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世界最高峰のスケートボードコンテスト、ストリートリーグ“Street League Skateboarding(略してSLSと呼ばれる)”が8月12日に有明アリーナでアジア・日本初開催され、これまでの日本のスケートボードコンテストの歴史上、類を見ないほどの興奮と感動の一戦が繰り広げられた。
そんな歴史的な一戦を制したのは、東京オリンピック金メダリストの堀米雄斗(24)。
堀米はかつてない集中力で自身の持つ最高難度のトリックを次々とメイク。
シングルトリック3本目には、これまで大会では1度も見せたことがない世界初となるオリジナルトリック、ユウトルネード(ノーリーバックサイド270ノーズスライドからさらに270度回転してレッジを降りる技)で9.5点を獲得。
合計4つのナインクラブ(特別に讃えられる9点以上の得点)で試合を決定づけ、SLS通算7度目の優勝を地元江東区で飾った。
最後のインタビューでは「今日は10点満点」と話すほどの完璧な勝利を収めた。
ちなみに堀米は2021年の東京オリンピック、今年5月に行われた国際大会UPRISING Tokyo、そして今回のSLS東京大会と、地元江東区である有明で行われた大会では負けなしとなる。
2位はポルトガルのグスタボ・リベイロが怪我のため急遽欠場し、2日前にSLS初出場が決まった池田大暉(ダイキ)17歳。
世界最高峰のSLSに初出場&緊急参戦とは思えないほどの、肝の据わった滑りと精神力の強さで予選ラウンドを通過。
決勝ではさらに勢いを上げ、最難度のトリックをSLSの舞台でメイクしていき、なんとSLS2通算24回の優勝を誇るスケート界最強の男、ナイジャ・ヒューストンをも抑えて準優勝!
しかもこの2人は、今年5月に惜しまれつつも閉店した伝説のスケートパーク、ムラサキパーク東京のローカルスケーター。
伝説のスケートパーク出身の2人が伝説の舞台で伝説を残すという、伝説3拍子の1日となり、SLS東京大会でこの2人がナイジャ・ヒューストンと並んで表彰台に立つ姿はあまりに感動的で鳥肌が立ちっぱなしだった。
女子の優勝は、劇的な展開を最後に制したオーストラリアの13歳、クロエ・コベル。シングルトリック最後となる5本目に巨大なステア(階段)を逆足のスタンスで行う技、スイッチキックフリップで飛び越え、逆転優勝。現在SLS5連勝中であるライッサ・レアウ(15)の6連勝を阻止する形となった。
シングルトリック2本目にバックサイドKグラインド ノーリーヒールフリップアウトで8.9点の高得点を出し、すぐ目の前にSLS初優勝が見えていたが、惜しくもクロエに逆転を許してしまった西矢椛(15)だったが、シングルトリック最後の5本目には、最大のプレッシャーを跳ね除け、見事にニコンレッジと呼ばれる巨大レッジをバックサイドスミスで撃破!
最後には逆転され涙を見せるシーンもあったが、見事すぎる準優勝でSLS東京を飾ってくれた。
今大会は出場者にハプニングが続き、なんと欠場者が5名。本来出場予定だったポール・ロドリゲスが怪我のため欠場となり、代わりにトミー・フィン。グスタボ・リベイロが欠場のため、急遽2日前に池田大暉がSLS初出場。白井空良が前日練習で怪我をしてしまい、代わりにシェイ・サンディフォードがSLS初出場。
予選大会を制した赤間凛音も前日練習で怪我をしてしまい、代わりに上村葵がSLS初出場。アレックス・ミドラーも怪我で欠場となり、急遽当日に山下京之助がSLS初出場。ということで、合計5名が欠場者に変わり出場し、うち4名がSLS初出場となった。
ストリートリーグ東京大会はフジテレビが運営する動画配信サービスFODで、日本語実況&解説が配信されている。
https://fod.fujitv.co.jp/title/f0gl/
【SLS 2023のルールと仕組み】
・2023年度のSLSは45秒間自由にコース内を滑走するラインを2本と、コース内の自由な場所で1発技を行うシングルトリックを5本行い、最終的にラインとシングルトリック上位4本の合計得点で順位が争われる(1トライにつき10点満点で採点)。
※ラインのスコアは最大でも1つのみのカウントとなり、前年までのように必ずカウントされるわけではないため(前年はライントリックが最終スコアに必ず1本カウントされた)ラインをミスしてもシングルトリックで逆転が可能になった。
※9点台の得点はナインクラブと呼ばれ、賞賛される。
・判定は「達成度」「難易度」「多様性」「独自性とスタイル」こちらの要素を基準とした総合的な判断により行われ、5名のジャッジが10点満点方式で採点。1つのトライに対して、最高得点と最低得点を除いた3つの得点の平均点で得点が算出される。
・男子はKNOCKOUT ROUNDと銘打った予選から開始され、20名のスケーターが4つのグループに分かれて参戦。
※前回4月29日に行われたシカゴ大会優勝のケルビン・ホフラーはシードで決勝からスタート。各グループの勝者と、グループ勝者を除いた全体のトップが決勝に進出。
女子は前回(シカゴ大会)表彰台のライッサ・レアウ、西矢椛、ロース・ズウェツロートの3人はシードで決勝からスタート。残りの5名で予選ラウンドが行われ、上位3名を合わせた6人で決勝が行われた。
・今後のSLSのスケジュールは10月7日にオーストラリアのシドニーで予定されており、前日にセレクトシリーズ(予選大会)が行われる予定。その後に総合優勝を決める最終戦、スーパークラウンが開催される(開催地&日にちはまだ未定)
※8月12日時点
予選ラウンド第1グループを首位で突破した池田大暉はライン1本目で1つミスがあったものの7.8点を出し、4位でシングルトリックに臨む。
以下、池田のシングルトリック[]はセクション名。
1本目[ステア]フェイキーフロントサイド180キックフリップを決めて
2本目[ハンドレール]キャバレリアルバックサイドテールスライド フェイキーをミス
3本目[ハンドレール]キャバレリアルバックサイドテールスライド フェイキーを決めて8.7点。
4本目[ハンドレール]バックサイド270リップスライド 270アウトを決めて9.3点
5本目[ハンドレール]キャバレリアルバックサイドテールスライド ビッグスピンアウトをミス。
堀米雄斗がユウトルネード(ノーリーバックサイド270ノーズスライド270アウト)を見せた後に見せた、ビッグハンドレールでのバックサイド270リップスライドからの270アウトは会場を大興奮の渦に巻き込む、圧巻の一撃を見せての準優勝となった。
予選ラウンド第4グループを首位で突破した堀米雄斗はライン1本目で9.3点を出し、首位でシングルトリックに臨むと歴史に残るシングルトリックを見せる。
以下、池田のシングルトリック[]はセクション名。
1本目[ハンドレール]ノーリーフロントサイド270 ノーズスライドを決めて9.3点
2本目[ハンドレール]スイッチフロントサイド180フィーブルグラインド(通称スイッチグレープフルーツ)を決めて9.1点獲得。
3本目[3段のハバレッジ]ノーリーバックサイド270ノーズスライド270アウト“ユウトルネード”を決め、9.5点
4本目[ハンドレール]ノーリーヒールフリップノーズスライド ビッグスピンアウトをミス。
5本目[ハンドレール]ノーリーヒールフリップノーズスライド ビッグスピンアウトをミス。
なんと4つの9クラブを叩き出すという快挙。3本目のシングルトリックでは1つのトリックで合計540度(1回転半)回る新技、ユウトルネードで9.5点を獲得。歴史に残る大会に最大級の花を添えて優勝を飾った。
SLS2023東京大会の映像
今回のストリートリーグは欠場者が多く出てしまったトラブルの他にも、当日の予選ラウンドで起こった出来事を1つ紹介したい。
まず今大会、急遽出場となった池田大暉は6月にロサンゼルスで開催されたSLS予選大会となる、セレクトシリーズでぶっちぎりの予選突破となるような驚異的な滑りを見せていたが、ラインで行ったトリックをシングルトリックで行ってはいけないというルール(同じセクションに限る)を違反してしまい、まさかの予選ラウンドで敗退となっている。
(補足すると、この時シングルトリックで行なった技はライン1本目で行なっており、得点に採用されたラインは2本目のラインだった)
しかし今大会、怪我で欠場したグスタボ・リベイロに代わってまさかの初出場が決まった。しかも予選ラウンドは、各グループに優勝候補が被らないように組み込まれており、池田が出場した組は昨年のスーパークラウン王者であるグスタボ・リベイロが決勝進出の本命枠。予選ラウンドを突破した彼の滑り自体が素晴らしかったのは当然だが、そのグスタボ・リベイロに代わって出場というだけでも幸運ではある。
そして池田と年齢も近く、同じモンスターアーミー(モンスターエナジーのアスリート)であるブラジルのフィリペ・モタが予選第2グループを勝ち抜き、決勝に駒を進めるはずだったが、ラインで行ったトリックを同じセクションでベストトリック5本目に行ったと判定され、まさに池田と同じルール違反で決勝進出を逃している。
しかし今回のケースは非常に難しいケースで、フィリペはラインでビッグスピン フロントサイドボードスライド(デッキを空中で270度回転させて、板の真ん中部分で滑り降りる技)をメイクしているが、ベストトリック5本目で狙っていたトリックはビッグスピン フロントサイドハリケーングラインド(デッキを空中で360度回転させて、後ろのトラックを斜めにかけて滑り降りる技)だった。
しかし結果的には、後ろのトラックと呼ばれる金具部分がレールに届かず、デッキの真ん中で滑り降りるビッグスピン フロントサイドボードスライドの形になってしまい、そのまま着地に成功。スコアもビッグスピン フロントサイドハリケーングラインドを狙っていたが、完璧ではなかったための得点(4.9点)が出ていると思われる。
実際にここでビッグスピン フロントサイドボードスライドをやったという判定であれば、即座に0点になるので、この時点ではあくまでビッグスピン ハリケーングラインドとしての判定で一旦、予選第2グループをトップ通過という形になったが、決勝前になって予選敗退のアナウンスがあったため、結局のところ5本目のトリックはビッグスピン フロントサイドボードスライドだったという判定となり、フィリペにとっても悔しい結果となってしまった。
あまりにも偶然すぎるが、今までに見たことが無いケースだったので、このような珍事が伝説の1日の裏側に起きていたということをここに残しておきたい。
【SLS東京2023・男子リザルト】
1位 堀米 雄斗 –37.2
2位 池田 大暉 –34.0
3位 ナイジャ・ヒューストン –26.8
4位 ジェイミー・フォイ –23.5
5位 ケルビン・ホフラー –8.6
1位 クロエ・コベル –32.5
2位 西矢 椛 –31.2
3位 ロース・ズウェツロート –26.4
4位 ライッサ・レアウ –22.6
5位 織田 夢海 –12.1
6位 中山 楓奈 –11.1
写真・文 小嶋勝美 スケートボードライター兼放送作家兼ムラサキパーク東京のローカルスケーター。10年間のお笑い芸人生活を経たのち、放送作家をしています。