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第77回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞において、女性監督として最年少受賞に輝いた山中瑶子が監督・脚本、河合優実主演の『ナミビアの砂漠』が大ヒット上映中です。
監督は19歳という若さで『あみこ』を作り上げ、史上最年少でのベルリン国際映画祭出品を果たした若き天才・山中瑶子。河合さんはその『あみこ』を観て衝撃を受け、監督に「いつか出演したいです」と直接伝えに行ったそう。
世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている、21歳のカナ。優しいけど退屈なホンダから自信家で刺激的なハヤシに乗り換えて、新しい生活を始めてみたが、次第にカナは自分自身に追い詰められていく。もがき、ぶつかり、彼女は自分の居場所を見つけることができるのだろうか・・・? 主演の河合優実さん、共演の金子大地さん、寛一郎さんにお話を伺いました。
――本作とても楽しく拝見させていただきました。皆さんのお芝居のぶつかり合いが最高に素晴らしかったです。皆さんは同世代の俳優さんでいらっしゃいますが、本作の撮影を通して刺激を受けた部分はありますか?
河合:これまで作品でご一緒した後も定期的に、対等に話せる様な同世代の方と共演することってあまり多くは無かった気がしていて。監督も同世代ということもあって、2人ともすごく色々な意見交換ができます。実は私は結構2人のことを観察しています。
金子:何だろう、どんな所見られているんだろう(笑)。
河合:長くなりそう(笑)。寛一郎さんは割とイメージ通りなのですが、すごく知性があって、謙虚ですし、自分自身の見つめ方とか、努力を怠らない人だろうなと思いました。金子さんは色々な面があって、おそらく皆さんが思ってる以上に、すごく面白い方なんです。
寛一郎:そうなんですよ。
河合:ひょうきんだし、みんなを笑わせることが好きなんだと思うんです。それがお芝居になった時に、役柄を通した金子さんなんだけど、ご自身の人柄が滲み出ていて、俳優として他の人にない味わい深さが出ているんだろうなと感じました。
金子:僕は、欲しがり屋なので今の時間すごく楽しかったです(笑)。河合さんと、寛一郎とこうして映画に出ることが出来て嬉しいし、頑張ろうって思いました。現場では、寛一郎とは同じシーンにはあまりいられなかったけれど、河合さんと2人のシーンでは河合さんにたくさん引っ張ってもらいました。「この作品をどうするか」ということをしっかり話し合える関係というか、こちらの意見を受け入れる体制をいつも作ってくださってありがたかったです。
寛一郎:刺激という言葉って自分にとっては抽象的で難しいのですが、2人は役者としても人としても尊敬出来る方です。今回金子君と一緒のシーンは無くて、河合さんとずっと2人だったのですが、ここまでの落ち着きと底の見えない凄みを感じました。目の奥にある炎みたいなアツさの中にクレバーさもあって、対面で喋っている時もそうですし、お芝居する時も安心感と共に怖さがあって、人にそういうことを感じることがあまり無かったので。今聞いてくださった「刺激」についての認識と合っているか分からないですが、そういう初めての体験はありました。
――皆さん素敵な回答をありがとうございます。山中監督が「金子大地さんは野生で、寛一郎さんは精密なお芝居をされる」といったことをおっしゃっていますが、河合さんはそんなお2人とお芝居をしてみていかがでしたか?
河合:山中さんが2人のことをそう評していることは撮影が終わった後に知ったので、そう見えていたんだと思いました。お芝居していた時を振り返ると、確かに同意出来る部分もあります。でも私が感じていたのはタイプは違うけど、お芝居に対してとか、作品に対しての姿勢がとても前向きで、もの作りに対して意欲的なところが共通しているなということなんです。
金子さんが野生的というのはちょっと分かる感じなのですが、寛一郎さんが精密なお芝居をされるという目線ではあまり見ていなかったです。毎回新鮮にお芝居させていただいてたので。でも確かに、金子さんとはその場で生まれたものをセッションしていく感じはありましたし、それに対して、おそらくすごく事前に色々なことを自分の中で準備して考えてきているであろう寛一郎さんと一緒にシーンを作ることの、スタンスの違いを感じていました。
金子:映画を観てくださる方は河合さんの吸引力、目の強さを感じると思うんです。そんな河合さんに対峙した時に、僕自身も相当なパワーを感じました。強すぎて持っていかれそうな感じというか。それがすごく楽しかったですね。カナとハヤシが言い争いをしているシーンで、お湯の入ったカップヌードルがテーブルの上に置いてあるのですが、「カナが何をするか分かんないけど、絶対何かしてくるんだろうな」って思うと思うんです。もう、二人の喧嘩話を聞いているより、そちらに意識がいっちゃうみたいな。
寛一郎:観客が「恐いな、あのカップヌードル」って感じるところで、スッとどかす。あれは多分脚本には書いてないだろうし、金子君の感性なんだろうなって映像を観て思いました。
河合:改稿前はこぼすという台本でしたしね。
金子:そうなんだ。
寛一郎:やっぱり脚本には無かったんですね。あのシーンを観て、僕には無い感性が素敵だなって。
金子:でも寛一郎のあんな“崩れ方”、俺には出来ないよ。
寛一郎:あの崩れ方は、スタッフさんによるレクチャーもあってのもので。助けられました。
――世界で評価されている本作ですが、皆さんが山中監督についてすごいなと感じた瞬間や出来事、セリフなどはありますか?
河合:感性がユニークで、そのユニークさは私たち、スタッフさんもふんわり共有しているけれど、突き詰めると山中さん独自の世界があるのだということも承知の上で映画作りをしている感覚でした。カナとハヤシが寝ながら「俺らならお互いを高め合えると思うんだよね」という会話をするシーンがありますが、引っ越したてだから段ボールがあって、「そこに2人の足を乗せてください」と言われたんです。その時に、助監督の平波さんが山中監督に「なんかしらやらないと気が済まないんですね〜」って、ぶっきらぼうな感じではなく言ったんです。その時にみんなの中で爆笑が起こったことがすごく印象的です。そのぐらい 1つ1つのシーン、行動に、カナがどういう人である、ハヤシがどういう人である、この2人はどういう空気であるということが、山中さん独自のやり方で詰まっていて。描写のチョイスの仕方が本当に鋭いんです。自分の感性に従って描写を選んでいるし、自由だし、軽やかだし、そういう所が素敵だなと思います。
――凄いですね、些細な行動の中にカナという人物が滲み出ているというか。河合さんは『あみこ』(2018)をご覧になって、山中監督にお会いになっていますよね。
河合:その時お会いしたのはすごく短い時間でしたし、映画についてもとても感動したのですが、私はまだ何も言語化出来ていなくて。でも、その時に『あみこ』を観て監督に会いにいった感覚が間違っていなかったんだなと、今回ご一緒出来て改めて思いました。
――素敵ですね。金子さんはいかがですか?
金子:いつも楽しそうにニコニコしながら映画を撮っている監督なので、本当に映画が好きなんだろうなあ、と思っていました。それでいて、底が知れない才能の恐さみたいな所もあって、そこは河合さんと似ているなと感じたんです。僕は欲しがり屋なんで、監督の「良い画撮れた!」という表情が見たいんですけれど、現場では楽しみつつも常に冷静に作品を見ている感じがして。どうやったら監督に刺さるんだろう?って考えながら演じていた時もありますけれど、最後まで分からなかったですね。
寛一郎:素晴らしいバランスですよね。どこかおかしいし、よく分からない所すごくまともだし。現場で、監督から突発的なアイデアが出てくることってありますけれど、難しい時もあります。でも、山中さんの思いつきはスッと入ってくるんです。映画のキャラクターたちが彼女の分身でもあるので、そのキャラクターたちがどんなことを言うのか、どんな行動を取るのかが見えているんですよね。金子君が言った様に、そこに対してどうアジャスト出来るかということを僕は結構考えてしまっていました。難しかったですけれど、とても楽しくてありがたい経験でした。
――今日は貴重なお話をありがとうございました!
撮影:たむらとも
『ナミビアの砂漠』大ヒット公開中!
脚本・監督:山中瑶子
出演:河合優実
金子大地 寛一郎
新谷ゆづみ 中島歩 唐田えりか
渋谷采郁 澁谷麻美 倉田萌衣 伊島空
堀部圭亮 渡辺真起子
製作:『ナミビアの砂漠』製作委員会
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2024『ナミビアの砂漠』製作委員会
公式サイト happinet-phantom.com/namibia