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Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」が全世界独占配信中です。「舞妓さんちのまかないさん」は、第65回小学館漫画賞を受賞し、累計発行部数270万部を超える、小山愛子による大人気コミックが原作。そんな大人気原作を全9話のNetflixシリーズとして、是枝裕和が総合演出を務めドラマ化が実現。各エピソード監督・脚本を、是枝裕和の他に、津野愛 (『十年 Ten Years Japan』)、奥山大史(『僕はイエス様が嫌い』)、佐藤快磨(『泣く子はいねぇが』)の次 世代を担う注目監督が担当しています。
本作の総合演出を務めた是枝裕和監督、「まかないさん」のキヨを演じた森七菜さん、舞妓のすみれを演じた出口夏希さんにお話を伺いました。素敵なお着物姿にもご注目です。
【ストーリー】祇園の舞妓さんになることを夢見て、親友のすみれと共に故郷の青森を離れ、京都へやってきたキヨ。舞妓さんたちが共同で生活する屋形に住み込み、鼓や舞などの稽古に励んでいたキヨだが、舞妓 には向いていないから青森に帰るように、と言われてしまう。気落ちするキヨだが、ある日、みんな のために作った親子丼が評判に。毎日のごはんを用意する「まかないさん」として、屋形で働くことになる。一方、すみれは京舞の才能を発揮し、「100年に一人の逸材」として、由緒ある祇園の花街 で名を馳せていく。 祇園を舞台に、「まかないさん」と「舞妓」の美味しく、美しい日々が始まる。
――先ほど、とても和やかな雰囲気で写真撮影をさせていただきました。撮影現場も楽しそうだなと想像してしまいます。
森:私と(出口)夏希ちゃんはずっと喋っていて、それを監督が温かく見守ってくれるという感じでした。最初の頃は、私たちどちらも人見知りなので、本読みの時もお互い無言で。どう喋りかけていいか分からない、でも気になる…みたいな。
出口:喋れないけどお互いチラチラ意識して見ている…みたいな(笑)。撮影に入ってからすぐ、七菜ちゃんが連絡先を聞いてくれたりして。そこから少しずつ距離が縮まったと思います。
森:頑張りました!
出口:ご飯も食べに行ったりもしました。。私はつい、「誘ってもいいのかな?」とか、気にしちゃうタイプなのですが、七菜ちゃんには声をかけやすくて。
森:もっと誘っていいんですよ?
出口:誘います!(笑)
――監督はお2人を見守っていたということですが、最初から空気感は出来上がっている感じだったのでしょうか?
是枝:キャスティングを決める際に、オーディションという形で、色々組み合わせを考えながら2人のお芝居を見ていて、「噛み合うな」という感じがしました。あとは現場に入って、2人がどういうふうにキヨとすみれになってくのかな、と僕は見ているだけ。いつも細かく指示をするわけではないので、ただ、キヨやすみれを見ながら「あ、ここでこういう表情をするんだな」とか、「ここでは泣かないよな。そうだよな」みたいな、そういう発見をしながら、僕の中でも人物作りを一緒にやっていく感じでした。そういう作業が1話の段階で、2人と出来たので、このまま行けば大丈夫なんじゃないかなって感覚を持ちました。
――お2人は、監督の演出で印象的だったことはありますか?
森:私はキヨを演じることに特別に不安を感じていました。それはオーディションの時から始まっていて、最初の本読みの後は泣きながら帰ったんです(笑)。それで監督を不安にさせたのかわからないですけど、2回目の終わりに「泣かないで。大丈夫だから」と声をかけてくださって。撮影に入った後も、「私が大丈夫ですかね?」と聞いたら、私のいいところをたくさん見つけてくれて、それを伝えてくださるので。助けられました。
「余裕が無い」ことが、キヨにとって一番損なことだと思っていました。ご飯を作って、自分が食べる前に誰かに出す。誰かの喜んでいる顔を一番に考えている、キヨとしての余裕を是枝さんに与えてもらったから、すごく感謝しています。なかなか、こんなに直接褒めてもらうことって無いので、しみました(笑)。
是枝:そんなそんな(笑)。
――「誰かの喜んでいる顔を一番に考えている、キヨ」というのは本当におっしゃるとおりで、そこが魅力的ですよね。
森:原作漫画やアニメが人気で、そこに自分がとらわれすぎているという感覚もありました。舞妓さんたちの美しさとは、また違うところでの美しさを自分で見つけなきゃという部分もあって、孤独だったのもあるし、難しかったです。
是枝:難しい役なんだよ、キヨって。どういう生い立ちで、両親がなぜいないのかみたいな原作に描かれてない部分が多すぎて。原作者の小山先生もあえて描いていないところがあるから。普段考える役作りという意味で言うと、根っこの部分がないままやる作業になるんですよね。でも、ちゃんとあそこで生きているように演じなければいけないし、っていうのは最初難しかったと思う。
――出口さんは撮影の印象はいかがですか?
出口:完成した作品を観て自分が「すっごく大きく笑えているな」と思ったんです。普段は「現場でこれやったら違うと思われるかも。だから、やめとこう」と自分で止めてしまうこともあるのですが、こんなに自然に笑えたことは、是枝監督をはじめ、それぞれ演出してくださった監督方のおかげだなって振り返って感じます。
是枝:ああいう笑顔って狙って撮れるものでもないんですよね。(出口さん)本人が持っている、明るさみたいなものがあるからさ、それをちゃんと撮らないとっていう意識は持っていました。出口さんは1話と9話で確実に変わっていて、すみれが成長するのと同じように、出口さんのお芝居も変わっていますよね。そこはとても貴重だなと思います。キヨとの関係の中でとか、森さんとの掛け合いの中で、お芝居のヒントや発見があったんだろうなという気がしています。僕は一旦途中で現場を離れたんだけど、5話の、すみれが舞妓さんになることが決まって、2人で唐揚げを食べている感じがとても良くて、「ここまで変わるか」というのは正直思いました。2人がずっと一緒に生きてきた感じが、台所のシーンだけで出ていて、もう安心しました。これなら大丈夫だなと思って。
本当にただ仲のいいだけではなくて、その間にはやっぱり複雑な感情もあるし。すみれがお母さんに、キヨを青森に返さないようにお願いしようと部屋を飛び出そうとするのを、キヨが「すーちゃん」と声をかけるシーンがあるけれど、その中には、ある種のなんだろうね、“たしなめ”みたいなものもあるんだよね、気持ちとして。そういうのが、「すごいな。こうやって台本の解釈をしてくるんだ森さんは」と思いました。それが出口さんのお芝居には反映されていくし、すごくいい2人の関係でした。今自分のキャスティングを褒めています(笑)。
森・出口:(笑)。
是枝:この2人をこのタイミングで会わせた自分を褒めています。そこで僕の仕事は終わっていると思います(笑)。そのくらいお芝居の相性が良かった。
――素敵なお話をありがとうございます。作品を拝見して、本当にご飯が美味しそうでした。飯テロというか、夜に見たら大変だなっていう作品だと思います。皆さんは撮影が終わった後に実際に食べたりしていたのですか?
是枝:僕と森さんが一番食べたと思います。
出口:あれ、2人がいないな?と思ったら、だいたい裏で、飯島さんのところにいました(笑)。※フードーコーディネーターの飯島奈美さん。
是枝:僕が行くと、だいたい森さんがいて(笑)。
――全部美味しいと思うんですけど、何が一番印象に残ってらっしゃいますか?
森:いつもおにぎりって答えるんですけど、今食べたいのはうどんです!
出口:あー、美味しかった!
森:シンプルなうどんで色鉛筆で書いたら3色ぐらいで描けるじゃないですか。なのに、なんでこんなに美味しいの? って。素材の味がすごく良いし、でも複雑な味わいもあって。多分これ食べた人にしか伝わらない美味しさなんですけど。
――羨ましいです!
森:うどんは、キヨとすーちゃんのストーリーの中で、すごく大事な役割を果たすので、そういう思い出も含めて、すごく美味しかったなと思います。
出口:私は一番は親子丼なんですけど、お正月の時に、飯島さんのおしるこ(なべっこだんご)とお雑煮を思い出しました。私は中国出身なので、お正月におしることお雑煮を食べることも知らなくて。すごく美味しかったです。私もチャレンジしようと思ったまま、お正月が終わってしまいました(笑)。
是枝:本当、全部うまいからなあ。でも、ナスの煮びたしというシンプルな料理が美味しかったですね。
――本当にご飯の一つ一つも登場人物というか、作品の重要な要素になっていますよね。
是枝:本当にそうですね。キヨは自分からそんなに何かを語るわけではないけれど、やっぱり料理を作ることで料理を通して、食べている人の感情が見えてくるという。料理が鏡のような存在だったし、そこが面白かったです。食事を通して気持ちが見えてくるっていうプロセスで、それが物語の柱になっているので、本当に飯島さんに感謝をしております。
――レシピ本が欲しいです…!
森・出口:本当に欲しいです(笑)!
――今日は素敵なお話を本当にありがとうございました。
撮影:朝岡英輔
Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」
森七菜 出口夏希
蒔田彩珠 城桧吏 福地桃子 若柳琴子 南琴奈
リリー・フランキー 北村有起哉 尾美としのり 古舘寛治 戸田恵子 白石加代子 / 松坂慶子
橋本愛 松岡茉優 井浦新 常盤貴子
原作:小山愛子「舞妓さんちのまかないさん」(小学館「週刊少年サンデー」連載)
総合演出:是枝裕和
企画:川村元気
監督:是枝裕和 津野愛 奥山大史 佐藤快磨
脚本:是枝裕和 砂田麻美 津野愛 奥山大史 佐藤快磨
エグゼクティブ・プロデューサー:古澤佳寛 佐藤菜穂美
プロデューサー:山田兼司 鹿嶋愛 北原栄治
撮影:近藤龍人