2018年、監督もキャストも当時はまだ無名にもかかわらず、熱狂的な口コミが日本列島を駆け巡り、観客動員数 220 万人・興行収入 31 億円を突破し、社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』。海外でも大ブームとなった 『カメ止め!』を、第 84 回アカデミー賞で作品賞をはじめ全 5 部門を制した『アーティスト』のミシェル・アザナヴィ シウス監督がリメイクした『キャメラを止めるな!』が 7 月 15 日(金)に全国公開されます。

今回、ガジェット通信にて、ミシェル・アザナヴィシウス監督と、『カメラを止めるな!』を手がけた上田慎一郎監督の対談が実現! 映画愛あふれるお2人にお話を伺いました。

ミシェル・アザナヴィシウス監督

上田慎一郎監督

『キャメ止め!』のおかげで、客観的に『カメ止め!』を味わえた

――まずは上田監督にお聞きします。『キャメラを止めるな!』をご覧になって、率直にいかがでしたか?

上田監督:いやあ、感動しました!というのも、はじめて『カメラを止めるな!』と観た気がしたんです。自分は監督をしているので、どうしても客観的に観れていなかったんでしょうね。なので『キャメラを止めるな!』で、はじめて観客として『カメ止め!』を楽しむ事が出来ました。

――監督されている自分の作品だとそうですよね。『キャメラを止めるな!』で上田監督が面白さを感じた部分を教えてください。

上田監督:日本人とフランス人の国民性の違いがすごく出ているなと思いました。日本人って思っていてもあまり口に出さない部分があるじゃないですか。でもフランスの方は思った事をバンバン言って議論になったりする。そういう部分の違いも面白かったです。

ミシェル監督:まさに上田監督がおっしゃったとおりで、僕は『カメラを止めるな!』を観た時に、家族の親密な瞬間が流れそうになったのに、そこでカットされているシーンが印象的だった。以前来日したなどに感じた経験などもあって、日本の方は自分で思ったことをすぐ口にしないのかな?とそのシーンについては感じたんだ。僕が今回『キャメラを止めるな!』を作らせてもらう時には、フランス人としてなのか、僕がそうだからなのか、もっと会話を突き詰めようと思った。

――同じストーリーであってもそういった文化の違い、描写の違いが出るというのは本当に面白いですね。

ミシェル監督:もちろん全員の日本人が控えめで、全員のフランス人が意見を言うタイプというわけではなくて人それぞれだから、一概には言えないのだけどね。上田監督が会話シーンでカットした部分を、僕はもっと掘り下げようと思った。それぞれの描き方があるのが映画の面白さなのだと思う。

上田監督の感動ポイント「カメ止めで出来なかったことが…」

――上田監督が『キャメラを止めるな!』で好きなシーンを教えてください。

上田監督:音楽担当のファティがすごく好きです。実は、『カメラを止めるな!』では「ワンカットシーンの音楽をどうしよう」という課題がありました。考えた結果、「舞台裏で音楽担当が操作している」設定ではなく、「(創り手の)僕たちがつけた音楽」という考え方にしました。最初は「舞台裏で音楽や効果音を操作している」という事をしたかったのですが、予算や時間の関係で叶わず。それを『キャメラを止めるな!』でやってくれていて嬉しかったです。

ミシェル監督:すごく嬉しいです、ありがとうございます! 映画作り、もの作りをテーマにしている映画なので、作品作りをしていく過程で音楽担当者のキャラクターを入れたら良いアディション(追加された人)になるのではないかと思ったんです。映画作りがうまくいかなくて、色々な出来事に翻弄される中、このファティというキャラクターはユーモアを担当している。彼はコンピューターを扱っているので、その場を離れることが出来ない、何も出来ない。それは、まさに『カメ止め!』『キャメ止め!』を観ている観客と同じ視点だと思うんですよね。たくさんのトラブルが起こっているのに何も出来ない状況、その状況が面白いなと思いました。なので、上田監督が気に入ってくれてすごく嬉しいです。

上田監督:こちらこそありがとうございます! あと、小さな役ではあるのですが、血のりを吹きだすスタッフのクローズアップがしっかりあって。そういうカットに、映画愛をすごく感じました。

ミシェル監督:ありがとうございます。でも、それはそのまま僕が『カメ止め!』を観た時に感じたことなんですよね。上田監督はあの映画を作った当事者であるので気付かれていないのかもしれませんが、とてつもない映画愛を感じました。みんなが一人一人力を合わせればすごいものを作ることが出来る。映画作りに限らないけれど、そういったスタッフ一人一人の力が大切だと思っているから、メイクさんのアップを入れたりしているのかもしれない。

ミシェル監督がリメイクでこだわりたかった要素

――その他、リメイクするにあたってミシェル監督が改めて『カメ止め!』で素晴らしいなと感じた部分があれば教えてください。

ミシェル監督:これは『カメ止め!』を観て、これはリメイク版にも絶対に入れたいと思った部分なのですが、観客の反応というのがキーになってくると思ったんですね。映画の“第一章”を観た時に「この映画の出来、どうなの?!」とみんなが思うわけですよね。映画を批判的な目で見ている。それが“第二章”になると全部覆される。批判した自分に対して、おいおい!と思う(笑)。そういった経験を観客にしてもらえるというのは、素晴らしいと思った。なので、リメイク版でもその部分は意識しています。

あと、最後の人間ピラミッドは、個であるよりも力を合わせた方が強いのだということを体現している。僕はそこにすごく感動したんだよね! だから僕は上田監督の人間の描き方って素晴らしいと思うんだ。

上田監督:僕も『キャメ止め!』の人間ピラミッドシーンはすごく感動しました。キャストのみんなが協力して撮影をやりとげたという“体温”が伝わってきました。それが嬉しかったです。あれは撮影の最後の方に撮ったのかな?と。

ミシェル監督:一番最後ではないのだけど、スケジュールの最後ではあったよ。僕はもちろんスタッフも『カメ止め!』に対するリスペクトがあるから、そういった想いが体温になって伝わったのかもしれないよね。

僕からも質問です。今回の映画作りで、「ワンカットシーンにジョークを入れない」という所がチャレンジの一つだったんですね。劇中劇の監督はシリアスな映画を撮っているわけだから、あくまでも真剣に“B級”な映画になっていくことが必要だと。やはりそういったこだわりがあったのでしょうか?

上田監督:ワンカット内に笑いを入れることは最初から考えていませんでした。でもおっしゃるとおり、劇中劇のクオリティのさじ加減はすごく考えていました。「何だかおかしいな」「何だか下手だな」という違和感を残しつつも、ギリギリ観れてしまうという塩梅にするべく慎重にやりましたね。

ミシェル監督:なるほど。『キャメ止め!』の場合は『カメ止め!』と違って、キャストがもう知られている役者たちなので、「このキャストなのに、こんな内容なの?」と思われてしまう部分をどう調整していくか、(もう少しギャグを入れたほうがいいのかな…?)とうい誘惑があったんですよね。

上田監督:最初のワンカットシーンも、『カメ止め!』よりはギャグというかユーモアが増えていますよね。僕はそこがすごく良かったと思います。

――私から一つお聞きしたかったのが、ゾンビになってしまうキャラクターの顔色が、とんでもなく青いですよね(笑)。

ミシェル監督:劇中劇の監督がどういう意図を持って自分の映画を作っているのか。それがうまくいかないという設定であるわけだけど、監督は劇中劇でのゾンビはグリーン、その後のゾンビはブルーと使い分けている。この色にしたのは…ちょっとポップかな?と思ったんですよね(笑)。笑いをねらったというよりは、ポップで印象的になるかなと思ったんだ。

『カメ止め!』の“現場あるある”がフランスで通じる面白さ

上田監督:僕からすると、フランスは芸術や文化を担う創作に対して尊重ある国だと感じられるんです。でも、『キャメ止め!』も『カメ止め!』と同じく、適当なプロデューサーがいたり、「観客は映画の良さなんて分からないよ」といったセリフが出てきます。そういう事がフランスでもあるんですね?

ミシェル監督:もちろんいます!(笑)日本で上映されるフランス映画というものは、やはり質の良いものばかりなのだと思う。実際国内では、あまり質を気にせずに色々な事情から作られた映画や、お金さえ稼げれば良くない映画でもいいんだというプロデューサーもいます。

上田監督:なるほど、実際にいるんですね。すごく印象的だったのが、レミーが「フランスの観客は日本の観客よりも質が低い」といったことを言っていて、日本人の僕からすると、フランスの観客の方がリテラシーが高そうと思うんですよね。お互いの国への印象の違いみたいなものがあって、面白いなと思いました。

ミシェル監督:人間って常にそういうものなのかなって思いますよね。パリに日本からいらした方がたくさん写真を撮っていて、僕らからすると「何であんな建物の写真を撮るんだろう?」って思うけど、逆に東京にフランス人が行くと全てに驚嘆してしまう。みんな同じで、自国に満足しない部分ってあるよね。『キャメ止め!』の中の監督は、マダム・マツダとレミーをとにかく満足させたいという気持ちでいっぱいなんだと思います。彼女が劇中劇においての権威なのだから。

上田監督:忠実、同じ場面だからこそ浮かびあがってくる国民性の違いが本当に面白かったです。改めて、本当に素敵なリメイクをありがとうございます。作り手の皆さんが、心から楽しんでいるのが映画から伝わってきました。日本のプレス資料でミシェル監督がアロハシャツを着て現場にいる写真を見ました。僕も現場で、日暮(『カメラを止めるな!』劇中劇の監督)と共にアロハを着ていたんですよ。その事を思い出して感動しました!

ミシェル監督:気付いてくれてありがとう! 本当に『カメ止め!』が大好きだったので、こうしてリメイクをさせてもらえて感謝の気持ちでいっぱいです。いまだに「8日間でどうやってあの映画を作ったんだろう?奇跡だ!」と思っているんですね。

上田監督:こちらこそありがとうございました。いつかお会い出来ることを楽しみにしています!

ミシェル:me too!

――お2人とも、今日は本当に素敵なお話をありがとうございました!

『キャメラを止めるな!』7月15日より全国公開

(C)2021 –GETAWAY FILMS –LA CLASSE AMERICAINE –SK GLOBAL ENTERTAINMENT –FRANCE 2 CINÉMA –GAGA CORPORATION

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 『キャメラを止めるな!』ミシェル監督&『カメラを止めるな!』上田監督スペシャル対談「同じ場面だからこそ浮かびあがってくる国民性の違いが面白い」