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ヒットする番組の企画の“源泉”とは、一体どういうものなのだろうか? 奇をてらわなくても考え出せるヒントがある。それがズバリ、時代のニーズ、即応性だ。
その卑近な例が、世界を苦しめたコロナウィルスによる感染爆発である。あの頃、とりわけ“密”になりやすかったバラエティ番組はリモート出演が増え、スタジオはアクリルパネルで仕切られ、フェイスガードもするなど厳重な感染対策が施された。スタジオの局入りの際は“検温”もあったほどである。
そんな中にあってもテレビマンは知恵を凝らし、またそれが番組の名物になることもあった。例えば『バナナマンのせっかくグルメ!!』(TBS系)。これは各地の人々から「せっかくだったら〇〇を食べていって」と名物グルメを紹介してもらい、バナナマン日村勇紀が食べ歩く番組だ。
もともとは日村が直接、人に会っておススメのグルメを聞いていたが、コロナ対策の一環から、モニター付きの「日村ロボ」(といっても前の部分だけが日村のイラスト)に、地元の人が近づいて食べてもらいたいグルメを語り、別場所にいる日村と遠隔通話するという仕組みだった。
今まではカメラやタレントが人々に向かって直撃取材していたが、逆に一般人のほうからカメラに近づいてもらうシステムによってインタビューを可能にしたのだ。
現在は日村が再び街の人々に直撃して聞くようになったが、コロナ禍によって生まれた「日村ロボ」というギミックが番組を特徴づけ、知名度拡大に結び付いた一面はあるだろう。
同じように市井の人々の何気ない声を拾い集める『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』(日本テレビ系)でも、そんなコロナ禍を象徴する企画が復活していた。それが「マイクを握っちゃったらリポートしなきゃいけないの旅」だ。道端に置かれた金ピカの「笑コラマイク」を拾った一般人に遠隔で呼びかけ、その街のいいところを自らリポートしてもらうコーナー。もともとは2015年に誕生した企画だか、コロナ禍で復活していた。
2019年に生まれた人気特番『SILENT GAME 音が出たら負け』(日本テレビ系)。これは様々な音が鳴りやすい障害に対し少しでも音を鳴らしたら「負け(失格)」となるゲームバラエティである。今年8月19日、約3年半ぶりに新作が放送されたが、企画を通したテレビマンは、編成部から「コロナ禍じゃなかったら通ってない」と言われたと証言している。これも、「声を発しない」ことが求められた、あの時代だから生まれた企画であった。
いま、時代がどちらに向いているのか読むことも、企画誕生の端緒となるのである。
(執筆者: 田中周作)