高齢者や体の不自由な人など日常生活で困りごとを抱える人とそれをサポートできる人をつなげるマッチングプラットフォームサービス「iki-iki」。大場航期代表は、地域の持つ高齢化などの社会課題を地元リソースで解決できる社会インフラだと、その仕組みをフランチャイズ形式で全国各地に提供する。

「ソーシャルメイト」が日常的な生活支援

「iki-iki」は、生活する上で支援が必要な人と、同じエリアに住むサポートが可能な人をつなぐ、日本初の社会課題解決型助け合いマッチングサービスだ。大場代表は「自分の両親も80歳を超え、草むしりなど自分でできないことが増えてきた。公共サービスを利用しているが不便だという話を聞いたことをきっかけに、国の支援体制が整っていないのであれば、助け合いの仕組みを作るべきだろうと考えました」と経緯を語る。

これまでになかったサービスとあって、スタートに当たり、「ソーシャルメイト」と呼ばれるサポートする側の登録にはかなり苦戦したという。大場代表は「完全ボランティアのサービスはありましたが、『iki-iki』のように民間で地域の人を巻き込んで、マッチングさせるサービスはなかったため、イメージができそうでできない。および腰の方も多かったこともあり、結果として30人集めるのに3カ月かかりました」と振り返る。

「ソーシャルメイト」が担うのは、掃除や買い物代行、スマホのレクチャーなど専門性や技術が必要なく、体一つでサポートできるものがほとんど。大場代表は「他者への貢献意識があれば、どんな立ち位置の方でも活躍できる。『iki-iki』の仕組みは、困りごとの解消だけでなく、労働という形の社会参加を同時に提供できる。その部分もこれまでにないものだと思います。日常的な生活支援を通じて、困っている人をサポートし、労働力不足も解消する“社会課題解決型”サービスです」と説明する。

地域経済の活性化と地域共生社会を実現

この仕組みをノウハウ化し、フランチャイズ形式で全国に広めている同社だが、各地域の事業者となるフランチャイズオーナーには同サービスの社会的意味について、共通認識を持ってもらうことを重視している。「ビジネスではなく、地域貢献なので、自分が立ち上げたときの思いに賛同してもらうのが前提になります」と大場代表が強調するように、その思いは料金体系にも表れている。

サービス利用料は1時間1500円で、ソーシャルメイトの時給が1200円なので、事業者側の収益は300円だが、大きなメリットもあるという。大場代表は「例えば、終活や相続に関連する葬儀屋や不動産屋など、高齢者とのタッチポイントが多い事業者には、利用者の多くは潜在顧客なので、顧客との接点を自然に持てるようになる。本業を嫌みなく伝えられるだけでなく、地域貢献サービスを運営している頼りになる事業者だという信頼関係にもつながります」と語る。

フランチャイズ加盟は、1市区で先着順、基本1社独占なので、同業他社と差別化できる。また、CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)にもつながる。「オーナーや事業者にとってはブランディングにもなると考えています」という。大場代表は「一つでも多くの地域に『iki-iki』を広めていくことが自分の社会的使命だ」と力を込める。

今後、激増するであろう高齢者からのニーズに対しては、「介護が必要になる手前、いわゆるフレイルという時期の方々のサポートはロボットに置き換えることができない。どんなに技術が進化しても、普遍的な助け合いは必要」という。将来は「iki-iki」の利用でたまったポイントを地域通貨のするようなものにし、地域の経済の活性化と地域共生社会を同時に実現する、と構想している。困りごとを抱える人であれば誰でも利用できる同サービスは、助け合いを中心とした温かい人間関係を構築できるという部分から、コミュニケーションの断絶に起因する社会的孤立や孤独死の防止にもつながる。高齢社会や地域を支える社会インフラとして、「iki-iki」はさらなる広がりを見せることだろう。

※週刊エコノミストWEB企画『ビジネスクロニクル』から転載。

元記事:https://chronicle.weekly-economist.com/person/iki-iki.php

■プロフィール 

合同会社iki-iki

https://www.iki-iki-life.jp/

代表 大場 航期

1970年、東京都出身。早稲田大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。NTTドコモとの無線機器開発営業、iモード立ち上げを担当。2021年に独立し、現在は社会課題解決型の助け合いマッチングサービス「iki-iki」を展開。

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 地域の社会課題解決 マッチングサービス「iki-iki」とは