良いあわびを各地に直送している。今回は、代表取締役社長 足立一輝さんに、国内のお客さんへの届け方やお客さんに寄り添ったサービスについて伺った。

韓国から仕入れたあわびは、下関の生簀(いけす)で新鮮なまま管理され、いわゆる「活き」の状態で日本各地に陸送で直送されている。しかし、どうしても東北以北へは、新鮮なまま届けるのが困難だという。

しかしコロナ禍を経て食品ロスも考慮し、一次加工後に冷凍したものの配送を始めた。届き次第、厨房で味付けすればすぐに提供できるように加工して届けているという。

「これがうまくいきまして、あわびをはじめ、他の魚介類についても東北や北海道へも届けられるようになりました。例えば福島県の有名なリゾート施設で提供されているあわびは、全部、うちのあわびです」と足立さんは語る。

しかし「加工」であることに難色を示すお客さんもいるのではないだろうか。そう尋ねると、足立さんは次のように回答した。

「加工はどうしても、『活き』よりは価値が下がるかもしれませんが、コロナで大きく状況は変わりました。弊社も損したくないですし、お客さんにも損させたくありません。リピートもしてもらわないといけません。そこで、実際に料理をするときの扱い方をお客さんに直接聞いて、使いやすいように加工した上で冷凍し、付加価値を付けています」。

足立さんのお話を聞いていると、お客さんに寄り添った思想を持っているように感じる。その源泉について尋ねると、「私は水産業に入るまで、16年間、ずっと内装業の職人をしていました。その時代から、お客さんを喜ばせたい魂があり、お客さんの喜ぶ声を聞きたいんです。だた物を売って、お金もらうだけで終わりたくないんです。『わー嬉しい! こんなに大きいぷりぷりしたあわびを買えるなんて!』という生の声が聴きたいんです。

今は面識のない相手と商売をしていますが、メールやLINEではなく、必ず電話で声を聞くようにしています。自分も相手も忙しい中、時間をとられますが、声を聞かないとわかりません。相手の温度などは声に全部出るものだからです。だから、私はわざと電話するんです。正直、面倒くさいですが、相手を肌で感じておきたいんです。そういう気持ちでやっています、基本的には。あわびは、どこで買っても韓国産であれば、ほとんど変わりはないかもしれません。でも、『あなたから買う韓国産のあわびは嬉しい』と言われたいんです」と語った。

お客さん思いの源泉は、足立さんの人柄と職人気質にあったようだ。だからこそ、ナンスイの韓国産あわびは、たとえ加工であってもお客さんを笑顔にしているのだろう。

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 韓国産あわびを全国に届けたい! お客様に寄り添ったナンスイ株式会社の取り組み