夏の花というイメージが強い向日葵。日本では17世紀に伝来したとされ、現在では全国で「太陽の花」として愛すべき存在として親しまれています。

異形をテーマにしたイラストやマンガを発表している雨宮透さん(@Nem_0000)の『ひまわりさんと女の子』は、花が好きで人付き合いが苦手な高校一年生の逢坂陽奈が、学校の花壇に突然現れた紳士風の服装を纏ったひまわりさんと出会うというストーリーになっています。

「あぁ…まるで夢のようです。こうして触れられる日が来るなんて。貴女のことをずっと見てました。貴女のことをお慕いしてます」と手を取って跪かれた陽奈。

「え…。えっとそれはどういう…?」「言葉通りの意味です」と言われ、思わず手を払ってしまい、「ご、ごめんなさい。え、えっと、あまりそういうイタズラはやめた方がいいと思いますよ。本気にする人もいると思いますので…」と言うと、「…なぜイタズラだと思うのですか?」と聞かれ、「あっ、ごめんなさい。でも、私みたいな地味でブスで、なんの取り柄もない人間を好きになるなんて、そんな人いるわけないです」と自己評価低めな言葉を口を付きます。

「それにこんな暑い中、スーツにお花の被り物なんて、普通考えられませ」と続けると、突然腕を取られて「そんなことないです。貴女はとても優しく魅力的な女性です。そのように自分を卑下するのはやめてください」と迫られます。呆気にとられて「なっ…なんなんですか…あなたはいったい」という陽奈に、「おっとこれは、私としたことが…」とシルクハットを取り、「申し遅れました。私は貴女に咲かせていただいた向日葵です。貴女に愛をお伝えすべくこのような姿で会いにきました」と挨拶したのでした。

翌日。ヒョコッと花壇に近づいた陽奈。「昨日の人…居ない…。そうだよね…ひまわりが人の姿になるなんて…」「私のことですか?」と声をかけられて「!?!?」とびっくり。「あ、あの、いきなり後ろから来るのはやめてください」と言いますが、「すみません、貴女がコソコソしているのが可愛くてつい…」と悪びれた様子がなく、「かわ…っ!?そんなことよりなんで今日もいるんですか?」と聞くと、「なぜと言われても…。私はここのひまわりですよ?ほかのところに行けるわけないじゃないですか」と不思議そうな顔をされてしまいます。

「フフ、おかしなことを聞くのですね?」と笑うひまわりに、「ありえない。こんな漫画みたいなこと本当にあるの?私のことをお、お慕いしてるだなんて言っていたけど、育てひまわりが人間の姿で会いにくるなんて」と思う陽奈。「うう…考えていてもよくわからない。とりあえず今日は水をあげて早く帰ろう」としているところを、じっと見つめられ、「あの…。あまりこっちばかり見ないでください。やり辛いので…」と言いますが、「ごめんなさい。それは無理です」と返されて……。

「それが私の生態ですから」「せ…生態?」となった陽奈に、「そうです。ひまわりが太陽に向かって咲くのはご存知ですか?」「はい…聞いたことがありますけど…確か…」「ギリシャ神話では太陽の神に思いを寄せていた海の精が叶わない片想いで毎日太陽に向かって泣き続けていたところ、足が地面に根付き、顔が花になってしまったとか…。なんだか悲しいお話ですね…」と語るひまわり。「…? でもその話がどうしたんですか? 関係ないんじゃ…」と言う陽奈に、「やれやれ…。ここまで言って分かっていただけないなんて…案外鈍感なんですね? もしかして私に言わせたくてわざとわからないふりをしているのですか?」と呆れたようなひまわり。

「あのですね。私にとっての太陽は大好きな貴女です。だから貴女のことをずっと追いかけてしまうのです。いつもは見つめるだけでしたが今の私にはこうして貴女に触れられる手があり、そして貴女のそばに行く足があります」と陽奈の手を取り、「口はありませんが貴女に想いを伝えることもできます。わからないのであれば」と続けようとするひまわりに、「わっ、分かりました。大丈夫です。もう…分かったので」と赤くなる陽奈。「せっかく貴女との思い出から今までをお話しようと思いましたのに」というひまわりに、「いっいいです!!手を離してください。ま、まだ水やりの途中なので」と恥ずかしがる陽奈ですが、「水やりが終わったら帰ってしまうのでしょう?もう少しダメですか?」「~~~ダ、ダメです」とたじたじになるのでした。

一週間後。「おはようございます。何をしているんですか?」と声をかけられて、「ひまわりさん、おはようございます。今は雑草を抜いているところです」という陽奈。普通に会話するようになったふたり。ひまわりさんは「彼女は本当に優しい人だ。あの日からずっと」と、茎が折れてしまい花を咲かすことを諦めかけていたところを助けて「ちゃんと咲かせてあげるからね」という陽奈のことを、「いつも水を与えてくれる人間。最初はそのくらいしか思ってなかった。それから毎日毎日、水やりのたびに彼女は話しかけてくれました」と回想。「私は返事が出来ないのになんでいつも」と思いつつ、「でもいつしかそれが楽しみになっていた。彼女と言葉をかわせたら…だなんて夢のようなことを思うようになった。そして、私はここで一番大きな花を咲かせた」といいます。

「綺麗に咲いたね」と笑いかける姿に、「あの時見た貴女の笑顔をもう一度見たくて私は。私は…」と思っているところ、「ひまわりさん。どうしたんですか?」と陽奈から聞かれて、「いえ…ただ貴女は今日も可愛らしいと思っていただけですよ。語尾にニャーだなんてこれ以上可愛いことをして一体私をどうする」「ニ…!?そ、そんなこと言ってないですよ」というところに、やってきた黒猫に気づいた陽奈が「みーちゃん」と呼びかけて手を広げて「良くここに遊びに来るんです。気づいたら懐いてくれて…。ふふ、元気にしてた?」と抱き上げたところを見たひまわりさんは……。

「す…」と絶句しつつワナワナとするひまわりさん。「えっと…ずるいって一体何が?」と訊く陽奈に「すみません。私がこの姿になって一度も笑顔を見せてくれなかったのに、その…みーちゃんさんにはすぐ笑顔を見せていたので」とイジイジとなったところに、陽奈がふわっとやさしく花びらに触れて、「ふふ…すいません。みーちゃんに対して嫉妬なんてひまわりさんすごく可愛いなって」と笑いかけられます。「で、でもひまわりさんが悪いんですから。恥ずかしいことばかりいうので、毎日笑うどころじゃ」と両頬を押さえて赤くなる陽奈ですが、パタリと倒れてしまったのを見て「ひまわりさん!どうしたんですか!」と慌てますが、「ありがとうございます!」「えぇっ、どういうことですか」と困惑してしまうのでした。

雨宮さんが「自分が好きなひまわりの花言葉『貴方だけを見つめる』というのが素敵で、なにか絵として表現したいと思ってから、最初にひまわり頭の紳士が女子高生の手を取っているイラストを描きました。そこからイラストだけで終わらせたくなくて、この2人のマンガを描きました」と語る陽奈とひまわりさんのストーリー。ひまわりさんに対して、「一目惚れした」「紳士なのに嫉妬心とか尊死とか人間味がある」といった声が寄せられていましたが、「女の子のことを一途に愛して、恥ずかしいセリフもさらっと言ってしまう彼のことを好きだと言っていただき嬉しいです!」と感謝のメッセージを寄せてくれました。

『ひまわりさんと女の子』は、雨宮さんの『BOOTH』で全編がダウンロード販売中。ファニーだけど切なさも感じさせるストーリーが紡がれているので、紳士なひまわりさんのことをもっと見たいという人はぜひチェックしてみてください。きっと夏がやってくることが楽しみになるはずです。

『ひまわりさんと女の子』(BOOTH)
https://nem-0000.booth.pm/items/2703359 [リンク]

※画像はTwitterより
https://twitter.com/Nem_0000 [リンク]、

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 「一目惚れした」「紳士なのに人間味がある」 自信のない女の子に育てられた向日葵が会いに来たマンガに夏が恋しくなる