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表の顔は、高貴なる英国紳士。裏の顔は、世界最強のスパイ組織“キングスマン”。スタイリッシュな英国紳士が、ド派手で超過激なスパイアクションを繰り広げる大人気シリーズ、「キングスマン」(2015)、「キングスマン:ゴールデン・サークル」(2018)。その全世界待望の最新作『キングスマン:ファースト・エージェント』が、来たる12月24日(金)クリスマスイブに日本公開となります。
舞台は1914年――世界中を混乱に陥れるべく、“闇の狂団”が密かに暗躍をしていた。この狂団の影響で今まさに世界が混迷を極めようとしている中、キングスマンの最初の任務が、この“世界大戦を止める”こと!人類破滅へのタイムリミットが迫る中、果たして彼らはこの世界大戦を止めることができるのか!?
オックスフォード公の日本版声優を小澤征悦さん、コンラッド役を梶裕貴さんが務める本作。作品の見どころや、お互いの仕事論についてもお話を伺いました。
――――小澤さんはオックスフォード公、梶さんはコンラッドとそれぞれ演じられています。お互いの初対面の印象と、その後の印象に変化があれば、お聞かせください。
小澤:僕は今回吹き替えを初めて担当しました。オーディションを受けて選んでいただいたので嬉しかったです。本作の収録をしている時に(梶さんとは)何度かお会いできるチャンスはあったのですが、コロナ禍の状況だったのでなかなかお会いできず。僕としては、「進撃の巨人」のエレンを、ずっと見ていたので、会えるなんて、すごく嬉しくて。で、お話ししたら繊細でいて、深く物事を考える方だなというのがよく分かりました。声優さんとしても俳優さんとしてもやられていますし、成功されるということは、こういうことなんだなと。…これくらい言っておけばいい(笑)?
梶:はい、ありがとうございます(笑)。小澤さんは俳優さんとしてはもちろん、バラエティでトークされている姿も拝見していて。頭の回転が早く、トークが面白くて整理されているなという印象があったのですが、まさにその通りでした。今日も現場を明るく盛り上げてくださっていますし、こうしてインタビューでお話されている内容を伺っていても「なるほど、たしかに!」というポイントを的確に挙げられていますし。
――今回、親子役というところで、注目してほしいポイントはありますか?
小澤:オックスフォード公は、息子・コンラッドに対してあんまり愛情表現が上手い方ではないと思うんです。もちろん息子に危険なことはして欲しくない。かといって、息子の気持ちも大事にしたい。だから傷つけないように息子を説得したいんだけど、言葉数が少ないがゆえに、うまく伝わらない。それが息子にとっては、ちょっとウザかったり(笑)。っていう、すごく人間臭い関係が今作では非常に描かれているんですね。しかも、それがとても紳士的に。お互いプライドもありながら、駆け引きされていくので、そこは、すごく見所だと思いますね。
梶:今おっしゃった通りで、受け取り手の年齢によって観え方の変わる作品なのかなと感じています。気持ちを投影する登場人物によって大きく印象が変わるかと。僕自身、父親に対してコンプレックスとはまた違うんですけれど、独特の感情がありましたし。憧れでもあるし、負けたくない存在でもある。変に意地を張ってしまう相手だったんですよね。なので、父になんと言われようとも、自分の中の正義を貫こうとするコンラッドの気持ちは理解できる部分がありましたね。同時に、今は自分も大人になり、親側の気持ち、オックスフォード公の愛情も十分想像ができます。僕は戦争を身近に…肌感覚として経験しているわけではないですが、その状況下での親子の繋がりというものは、これほど試されてしまうものなんだなと痛いほど感じました。意図せずぶつかってしまったり、引き裂かれてしまったり。悲しいことです。
――小澤さんには吹き替えのお仕事を通して、ご自身の実写の演技に活かされたことがあったのか、という部分をお聞きしたいです。
小澤:マイクの前で、吹き替えのお芝居をすることが初めてで、色々と勉強になりました。今回、演じたオックスフォード公は自分より年齢が高いので、監督と相談して低めのトーンで落ち着いた感じの芝居をやらせてもらったんですよ。だから、そういった意味では、これから自分が歳を重ねるにつれて役に立ってくるのかなと。
今回もちろん「キングスマン」シリーズらしい過激で壮大なアクションシーンがあるんですけど、吹き替えでもアクションをやっているときに、その人の声が出るんですね。例えば「あああっ!」とか「ううっ…!」とか。作品によっては、アクションの時の声を別の方がやられることもあるんですって。今回は「全部、小澤さんでお願いします」って言われて。で、空から落ちるところとか、大男に殴られて、「うわあああ…!うっ」っていうのも全部、自分でやったので。梶さんなんかは、めちゃくちゃうまいと思うけど。体を使わずに声だけで表現するというのは、とても難しいですし、それを経験できたのはすごく勉強になりました。
梶:なるほど。今のお話をお聞きしていると、確かに声だけの表現は”声優ならでは”と言えるのかもしれませんね。僕は小澤さんとは逆に、ふだん声のみを使った表現を専門的にやっている分、実際に肉体を使ったお芝居をする際に、どうしても視覚的な動きが小さくなりがちだなと自分で感じていて。声優としての引き出しはもちろんキープしつつ…実際に動ける体を身につけておくことで生まれる表現もあるんだろうなとは感じていたので、今のお話をお聞きして、すごく納得しました。
本作では、声を発する上での”空間の大小”を特に意識しました。”静かな屋敷内での少人数の会話”と”銃声と悲鳴が飛び交う戦地でのアクションシーン”では、環境が何もかも違いますからね。自分と相手の関係性…敵なのか味方なのか、周りが開けている場所なのか狭い場所なのか、昼なのか夜なのか。そういった点に関して、いつも以上に気を配りながらお芝居しました。
――お話を聞いていると、本当に戦争の描写+キングスマンらしいアクションが大迫力で繰り広げられていそうですね。
小澤:今回は時代背景が、1910年代の第一次世界大戦が始まるところからで。しかも第一次世界大戦は、1発の凶弾によって始まるわけですね。そういう本当の歴史背景が描かれている中、裏でキングスマンは活躍しているんですけど、いわゆる「ジェイソン・ボーン」とか「ミッション・イン・ポッシブル」とか、壮大なアクションという世界観とは、また一味違って。歴史を知っている人はすごく面白いと思います。知らない人でも、「昔こんなことがあったんだな」という楽しみもある。そして、「キングスマン」ですからただの戦いじゃなくてすごくオシャレなんですね。洗練されている。
梶:今作は、タイトルでもある「キングスマン」という組織の成り立ちを描いている物語。私利私欲でもなければ、公的団体というわけでもなく、ただただ、いち貴族の「平和のため、国のために、自分に何ができるか」という思想から生まれた行動なんですよね。本当に素晴らしい人たちなんです、オックスフォード家の人たちは(笑)。そこに、他のスパイ映画にはない魅力があるなと感じました。彼らの誇り高さ、気高さ、生き様が、この映画にはつまっています。
――本作で小澤さんは日本版声優に初めて挑戦されたということで。そして朝のニュース番組でコメンテーターもされていますよね。
小澤:していないです(笑)
梶:その嘘は必要ですか!?(笑)
――梶さんも去年、実写のドラマに出演されていて、お2人は挑戦を続けている印象がすごくあります。意識的に新しいお仕事を選んでいる部分があるのでしょうか?
梶:どの職業もそうかと思いますが、やりたいと思ったことをすぐにやれるほど甘いものではありませんよね。自分以外の要素すべてがそろった時にはじめて、チャンスというのは巡ってくるものだと思うんです。なので、そういったタイミングで出会えたご縁ひとつひとつに感謝しつつ、その上で、自分が今何をすべきかを選択していくのが大事なのかなと。経験に勝る学びはありません。やらせていただける以上、とにかく全力で挑みます。当たり前の話ではありますが、声優である自分がそれ以外のフィールドに挑戦させていただく時には、その世界に対して、そして、そこに生きるプロフェッショナルの皆さんに対して、心からの敬意を持って向き合うようにしています。たとえ上手にできなかったとしても、その姿勢や気持ちで現場に臨むことが最低限の礼儀だと思っているので。その上で、「自分に何ができるのか」を考えるのが、難しくもあり、楽しいと感じる部分ですかね。加えて、そこで培った経験を、本業である”声優”にフィードバックさせられたらなと言うのが、何よりも強い思いです。
小澤 僕も梶さんと、ほぼ一緒で。やっぱりね、縁しかないんですよね。そして、いただいたチャンスを自分たちは全力でやるしかない。ただ、何事においても楽しむことが大事だと思ってます。それは、今回の吹き替えもそうですし、朝の番組もそうですし、役者もそうなんですけど、辛いことや大変なことはたくさんありますけど、毎回「楽しかった」が少しだけ上回るんです。逆に、「辛い」とか「大変」が「楽しい」より上回っちゃったら、一度立ち止まって考えてみるのも良いと思います。それは、どんな仕事でも。
――大変よりも楽しいが上回るって素敵ですね。
梶:僕が「素敵だな」と思う方って皆、そうおっしゃられるんですよね。小澤さんとお会いするのは、まだ今日で2回目ですけど、初めてお会いした時から、そのエネルギーを強く感じていました。自分にはなかなか難しいことなので、そういう方とご一緒させていただくと、いつもうれしい刺激をもらえます。憧れますし、本当にカッコいいなって思いますね。
小澤:梶さんなら大丈夫だよ。でも自分がそうと決めたからには、責任を持たないといけない。覚悟の問題なんだと思う。
梶:そうですね。今回小澤さんとご一緒して、いろいろな事を学ばせていただいています。
小澤:それはこちらこそです。だって、憧れの存在ですから。ひとり残らず…この世から駆逐してやる!
梶:それは僕の演じたキャラクターのセリフですが(笑)。ありがとうございます!
――今日は本当に楽しいお話をありがとうございました!
『キングスマン:ファースト・エージェント』12月24日公開
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撮影:オサダコウジ