この夏、話題の映画といえば『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』でございます。シリーズ1作目の『ジュラシック・パーク』の公開からおよそ30年。ついに完結を迎えたロングセラー大作です。サム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムという『ジュラシック・パーク』第1作からの俳優の再登場という、オールドファンを喜ばせてくれた一方で、今回は前作までと少し雰囲気が違っております。

これまで恐竜との共生が強く打ち出されていたところが、大企業の陰謀がテーマのスパイアクション映画的な要素が強いのでございます。国連から委託されて恐竜を管理していた企業「バイオシン」で、研究開発されているのが、植物を食い荒らす遺伝子操作されたイナゴでございます。このイナゴの開発、大量発生が物語の大きなテーマのひとつにもなっておりますが、このバイオシンという企業から、「モンサント社」という企業を思い浮かべた方も少なくないのでは…。

今は、バイエル社に買収されていますが、アメリカの多国籍バイオ化学企業で、ここが開発した除草剤は、自然生息する全ての草木を排除するものの、自社(モンサント社)が遺伝子操作した穀物種子には影響しない。そんなビジネスを確立しその名を世界に轟かせました。ご興味のある方は、是非、検索してみてくださいませ。

そしてもうひとつ、この映画を観て思い浮かんだのが、「おや?この話、最近読んだ小説と超似ているなぁ…」でございます。その小説とは、『香君』。シリーズ累計250万部突破、2015年の本屋大賞を受賞。今年映画も公開になったベストセラー小説『鹿の王』の作者である、上橋菜穂子さんの7年ぶりの新作長編です。こちらの小説を読んだ時にも、「モンサント社」のことが思い浮かびました。『香君』読者で映画を観られた方は、ほぼ100%そう思われたのではないかと…。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は近未来が舞台ですが、『香君』は、遥か昔の設定で、奇跡の稲と言われるオアレ稲を独占、利用することで権力を維持発展させている帝国が舞台となっている物語でございます。

こちらも遺伝子操作のお話なのです。設定の時代は昔と近未来と違いますが、テーマ同じなのです。さらに驚くことに、こちらもイナゴ(バッタ)が登場するのでございます。どちらの作品もイナゴ(バッタ)の大量発生が描かれています。

ネタバレになるので、これ以上詳しくはお話できませんが、どちらも遺伝子操作と植物とその天敵のイナゴが重要なキーワードになっております。

遺伝子組換え作物は今の社会が直面している大きな課題でもあり、作品のテーマとして取り上げやすい問題ではありますが、この2作品がほぼ同じタイミングで公開されたのはとても興味深く感じた次第でございます。ただ、根底には同じテーマを抱えているものの、この二つの作品は時代背景はもちろん、まったく違うアプローチで描かれておりますので、映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』を観られた方、また小説『香君』を読まれた方は、是非、もう一方の小説、映画を観比べ、読み比べしてもらうと面白いかと存じます。大人の夏の自由研究にもおすすめでございます。

(文:絵本トレンドライター N田N昌)

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 映画『ジェラシックワールド』にハマった人が、『鹿の王』の上橋菜穂子の最新作にハマる理由