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今回お話しを伺ったのは、山口県の下関市で水産業を営むナンスイ株式会社の代表取締役社長 足立一輝さん。韓国から輸入した質の良いあわびを各地に直送する事業を中心に行っている。まずは足立さんのご自身の経歴を伺った。
足立さんは中学卒業後、16年に渡り、建築業界で内装業の仕事、主にクロス替えを行ってきた。ある畳屋で求人が出ていてたのを見て、面白そうだなと思ったのがきっかけだったという。
足立さんは当時を次のように振り返る。「17歳のときに歩合制で雇われました。畳職人に教えてくれとお願いし、教わってからはとにかく我流でやっていました。19歳で屋号を付けて、自分の会社として独立してやらせてもらいました」。
足立さんは当時、ご縁に恵まれて結婚していたが、やがて現在の奥さんに出会うことになる。そして、その現在の奥さんの父が水産の仕事をしていたことから、再婚をきっかけに水産業界に参入。「内装の会社は当時、可愛がっていた人にゆずって身を引き、リスタートの決断をしました」と足立さんは語る。
内装業は地域の仕事で、水産業は全国の仕事。まったく異なるフィールドだ。そんな未知なる世界に飛び込んだ足立さん。「正直、仕事はきつかったですが、自分の色でできる。自分のしたいようにやらせてもらいました」。ずっと我流やってきた足立さんの性格を義父が見抜き、一任してくれたという。
しかし、当初はうまくいかないこともあったという。「義父にとっては義理の息子なので、面白くないところもあるだろうし、好き勝手にやって目につく部分もある。『お前、そのやり方はどうなんだ?』と言われたこともありました。しかし、いまは結果が出ているので、何も言われなくなりました」と足立さんは語る。
現在は、韓国からあわびを仕入れているが、義父の会社とナンスイの2社合算で、日本トップシェアを獲得するまでに成長した。
うまくいっている秘訣として、足立さんは「昔から人が嫌がる人や、人が嫌がる仕事のほうへわざと向かっていく習慣があるんです。『あの人はやりにくい』と言われるような人のところにわざと行き、口説くのが好き。人が嫌がる人を味方にすると、その結果、うまくいくんです」と語る。
多くは、固定概念にとらわれているだけだと足立さんは付け足す。例えば、水産業では古くから市場を通さないと、魚介類は買えないという考え方が定着していた。しかし、現在は様相が変わっている。一個人が市場を通さなくとも新鮮な魚を漁師から直接インターネットを通して買える時代だ。もはや、市場での取引は一つの手段にすぎない。
足立さんはそんな固定概念を、常に新しい視点で打ち砕いてきた。それは、異業種から水産業に飛び込んだからこそできたことであり、足立さんの人柄や個性が成せる業なのかもしれない。