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「オサダさん。聞いてますか?」
テレワークの画面の向こうで、編集主幹の宮原さんが言っている。
「オサダさん、もう一度言いますよ。ケチャップとピーマン、玉ねぎ、ハムかウインナー。これ入れて炒めれば何やってもナポリタンになるんですよ」
ちょっと何言ってるかわからないですね、とサンドイッチマンのコントみたいに答えたかったけど、それ言ったら多分怒られるんだろうなと思い、浮かんだセリフは飲み込んだ。
「ええと、つまり、ナポリタンの調理法で……ペヤングを作る、ってことで合ってます?」
僕がこう聞くと、やれやれ、という感じで画面の向こうの宮原さんが答えた。
「はい、そうです。入れるべきものを入れて炒めれば、なんでもナポリタンになるんですよ。ナポリタンっていうのはそういうものです。ナポリタンはパスタの調理法じゃない、アティテュード(姿勢)なんです」
ちょっと何言ってるかわからないですね、という言葉を、僕は再び飲み込んだ。唐突な無茶ぶりとも言える編集部命令――「なんでもナポリタン」はこうして始まった。
スタートがいきなりの三文小説っぽさですみません。でもこれ、だいたい事実でして、毎週金曜に放送している『ガジェット通信ライブ』後に起きたやりとりなんです。
要約すると「ケチャップ、ピーマン、玉ねぎ、ハムorウインナーを入れて炒めて、なんでもナポリタンにしろ」ということです。強引ですけど、実際のところ、どうなんでしょうか。「なんでもチャーハン」の時にもやってみて初めてわかったことがたくさんありました。想像と違った美味しいものもありましたし、そうじゃないものもありました。
「ちょっと何言ってるかわからないですね」という気持ちはありつつも、今回もひとまず試してみたいと思います。
というわけで、「なんでもナポリタン」の今回のターゲットは『ペヤング』。日本のカップ焼きそばの巨頭的存在です。これをナポリタンに変えるべく、用意したのはこちらです。
・ケチャップ
・ピーマン
・玉ねぎ
・ハムもしくはウインナー
正直、不安しかないです。これって「ペヤングの麺だけをナポリタンにする」んじゃなくて、「ソースも入った調理済みのペヤングをナポリタンに転生させよ」ってことですもんね……。
まずはペヤングを普通に作ってみましょうか。
普通に作ったペヤングが出来ました。このまま食べたい……。
さて、フライパンではスライスした玉ねぎとウィンナー、ピーマンを炒めてナポリタンの準備を始めます。
ペヤングを入れたあとにはメインともなる味付のケチャップを投入。もともとソースが加わってるので、ケチャップをちょっと多めに絡めて完成です。
粉チーズかけたら、もうどこから見てもこれはナポリタンですね。
仕上がった“ペヤングナポリタン”試食してみましょう。……うーん。まあ、確かにナポリタンなんですが、ケチャップが強すぎた。元のソースの色味を打ち消そうとケチャップを入れたあまり、単なる細い麺のナポリタンに成り下がってしまっています。元の料理を、上からケチャップで塗りつぶすのがこの企画の目的ではないはず。
もう一度、最初から調理をし直してみます。
今度はかけるケチャップの量を加減してみました。目安としては“オムライスにかける程度”。これでどうでしょう。
試食してみると……おおお! ナポリタンなんだけど、これはちゃんとペヤングです。
あのソース味をベースとしてケチャップをまとった新たな形になっています。アタックとして、まずナポリタンとしてのケチャップが来るのは確かですが、その後からペヤング特有のソース味、そしてふりかけスパイスの味わいまでもが追いかけてきます。
そして、ケチャップのみならずピーマン、玉ねぎ、ソーセージを加わえて炒めると間違いなく“ナポリタン”になる、ということが実感できます。
この絶妙なバランスが保てると、ペヤングなんだけどもナポリタンという謎のゾーンに入れます。
ダメ押しで粉チーズを入れてみたところ、不思議な事になぜかソース味が引き立つ謎現象。ソースの後からペヤングのふりかけ風味も顔をのぞかせてきました。
いやあ、奥深い。ソースとケチャップの後引く美味さ。手間も工夫も必要ですが、かなり面白いです。
「ナポリタンはパスタの調理法じゃない、姿勢なんだ」
2つのペヤングを調理して、宮原編集主幹のセリフの意味が少しわかった気がしました。