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高齢化が進む中、認知症対策としての成年後見や民事信託、遺産整理業務などを高齢者を対象にし た相続関連の業務に特化しているNBC司法書士事務所。司法書士として生き残れるのは「相談者に寄り添うことができる司法書士」という吉田隆志代表にこれからの司法書士について聞いた。
NBC司法書士事務所は、不動産登記や簡裁の民事事件など、司法書士業務全般を広く担っていたが、遺産相続など高齢者を対象にした業務に特化するようになった。その背景の一つは、ネットバンクの台頭やコロナ禍の影響で、銀行が支店を整理し、本部や母店へと集約する増えた結果、銀行案件が大手の司法書士法人の寡占状態となる傾向が続いていることだという。不動産案件も同様で、吉田隆志代表は「このままだと業務が縮小するばかりだ」と危機感を語る。
また、高齢化が進み、遺言や相続発生後の遺産整理業務が増加し、相続対策の重要性に気付いたことも背景の一つだという。吉田代表は「これまでも成年後見人の案件はありましたが、高齢化社会で、認知症になったときの不安も多く聞かれるようになった」と語る。
認知症などで手続きが困難になってしまった本人に代わって財産などを管理する成年後見人制度だが、吉田代表は「法定後見人制度を利用すると、裁判所や専門職後見人などの指示に従う必要がある場合もある。成年後見制度だけで対応すると、多少リスクがある。家族信託を利用する場合も、相談する専門家によって対応にばらつきもあるので、安心して利用できる場所を作りたいと思った」と高齢者に特化した理由を話す。
近年、遺産整理関係には司法書士以外に行政書士や銀行なども参入し、どこに相談していいのか分からないという人も少なくない。「銀行や行政書士は直接登記ができませんが、登記・成年後見制度と家族信託の双方に対応できるのが司法書士の強み」という。飛び込みで贈与の登記依頼を受けた場合などは、まずは一般的な税金についての話をしたうえで対応を進めるようにしている。
「そもそも税金のことを考慮していない方が多く、後に思わぬ税金の請求が来たなどという相談を未然に防ぐためであり、ただでさえハードルの高い司法書士の事務所を訪れてくれたのだから、門前払いはしたくない。他の事務所だと『税金の事は税理士に聞いてください』とシャットアウトしてしまうことも少なくないのですが、個別具体的な事など必要に応じて信頼できる税理士などを紹介することもできますし、少なくとも司法書士の領域は対応すべきだと思います」と強調する。
また、近年では一般社団法人を立ち上げ、司法書士では対応できない分野のサポートも始めた。「例えば、一人暮らしの高齢者が施設に入ろうと考えたとき、身元保証人が求められるケースがありますが、基本的には司法書士の業務ではないので手助けができない。そういったことを社団法人の方で対応したい。囲い込みではないですが、それを窓口にして、より高齢者の財産管理に資していきたい」と語る。
IT化が進み、申請書なども簡単に作れるようになる時代を生き残れるのは「相談者に寄り添うことができる司法書士」だという。「例えば、家族信託は制度自体が複雑で、契約をする高齢者理解できるのか、といった不安があります。説明の際にずらずらと専門用語や法律用語を並べられても分からないので、正確性がやや薄れていくかもしれませんが、よりイメージしやすいものに置き換えて説明することが重要」と説く。超高齢化社会を見据え、司法書士としてはもちろん、さまざまな視点から高齢者を支えていく。
NBC司法書士事務所
http://www.shiho-yoshida.com/
(代表)司法書士
吉田隆志
1964年、埼玉県出身。1988年に国学院大学法学部卒業後、株式会社サミットストア(現サミット株式会社)、佐々木司法書士事務所、岡田司法書士事務所の勤務を経て、1995年に司法書士試験に合格。1996年に旧保谷市ひばりが丘北で開業。その後、事務所を西東京市田無町に移転。
※週刊エコノミストWEB企画『ビジネスクロニクル』から転載。
元記事:https://chronicle.weekly-economist.com/person/nbc.php