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周囲を巻き込みながらもカンフー修⾏の道を突き進む。⾃分らしく⽣きるとは?悩みを抱え⽇々を⽣きる現代⼈を揺さぶる普遍的テーマを描いた本作は、世界の映画祭で絶賛と笑い&ショックを巻き起こしエストニアのアカデミー賞といわれるEstonian Film andTelevision Awards 2024 にて11 部⾨にノミネート、作品賞をはじめとする最多9 部⾨を受賞を果たした!さらに多くの映画祭で上映され賞を獲得しています。
若くして「映画の神童」と呼ばれ、“エストニアのギレルモ・デル・トロ”ともいうべき奇才、ライナル・サルネット監督に、作品へのこだわりなどお話を伺いました!
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――本作楽しく拝見させていただきました!奇想天外なお話ですが、まずどんなところから着想を得たのでしょうか?
友人が病気で入院していた時に「Not Of This World(この世のものではない)」という本を差し入れたんだ。そこにはロシアの僧侶の話が書かれていて、そのうちの1人がスピード狂いで30歳の若さで亡くなってしまったのですが、それを読んだ友人に「これをベースにした映画を作るべきだよ」と逆にアイデアをプレゼントされました。その彼はキャラクター名と同じラファエルさんという名前でした。
それでリサーチのために、ラファエルが過ごしたロシアのとある町の修道場に行ったのだけど、皆さんユーモアがすごいんですよ、人間的とても面白い。固くて閉鎖的なのかなというイメージがあったのですが全然違って、 冗談が大好きなんですね。そこで出会った長老的な存在の方に映画を作っても良いですか?と聞いたところ、一言二言だけで返されて最初は本心が見えなかったんです。でもその後「ハハハハ」と渋く笑って面白がってくださり安心しました。
――実在している人物をベースにしていたとは!驚きです。
実在の人物をベースにしていますが、もちろん映画のキャラクターはオリジナルっています。でもこのストーリーはファンタジーに思えるかもしれないけれど、実際に起こったことを描いているんです。ラファエル本人は映画の中で出てくるようなチープな車を乗り回すスピード狂だったようで、赤い車を黒色に塗って“モンク(僧侶)カー”と呼ばれていたそうです。とてもカリスマ性のあった人で、神についての説法などは何もせず車を修理していただけだったのに、若者にはすごく影響力のあった人だったようで、彼をきっかけに入信する人物も現れたほどだったそうです。
――全体的な映像のテイストもノスタルジックで魅力的でした。
70年代を舞台にしているから、その当時のポップアートのテイストを意識しています。映画はビジュアルから始まるので、思いついたアイデアを最後までキープする様に努めます。制作中にそのエネルギーを保ち続けるのっていうのが、結構至難な技でもあるんですよね。本作ではそのエネルギーを保つためにブラック・サバスの音楽に助けられました。脚本を書いていて、その1行1行ずつをビートの様に刻んでいく感覚です。説教くさい映画には絶対したくなかったのですが、どうしてもそこに傾きかけた時に、ブラック・サバスの音楽が、作りたかった映画に自分を戻してくれたのです。
――空を飛ぶカンフーもめちゃめちゃテンションが上がりました。
まさに「飛ぶこと」が大事でした。天使たちが無重力なように、僧侶たちにも可能なんです。宗教でもたくさんの奇蹟が語られますが、カンフーを通してもそれが表現ができるんです。この映画でのカンフーは会話のようなもので、肉弾戦のようなものとは違います。映画の最初に「神を賛美せよ、タンバリンと演舞で」という一文を入れていますが、ドラムとダンスで神を賛美しています。自身の内なるものと戦っているという観点から言えば、僧侶の心構えは戦士と同等とも言えますよね。だから、本作ではそのメタファーとして、僧侶をカンフー使いとして設定しているんだ。
【STORY】国境警備の任に就く⻘年ラファエルの前に、3 ⼈のカンフーの達⼈が現れる。⽪ジャンに⾝を包み、ラジカセでメタルを鳴らしながら宙を舞う彼らの前に警備隊は壊滅状態に。奇跡的⽣還を果たしたラファエルは、その⽇以降禁じられたカルチャーであるブラック・サバスの⾳楽やカンフーに熱狂するようになる。しかし⾒様⾒真似のカンフーでは気になった⼥性⼀⼈も射⽌めることができない。空回りの冴えない⽇々を送るラファエルは、ある時偶然通りかかった⼭奥の修道院で衝撃の出逢いを果たす。それは、⾒たことのないカンフーを扱う僧侶たち・・・即座に弟⼦⼊りを志願するラファエルなのだった!
(C) Homeless Bob Production / White Picture / Neda Film / Helsinki Filmi