太宰治の没後75年を記念し、太宰治が戦争を描いた隠れた名作短編「未帰還の友に」を、 監督・福間雄三×主演・窪塚俊介がタッグを組み映画化。映画『未帰還の友に』が12月15日より公開中です。

永遠のベストセラー作家・太宰治の知られざる名作短編「未帰還の友に」は、戦争を背景にしながら、 その時代に生きた人々の生活を描かれているが、本作はこの短編小説もストーリーに、 当時の風俗として歴史に名を残している新宿ムーランルージュのエピソードを付け加えて、 映画としてのオリジナルな物語を作り上げています。

本作の主演を務めた窪塚俊介さんに作品への想いについてお話を伺いました。

――本作楽しく拝見させていただきました。戦争を描いた作品ではありますが、「師」について描かれた人間ドラマですよね。

ありがとうございます。僕が演じさせていただいた「先生」の話はもちろん、鶴田とマサ子という若者2人の話なんですよね。恋愛というか青春が描かれている。鶴田を演じた土師野隆之介さんが朴訥とした感じの好青年を演じられています。上映時間が75分にまとめられていて、グッと物語に惹き込まれる部分も良いなと思います。これが2時間あったらまた違うのかなと。

――上映時間というのも演出の一つだなと、私もよく感じております。窪塚さんの「先生」姿がとてもサマになっていらっしゃいますね。

着物を着ることはもともと好きなので、自然な佇まいになっていたら嬉しいです。一般的な太宰のイメージって、謎めいているというか、“死に取りつかれた男”みたいなところもありますよね。でも、普段からそんな感じだったのかというと、普通に笑って優しく話しかけてくれる、そんな姿だったのではないでしょうか。「先生」としてはちょっとした仕草の中にも、戦時中で物資が不足して、どこか閉塞感が漂っている。そういう時代の空気を身にまとうような芝居を心がけています。

――窪塚さんはもともと太宰治の作品は読まれていましたか?

元々好きでよく読んでいました。若い時って読書にあまり興味を持てない方も多いと思うのですが、僕もそうで、でも今は色々な本を読んで知識を得られることが本当に楽しいんですよね。太宰治の作品には名作がたくさんありますが、「未帰還の友に」も素晴らしい小説です。短いお話ですが、無料で読むことが出来るのでぜひ読んでいただきたいです。

――本作の「先生」を演じる上で一番心がけたことを教えてください。

この映画をやるとなれば、自分は太宰役を演じることになる。でもそうじゃなくて、原作どおり一人の「先生」という役柄でやらせていただけないかと監督とプロデューサーとかなり話し合いました。監督たちからの「太宰でやりたい」という意見も分かりますし、その方がインパクトがあることも分かる。でも僕としては原作から飛躍した「太宰役」には違和感を覚えたし、観る側からしても同じなのではないかと。あくまでフィクションを交えた短編小説ということで、先生役に着地することが出来ました。

――太宰役ということではなく「先生役」ということで、多くの人にとっての「師」に思いを馳せる作品になっているのでないかと私は感じました。

「未帰還の友に」というストーリーが大事なのか、太宰になることが大事なのかって言ったら、映像化するなら前者のほうだなと僕も感じていました。最終的には双方が納得した状態でクランクイン出来ましたし、一週間ほどの短い撮影でしたがとても楽しく参加させていただきました。

――生徒たちとのちょっとした会話や眼差しがあたたかい先生ですよね。

生徒たちがこれだけ慕っているとなると、かなり生徒との距離感が近いというか、親近感が持てる先生だと思います。それでいて先生であるという雰囲気はまとっている必要があるので、そこは現場で調整をしながら演じさせていただきました。分かりやすく「先生ってこうだよね」というのではなく、現場全体を含めた雰囲気作りが重要だったと思います。

――窪塚さんにとっての「師」とは?

大林宣彦監督です。大林監督の映画『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』(2007年)に出演させていただいてからずっと気にかけていただいて。大林監督は本当にまなざしがあたたかく優しい方ですし、作品にも表れていますよね。そんな素晴らしい方とご一緒出来たことは本当に幸せなことですし、これからも見守っていてもらえるように、芝居を頑張っていきたいです。

――今日は素敵なお話をありがとうございました!

撮影:オサダコウジ

『未帰還の友に』アップリンク吉祥寺ほか全国公開中

■ストーリー
小説家の先生(窪塚俊介)を慕う学生たち。先生は中でも、鶴田(土師野隆之介)に特別に友情を感じるようになる。そんな中鶴田は出征が
決まり、一時先生と酒を交わす時間が取れる。二人の常連の居酒屋の娘・マサ子(清水萠茄)は新宿ムーランルージュの舞台に立っていた
が、鶴田との恋は手紙のやりとりで続いていた。だが出征が決まった鶴田は苦しみながらも彼女との別れを決心し、先生にそのことを告げ
るのだった..。そして時代は戦争の泥沼の中で、多くの若者たちの犠牲を強いていく。

■窪塚俊介/土師野隆之介/八島諒 亮王 清水萌茄 蒼井染 君澤透/名倉右喬 橘レイア 水島裕子/萩原朔美
■監督::福間雄三
■企画:福寿祁久雄 ■製作:田中じゅうこう ■プロデューサー:櫻井陽一 ■協力プロデューサー:溝上潔
■原作:太宰治「未帰還の友に」(太宰治全集・筑摩書房刊) ■脚本:大隅充・福間雄三 ■音楽:原將人・山本無二
■撮影:根岸憲一(J.S.C) ■照明:佐藤仁 ■録音:岸川達也 ■美術:吉見邦弘・田中太賀志
■編集:小西智香 整音:吉田茂一 メイク:小堺なな ■製作:幻野映画事務所 制作協力:幻野プロダクション 配給:トラヴィス
 (C)GEN–YA FILMS 2023

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 太宰治の没後75年記念『未帰還の友に』窪塚俊介インタビュー「戦争を背景にしながら、若者二人の青春が描かれている」