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2017年9月に始動した音楽原作キャラクターラッププロジェクト“ヒプノシスマイク”。総勢18人の個性豊かなメインキャラクターが「イケブクロ・ディビジョン」「ヨコハマ・ディビジョン」「シブヤ・ディビジョン」「シンジュク・ディビジョン」「オオサカ・ディビジョン」「ナゴヤ・ディビジョン」の6チームに分かれ、男の威信をかけた熱いラップバトルを繰り広げるという斬新な設定が大人気に。
HIP HOP 界の有名アーティストも作詞・作曲を手掛けたCDは常に音楽ランキングTOP10 にランクイン。2020年にはアニメ化が決定し、その後、コミックやゲームアプリ、舞台など、様々なメディアミックスが展開。その人気は音楽ファンだけにとどまらず、幅広い支持を得て、多くの熱狂的ファンを持つ一大コンテンツとなりました。そして、ヒプノシスマイクとして初となる映画 『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』 が、2月21日(金) により全国公開になります。
本作は単純な映画ではなく、スクリーン上で繰り広げられるラップバトルの勝敗が劇場内の観客投票によって決まる、劇場映画としては日本“初”となる観客参加型<インタラクティブ映画>となっており、筋書きのないストーリーで駆け上がってきたヒプノシスマイクが日本映画史上、誰も踏み込めなかった世界に新たな一歩を踏み出す、記念すべき作品となっています。
作品へのこだわりやヒプノシスマイクというコンテンツに感じた面白さなど、辻本貴則監督と中岡亮プロデューサーにお話を伺いました!
※辻本貴則監督の辻は正式には一点しんにょうです。
――本作とても楽しく拝見させていただきました!上映パターンのバリエーションが多く、制作がとても大変だったかと思います。
中岡:テレビシリーズとは違い、決まった尺があるわけでは無いので最初はキングレコードの宮本プロデューサーと「どういった内容を映画で描くのか」というお話をしました。楽曲部分はキングレコードさんからいただくのですが、最後のディビジョン・ラップバトルを映画で描くとなると“勝ち負け”というファンからするとすごくセンシティブな描写が避けられません。限られた尺にギュウギュウにつめた映画を作るのではなく、勝敗のドラマをアニメーションとしてもきちんと描くという方針で辻本さんに進めていただきました。キャストの皆さんには表現力を存分に発揮してもらったと思っていますし、想定よりはドラマ部分の尺が伸びてしまったのですが、結果それで良かったなと満足しています。
辻本:伸びれば伸びるほど制作費も上がりますし、勢い良く見せるべきコンテンツだとも思っていたので、ビデオコンテを作りながら進めていました。でも無理やり尺に収めようとすると芝居が縮こまっちゃうなと困っていたところ、制作の中盤くらいで「この尺に収まらなくても大丈夫なので」と少し余裕をいただけたので、嬉しかったです。
一般的なストーリーものの作品だとじゃあこの辺カットしようかという流れもあると思うのですが、本作でいうとドラマパート以外の楽曲部分は丸々使うのが当然ですし、尺を絞るにも限界はある。だから制作の途中で、尺のことを気にしなくて済んだことは助かりましたし、贅沢な作り方をさせていただいたなと思います。
――劇場でたっぷりヒプノシスマイクの音楽を浴びられることはものすごく贅沢でした!そしてドラマパートもファン感涙の内容になっていて。
中岡:CDのドラマトラックやアニメ、コミックなどで展開された既存ストーリーの伏線回収のようなものは想定しつつも、キングレコードさんと原作の百瀬さんで映画としての脚本は取りまとめていただいて。整合性みたいなところは、僕らが細かく気にするというよりは、IP全体として確認してもらっていました。そういう意味ではドラマパートで多くは語っていないと思うんですよね。それぞれの“関係性”の回収みたいなところにフォーカスしたシンプルな形になっています。
――和解であったり、お互い認め合ったり、シンプルですけれど「見たかった」がぎゅっと詰め込まれている様に感じました。
中岡:そういった部分を観客の方は観たいと思いますし、ライブのような映画だという前提があるのでドラマパートの部分が長すぎてもよくないなと思う部分がありました。 でも、各ディビジョンで尺の長さが違うとそれは良く無いのでバランスはとても丁寧に考えていきました。
――本当に全員主役でビックリしました!
中岡:それぞれに見せ場が無いと、僕がファンだったら嫌になるなと思って。全部均等に愛を込めて3DCGモデルを作ることが第一でした。ヒプノシスマイクには、主人公がいるわけじゃないという所も大きいと思っていて。辻本さんとも、メインで話しているキャラクター以外でも、画面に映っているキャラクターに関してはサボらずに向き合っていこうね、ということを話していて。
辻本:僕、実写系の監督なので、5人映っていたら2人ぐらい芝居をサボっていたりすることもあって、それはダメだよという話をしたりするのですが、アニメーションも一緒です。3人キャラクターがいたとして、真ん中にいる人だけを中心に作っていると、「いや、この2人は今何をしているんだろう」と思ったりして。
――実際に本作の中では、話しているキャラクター以外でも全員がリアクションしていますよね。また、バトルの敗者側のコメントがある所も好きでした。
辻本:負けたチームを応援してきた人は、そこからいったんそのチームが観られなくなるわけです。そうなると、敗者の描写も腑に落ちる形で作ってあげないと、応援してくれたファンにはとても申し訳ないですよね。そこもちゃんとやりましょう、となるとまた制作は大変になっていくわけですけれど、今作は負けたチームの3人の物語もしっかり描いているので、そういった部分にも注目していただきたいです。
――負けた時の言葉がすごく爽やかで、気持ち良かったですね。
辻本:そうですよね。その辺はやっぱり脚本の百瀬さんとキングレコードさんが「この時の感情はこうだから」「こういうセリフは言わないよな」とたくさん話しあって作ってくれたので。僕は当初、作りながら勉強していくところもあったのですが、「そうか(波羅夷)空却はこういう考えなのか」とか、脚本作りの際にしっかりお話を聞けたのが良かったなと思っています。
――お2人のヒプノシスマイクに関する第一印象はどんなものでしたか?
中岡:本作の企画が動き始めた序盤に、お誘いいただいた3DCGライブ「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 3DCG LIVE “HYPED-UP 01”」にお邪魔したことがすごく印象的です。ライブ感をすごく感じて、その熱量にも感激したと同時に、「これを知っているファンに音楽映画を作らなきゃいけないのか」というプレッシャーを感じました。ライブの独特の空気には勝てないじゃないですか。だからこそ、音楽をカッコよく見せることに正面から極力チャレンジしていこうと思いました。最初に「この作品でやりたいな」と思っていたことが3DCGライブに近しいものだったので、影響を受けていると思います。
――メディアミックスしているプロジェクトとして、何から触れても楽しいですけれど、3DCGライブが最初のインパクトだったというのはすごく納得しました。
中岡:そうですね。僕らがこれからやろうとしているものに近いものを1番最初に見た感じがします。気を引き締めねば、なんか普通に作っちゃダメだなみたいなことを帰り道で辻本さんと話した記憶があります。当時ライブを観に行って楽しかった自分や、辻本さんの様なはじめからヒプノシスマイクに詳しいわけではなかった方でも楽しめる様な映画にしたいなと。
辻本:楽曲に合わせたMVの様なアニメーションを作りたいですね、ということも制作のカロリーを考えずにとりあえず話していましたね。そしてライブ会場をしっかりと作り込むこと。3DCGライブにお邪魔したことで、音楽をしっかりと聴かせたい、見せたいということが固まりました。そしてMVも楽しんでいただきつつ、最後にはやっぱりバトルがピークとなるのですが、そこでまた僕が変なこと言い出して。「スピーカーに乗っていいですか」と。ヒプノシスマイクって、それぞれのキャラクターにスピーカーがついていて、それがすごくよく出来ているのにそこまで活躍しないよなと、どこかで思っていたんです。映画でキャラクターと距離が近ければ、スピーカーもしっかり見てもらえると思ったので。こんなにちゃんと作っていて、後ろでふわふわ浮いているだけだともったいないなと思って。
――私もスピーカーたちが大好きで、特殊能力というかスタンドというか、分身みたいでカッコ良かったです。
辻本:スピーカーを活かせるラップバトルにしたいなと思って、「スピーカーに乗って空中戦がしたいんです」ってお願いしました。この人何を言っているのかな?みたいな空気になりつつも、発想としては面白いから見てみたいと言ってくださって。スピーカーに乗って良いよと許してくれたキングレコードさんの英断に感謝します。
――それぞれのスタッフさんがアイデアや自分の得意分野を活かしていく形が胸熱ですね。
中岡:料理に使う素材は変えずに味を変えたいなというご相談は辻本さんにしていて、和食から中華からみたいな味の変え方は辻本さんにもたくさんご提案いただきました。その中で、様々な畑で活躍しているスタッフさんにも加わっていただいて。
辻本:僕1人が演出を全部担当していたら、ゴールに辿り着けなかったと思います。「優勝パフォーマンス曲の演出は別の方が手掛けても良いですか?」と聞かれた時に、それは確かに詳しい方にお願いした方が得策だな、と。僕からは実際にライブを見ている様な映像にして欲しいというお願いをして。ライブ会場をCGで作ってあるので、そこで使うカメラの位置とかレンズの種類、そして照明についても詳しい方が細かく見てくださって。
――リアルにライブ演出をされている方が入られているのですね!
中岡:長年、音楽ライブ映像のディレクターをやっている瀬里さんに立っていただいたんですが、「ここにカメラを10個構えられるとしたら、どうしますか」とか話しながらすすめていきました。コンテは切っていないんですよ、全部CG空間上で設計していて。それは優勝パフォーマンス曲以外もそうです。
アニメーションだとキャラクターに対して良い当たり方をする照明を当てるのですが、本作ではCGの空間を現実のライブ会場に見立てて照明演出を組み上げていました。CG上は機材費が無いから楽曲ごとに照明を変えたりしていて。本当にそこでキャラクターがライブをしている感じで、チャレンジングで面白かったですね。
監督や演出陣の表現したいことを自由に任せていただけるようなやり取りがキングレコードさんとできたこともあったからこそ、アウトプットにはすごく責任感と緊張がありました。フリーにやらせていただくと逆にプレッシャーもあるという。でもそのすごく良い緊張感が続いていたので、楽しかったですね。
辻本:MVパートも女性2人で演出されていて。実際にMVを演出している方だったりするので、今回の映画が特殊な作りだからこそ出来た采配なのかなとも思います。
中岡:2回戦のMVパートもCEKAIのイノウエアヤナさんとイノウエマナさんという女性2人に演出をしていただいて。実際にMVなどを演出している方だったりするので、得意分野を持った方たちが集結できたというのも面白いところですね。
――私も一本の映画として本当に楽しませていただきましたし、いちファンとしてはキャラクター紹介部分が初期ビジュアルだったりするところも感動でした…!
辻本:おおっ、素晴らしい! 気づいていただけて嬉しいです。この映画はもちろんたくさんの人に観て欲しいのですが、初期の頃からヒプノシスマイクを応援してくれていた人にとにかく喜んで欲しいという思いが僕にはあります。最初のイラストをそのまま3DCGキャラに起こすということをポリゴンさんがやられていて、その発想は本当に素敵だなと思ってます。ヒプマイ黎明期からファンだった方々にちゃんと喜んでもらえる作品になればこそ、初めてヒプマイに触れる方々にも楽しんでもらえる作品になるんだろうな、と僕は信じております。
中岡:僕は完成した作品を観た時に、クレジットの隅から隅まで見て、やっと終わりましたねと思えました。たくさんの人が全力で関わってくれています。音楽映画として観て、このキャラクターが気になるなと思ったらもう一度観ていただいたりして、これからヒプノシスマイクに触れる方にもこの新しい映画体験を楽しんでいただけたらありがたいです。
――本当に素敵な映画、素敵なお話をありがとございました!最後にこれだけお伝えしたかったのですが、監督のXのプロフィールが面白いですね(笑)。https://x.com/TakaTsujimo [リンク]
辻本:ガジェット通信さん、さすが目のつけどころが恐いですね(笑)。僕は「ウルトラマン」の監督をやっていて、メイン監督になった時にすごく嬉しかったので、プロフィール欄に関わったウルトラマンの作品名を全部書いていて。そして、ヒプノシスマイクの映画が発表になった時に、どちらの作品も主役だから均等に書こうと思ったら、こうなりました。
――プロフィール欄を拝見した時から、絶対に最高の映画になるなと楽しみにしておりました。改めてありがとうございました!
映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』
監督:辻本貴則 ※辻本貴則監督の辻は正式には一点しんにょうです。
公開表記:2月21日(金)全国ロードショー
配給:TOHO NEXT
©ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Movie