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鍛島社長は熊本県出身。貿易関係の仕事に従事し、世界30カ国を渡り歩きました。その中で知ったのが、その国でしか味わえない「クラフトビール」の存在。2012年に一念発起し、地元熊本でビアホール「KAEN」を開業しました。これが、ダイヤモンドブルーイングの前身となります。2017年に「日本オリジナルのクラフトビールを造りたい」という思いから、熊本で唯一となるビール工場併設型マイクロブルワリー(醸造所)を設立。以後、BEERTEC事業が加速していきます。
同社が掲げるBEERTECは単にクラフトビールを開発、販売するのではありません。最も力を入れているのが微生物のスクリーニング。地元の大学で応用微生物学教授らと連携し、膨大な数のサンプルを採取しています。「熊本、阿蘇の土地は水に恵まれており、農業が盛ん。また、有明海は遠浅になっており、多種多様な海洋微生物が採取できる。微生物の採取や研究において、条件が整った環境」と鍛島社長。しかし、採取した微生物の全てがビール酵母になるわけではありません。「何100種という微生物を採取しても、ビール酵母になり得るのは1種類にも満たない。さらに、それを醸造しても美味しくなければ市場に出せないというハードルもある。つまり、例えば1万種の微生物を採取して10株の酵母ができたとしても、クラフトビールとして市場に出せるかは未知数」と語ります。
では、ビール酵母にならなかった微生物のサンプルはどうなるのか。鍛島社長は「ビール酵母にならないものはヘルスケアやサーキュラエコノミー、その他研究開発に役立てる。当社のスクリーニングは、膨大な数の微生物の挙動を研究するもの。もしかしたら、がん細胞に役立つ微生物を発見する可能性も秘めている」と話しました。ビール造りの副産物が医療貢献へ繋がるような事業スキームが、同社の特徴と言えます。
0からクラフトビールを商品化させるのには、サンプル採取からコロニー植え継ぎ、酵母発見、発酵試験、培養、試験醸造といった非常に多くの工程が必要となります。同社が目指すのは、多種な酵母を採取しライブラリー化すること。つまり「酵母ライブラリー」の設立です。酵母の保管や酵母液の調整、分離方法、醸造条件といった知財を蓄積し、自社のクラフトビールのみならず世界に向けて提供していくのがビジョンとなります。
また、酵母採取の迅速化にも着手。従来、酵母の採取からビール醸造までにかかる時間は早くても1年かかります。これを短縮するシステムを開発中です。「マイクロ流路を用いた迅速酵母スクリーニングシステム。電磁泳動や磁気泳動で細胞をセル室に移動させる仕組み。これにより、サンプル採取から試験醸造までの時間を大幅に短縮することができる。また、全ての株を数値化させることが可能となる。まさにこれは産業革命と言えるのではないか」と鍛島社長は期待を寄せています。
日本生まれ日本育ち、正真正銘のジャパンクラフトビール造り。そして、テクノロジーを駆使したバイオサイエンス事業。ビール業界に誕生した二刀流ビジネスは、私たちの心も身体も救うかも知れません。