宮藤官九郎さんが、企画・監督・脚本を務めるディズニープラス独占配信ドラマ『季節のない街』が全10話配信中です。

本作は、宮藤監督が長年温めてきた企画で、山本周五郎さんの小説「季節のない街」の映像化。黒澤明監督によって『どですかでん』のタイトルで映画化され、1970年に公開されたことでも知られる不朽の名作です。この傑作小説をベースに、本作では、舞台となる「街」を、12年前に起きた“ナニ”の災害を経て、建てられた仮設住宅のある「街」へ置き換え、現代の物語として再構築している。希望を失いこの「街」にやってきた主人公が、「街」の住人たちの姿に希望をみつけ、人生を再生していく青春群像エンターテイメントとなっています。

この『季節のない街』の世界観を、切り絵アーティスト河野耕平さんが表現!小さな紙にギュッと濃縮された美しい世界観について、河野さんご本人にお話を伺いました。

――今回河野さんは『季節のない街』をテーマにした作品を作ってくださいましたが、ドラマをご覧になっていかがでしたか?

コメディな演出に笑っていたのですが、シリアスなシーンもあり、沈んでしまう時もあったのですが、その後すぐにカラッと笑わせてくれて。一話の中で色々な感情を揺さぶられました。宮藤監督の作品はどれもキャラクターへの目線があたたかいと感じていて、本作でも、とてもあたたかい気持ちになりました。

映画やドラマをテーマにした作品を作ることがはじめてだったのですが、宮藤官九郎監督の作品が大好きで、『あまちゃん』もすごく好きなのでお話をいただけて嬉しかったです。

――河野さんには「街へゆく電車」と「プールのある家」という2つの作品を作っていただきました。とても素敵ですね。

作品を観て、物語がつながっていく様な切り絵にしたいなと思いました。キャラクターのシルエットと、線で描いた電車や家で構成されているのですが、線の部分は「実際には存在しないけど、キャラクターには見えている世界」を表現しています。「街へゆく電車」だったら、六ちゃんとトラは存在するのでシルエットですが、「六ちゃんに見えている電車と線路は線」で。その表現が作れる2つのシーンを選んでみました。
いつもインスタグラムにアップしている作品はシルエットのものが多いのですが、今回はイラストっぽいイメージで作っていて、僕の中でも新しいチャレンジでした。

▲「街を行く電車」

▲「プールのある家」

――どちらも繊細なのに動き出しそうな躍動感もありますね。

六ちゃんの電車は最初は平行に描こうと思っていたのですが、斜めに立体的に見せる方が走っている感じが伝わるかなと考えました。立体的に見せるというのは難しいので、そこは苦労しました。

――「プールのある家」の水面の表現も好きです。

ありがとうございます。水面に映る影も、ホームレスの親子はシルエットになっていますが、親子が思い描いている家は、線になっています。 そういったこだわりも注目していただけたら嬉しいです。

――制作期間はどのくらいかかったのですか?

アイデアを考えるまでに一週間ほどかかったと思うのですが、制作自体は1作品あたり1日くらいです。

――河野さんの過去のインタビューを読ませていただいたのですが(https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2305/31/news163.html)、フリーハンドで作られているのですよね。

いつもこのハサミを使って(※実際に見せていただきました!)、切る紙には下絵をかかずにフリーハンドで切っていきます。これまでは着手したら一気に完成させるという感じで、徹夜をしてしまうことも多かったのですが、今は目を休めるためにも休みながら進めています。いったん手を止めることで制作状況を客観的に見ることも出来るのも良かったなと思っています。

――切り絵自体もとても素敵ですが、空と一緒に撮影した写真がとても綺麗ですね!

ありがとうございます! マジックアワーと呼ばれている夕方や早朝の空を選んで撮影しています。色がとても綺麗で、ドラマティックでストーリー性のある写真が撮れるので。このシリーズをはじめて6年目ほどになるのですが、「この時間は良い空が撮れる」というのがだんだん分かる様になってきて、以前より天気に敏感になった気がします。

――先ほど宮藤監督作品がお好きだとおっしゃっていましたが、これまでの作品でどういった作品をもをご覧になっていますか?好きな作品を教えてください。

ドラマ『流星の絆』(2008)が、たぶん初めて観た宮藤監督作品だと思います。このドラマも『季節のない街』の様に、シリアスな部分とコメディ要素が入り乱れていて、初めてそういったスタイルのドラマを観たので、衝撃的でしたしすごく引き込まれました。あとは『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019)や『監獄のお姫さま』(2017)もすごく好きです。全て観れているわけではないのですが、宮藤監督の作品は人間描写がとても細かくて、「あるある」となったり、共感出来る部分も多くて素晴らしいなと思って観ています。『季節のない街』は、これまで僕が観てきた宮藤監督作品の中で一番シリアスなお話だと感じましたが、全てのキャラクターへの愛がつまっていて、とてもあたたかい気持ちになりました。

――私も本当にそう思います。素敵な感想やお話、そして素晴らしい切り絵をありがとうございます。最後に今後やってみたいことや挑戦したいことを教えてください。

シルエットのシリーズは作りたいものがもっともっとたくさんあるので、時間をかけて全部作りたいなと思っています。後、僕は音楽もやっているので、将来的には切り絵と音楽を掛け合わせたアートを作りたいなと思っています。今は個展をやらせていただく時にBGMでかけたりはしているのですが、もっと新しい形で音楽と切り絵の融合が出来ないかなと模索中です。

――これからの作品も、新しい試みもとても楽しみにしております。今日はありがとうございました!

『季節のない街』
原作:山本周五郎「季節のない街」
企画・監督・脚本:宮藤官九郎
出演:池松壮亮、仲野太賀、渡辺大知/三浦透子、濱田岳/増子直純、荒川良々、MEGUMI、高橋メアリージュン、又吉直樹、前田敦子、塚地武雅、
YOUNG DAIS、大沢一菜、奥野瑛太、佐津川愛美/坂井真紀、片桐はいり、広岡由里子、LiLiCo、藤井隆、鶴見辰吾、ベンガル、岩松了
監督:横浜聡子、渡辺直樹 音楽:大友良英 撮影:近藤龍人 美術:三ツ松けいこ
照明:尾下栄治 編集:宮島竜治、山田佑介 録音:山本タカアキ 衣裳:伊賀大介、立花文乃 ヘアメイク:寺沢ルミ
■配信:ディズニープラス「スター」で全 10 話独占配信中

【ストーリー】”ナニ”から12年―― この街には、”ナニ”で被災した人々が身を寄せる仮設住宅があった。
今もまだ、18世帯ものワケあり住人が暮らしていたが、月収12万超えると「即立退き」とあって、皆ギリギリの生活を送っていた。主人公の田中新助こと半助は、街で見たもの、聞いた話を報告するだけで「最大一万円!」もらえると軽い気持ちで、この街に潜入する。だが、半助こそ ”ナニ”によって何もかも失い、ただ生きているだけの男だった。しかし、ギリギリの生活の中で、逞しく生きるワケあり住人らを観察するうち半助は次第に、この街の住人たちを好きになっていく。そんな中、仮設住宅が取り壊されるという噂が街に流れはじめるのだが……。

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 「キャラクターへの目線がとてもあたたかい」ドラマ『季節のない街』の世界観を切り絵アーティスト・河野耕平さんが表現!