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1985年に北条司が『週刊少年ジャンプ』にて連載を開始した『シティーハンター』。単行本の累計発行部数は5,000万部を超え、TVアニメシリーズから約20年ぶりの復活となった2019年公開の『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』は観客動員100万人を超える大ヒットを記録。そして、待望の劇場版アニメ最新作、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が大ヒット上映中!初週週末ランキングでは、動員・興行収入ともに1位の大ヒットスタートを切り、10月1日(日)までで動員599,902人、興行収入892,260,022円を記録しています(10月2日時点)。
劇場版『シティーハンター』ならではの大スケールで描いている本作。銃の所持や、装甲車に乗り高速でカーチェイスをするなど迫力満点のアクションが盛りだくさん。作品の中で主人公・冴羽獠は、プロ”の目からみてどれだけの<罪>を重ねてしまっているのか?! 警視庁の公式アカウントの中の人として4年間運用に携わっていた元「Twitter警部」甲さんこと、中村健児さんに”警察視点で観るシティーハンター”を聞いてみました!
【※こちらの記事では一部『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』のネタバレ箇所を含みます。結末には触れていませんがご注意ください※】
――劇中で、高速道路の中でアツいカーチェイスをするシーンがありますが、これはどの様な罪でどのくらいの重さになりますか…?
違法では無い部分が無いです。
――そうですよね…!(笑)
全部挙げたらキリが無いのですが、ぶつけ合っているのは交通事故なのでまずは警察に届けなくてはいけません。なので「当て逃げ」になり、そもそもぶつけ合っているので「安全運転義務違反」、おそらくかなりの高速なので「速度超過」。あと、シートベルトをしていないのも違反ですね。
――本作での冴羽獠の行動、最初から終わりまでいったい懲役何年級ですか?
まずは懲役で換算出来ない部分もあるんですね。死刑は懲役に換算出来ませんが、本作の中では殺人が何件か発生しています。有期懲役というのは20年以下と決まっていて、仮に死刑と無期懲役を30年として計算すると、諸々足していくと…大体懲役247年と罰金50万円くらいでしょうか。
――247年…!
でもこれは死刑を抜かして計算していますので、実際には人を何人も撃っていますから死刑になってしまうのが妥当だと思います。あくまでも法定刑という法律で決まっている刑期の長いものを単純に足しただけですから。
――言える範囲でそれぞれの罪と刑期をお聞きできますでしょうか。
まず、冒頭のキャッツ♡アイと共に侵入する部分が「建造物侵入罪」で懲役3年、銃を持っていますので「銃刀法違反」と「発砲罪」は当然のこと、「銃の過重所持」で懲役3年以上、「火薬類取締法違反」で懲役1年以下。それから殺人ですね、未遂の場合もあると思いますが罪は変わらないので死刑か無期懲役となってしまいます。
それから「もっこり」の部分ですね。女性に卑猥な言葉をかけたり、つきまとうということが「迷惑防止条例」に触れて、罰金50万円以下という計算をしています。これは1人にあたり罰金50万円以下です。
次はカーチェイスの部分、急カーブで人を振り落としているシーンは「明らかに命に危険が及ぶ」という行為の為、殺人未遂。あとは、コンテナにバズーカを発射しているシーン。発射するのは香ですが、獠が「援護してくれ」と言っているので、こちらも罪になります。「爆発物取締罰則」という明治時代からある法律があるのですが、非常に重い刑となります。
――罪のオンパレードですね…。
ちなみに、銃を所持して発射した場合、「銃刀法違反」、「発砲罪」、「銃の過重所持」、「火薬類取締法違反」といくつかの犯罪が発生していますが、この場合その中で一番重い量刑が適用されます。
あと、最後の最後、お墓参りのシーンでは「強要罪」が成立します。お墓参りに来た海原に対して、獠がジャケットに手をいれて「銃を出すような素振り」をしますよね。あれは害を加える旨を告知して脅迫するという行為ですので強要罪になるのです。
――あのシーンにも罪が発生しているとは驚きましたが、確かにおっしゃるとおりです。
何回も観ていけば、もっと細かい罪もあるだろうなと思います。
――映画の様に警察が外部に協力を求めたり、情報共有することはあるのでしょうか?
映画の様な関係は現実にはありませんが、法律の範囲内での協力はありますし、情報共有もあります。例えば弊社(中村さんが代表を務める「合同会社デジタル鑑識研究所」)が行なっている様な、警察が持っていない技術での協力はあると思います。警察が「コンプライアンス的に出来ないもの」を外部の人にお願いする、ということは難しいと思います。もしあったとしてもお話出来ません、と言う所でしょうか。
――ここまで“警察視点”からの『シティーハンター』についてお話いただきましたが、純粋に作品として、アニメーション映画としてはいかがでしたか?
私は『シティーハンター』をこれまで一切観たことが無かったのですが、事前知識が無くても楽しめるエンターテイメント作品で、面白かったです。特に印象に残っているシーンなのですが、海原が船の上からライフルで射撃をするシーン。あの距離で命中させるのはすごい腕だと思いました。通常の人間の能力では考えられない腕で、敵ながらあっぱれでした。
あと、アンジーの最期が凄かったですね。かなりシリアスな場面で「もっこり」と発する所は、『シティーハンター』以外の作品では出来ない演出だと思いますし、素晴らしかったです。レギュラーキャラクターだと海坊主に惹かれました。表に立って活躍するわけではないのですが、しっかり援護していて陰で活躍している。そういうキャラクター好きですね。
――警察をテーマに扱った映画で、中村さんが「これはリアル」と思ったものがあれば教えてください。
身も蓋もない回答になってしまうのですが、警察ものって観ないんですね。私が警察にいた時は、自分の生活が一番のドラマでしたので観ようと思いませんでした。拒絶はしていないんですけどね。
――警察にいられた中村さんだからこそのリアルなご回答だと思います。最後に、ズバリ。「始末屋<スイーパー>」という職業は実在しますか?!
「あるとも無いとも言い切れない」と言っておきます。
――今日は本当に貴重なお話の数々をありがとうございました!
【中村健児さんプロフィール】
合同会社デジタル鑑識研究所 https://dflabo.co.jp/ 代表。高校卒業と同時に警視庁に入庁し、在職中、中央大学法学部通信教育課程に入学し、4年半で卒業。27歳の最年少で警部補に昇任。要人警護(SP)、経済事犯捜査、サイバー犯罪捜査を担当するほか、警視庁初のTwitterアカウントを開設・運営。「中の人」の趣味趣向を出したゆるい投稿が注目され人気を集め「Twitter警部」と呼ばれる。警視庁退職後は、自身のサイバー犯罪捜査の経験を活かしたデジタル鑑識を請け負う事業で起業。
『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』大ヒット上映中!
■キャスト
冴羽 リョウ:神谷 明 槇村 香:伊倉一恵
槇村秀幸:田中秀幸 野上冴子:一龍斎春水 海坊主:玄田哲章 美樹:小山茉美
来生 瞳:戸田恵子 来生 泪:深見梨加 来生 愛:坂本千夏
ピラルクー:関 智一 エスパーダ:木村 昴
アンジー:沢城みゆき 海原神:堀内賢雄
■スタッフ
原作:北条 司
総監督:こだま兼嗣 監督:竹内一義 脚本:むとうやすゆき キャラクターデザイン:高橋久美子 北澤精吾
美術:谷口淳一 色彩設計:久力志保 CG監督:五島卓二 撮影監督:齋藤真次 編集:今井大介
音楽:岩崎 琢 音響監督:長崎行男 音響制作:AUDIO PLANNING U
制作:サンライズ アンサー・スタジオ 配給:アニプレックス
主題歌アーティスト:TM NETWORK
オープニングテーマ「Whatever Comes」
エンディングテーマ「Get Wild」
https://cityhunter-movie.com / Twitter:@cityhuntermovie
(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会