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どうもライターの丸野裕行です。
今も続くアルコール離脱症状ですが、非常に苦しいものです。前回の第1回が非常に反響が大きかったために、それから症状はどうなったのかをシリーズで綴っていこうと思っています。
■酒をやめようと地獄をみたライターが体験中!「アルコール離脱症状」の恐怖!第1回
https://getnews.jp/archives/2741998
元TOKIOのメンバーだった山口達也さんが、酒気帯び運転で事故を起こし逮捕されてしまったというニュースが入ってきたのは、まさに筆者がアルコール離脱症状と闘いながら、なんとか原稿を書いているときでした。
メディアはこぞって彼を叩いていましたが、アルコール依存症を患い、仕事もなく、孤独で自己嫌悪に包まれた生活の中で彼がどのように苦しんできたのか、同じような立場にある筆者には痛いようにわかりました(ただ、筆者には支えてくれる家族の存在がありますが)。別に彼の肩を持っているわけではないのですが、筆者の私見としてそんなことを感じました。
筆者も日々の執筆仕事をこなし、1日の終わりは必ずお酒で締めくくっていました。早朝から、酒が飲める午後5時か、6時までは仕事を頑張る。
その時間がくると、すぐに仕事用のノートPCを閉じ、プシュッとよく冷えた缶を開けます。
グラスに注いだ抜群の泡バランスのビールをチビリと飲りながら、妻と子供たちのための夕食と酒の肴をつくることに集中するわけです。
何本も原稿を書くことは終わりなき作業ですが、完成がみえる料理を拵(こしら)えるというこの時間は、まさに1日を終える前の至福のとき。
幸せなんですよね。
こんな生活を続けているので、定期健診結果で肝機能障害や高脂血症が出るなんてこと、いわば当然の話ではあるわけです。
それから、仕事の付き合いや仕事のストレスで酒量が右肩上がり。一時期、身体を完全に壊してしまい、急性膵炎の疑いで救急車にのせられることが多くなりました。
※過去記事はこちら
■『急性膵炎で入院! 病院食のグルメ』
https://getnews.jp/search/%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%AE%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%A1[リンク]
「やっぱりお酒はやめるべき、じゃないと本当に死んでしまう……。やっぱり断酒だ!」とこの体験ルポを執筆していたときには本気で思っていたのですが……。
しかし、まぁ仕事が多忙を極め、またぞろ仕事関係のお付き合いがさらに広がる……。酒からの呪縛から逃れられず、今現在に至ったわけです。
毎日体調悪し。朝が起きられず、疲れが取れない。だんだんと体調は悪化。「今度こそはやめてしまおう!」と、さすがに決意しました。
しかし、数十年毎日飲酒を続けた人間が、バッサリと酒を断つことというのは、並大抵のことではなかったのです。
3日目。昼間の禁断症状はなく、いつもどおりの生活を送ってはいますが、やはり朝から食欲はなく、水分補給のみ。昼になっても、夜を迎えても、まったく食欲がわきません。自分で料理をつくっていても、まるで目の前の食材に興味が湧かないのです。
3日間、一切食べ物を口にしていないので、便が出ない状態が続きます。しかし宿便くらいは残っているはず。便秘痛なのか、時折腸をひねられたような痛みがあります。
しかしまぁ、昨晩のあの奇妙なうめき声や階下からの話し声はなんだったのだろうか。あとで調べてみたのですが、あの幻聴は一過性のせん妄と幻聴というものでした。それは、本当にリアルに耳に飛び込んでくる音だったのです。
仕事から帰宅してきた妻や子供たちに夕食を食べさせて、麦茶で口を湿らせながら、なんとなくテレビを流し観。
洗い物をしていると、だんだんと夜が深くなってくる。また、あんなことが起きるのだろうか。恐怖の夜がやってくるのだろうか。まさか、昨日の階下で騒いでいたやつが、2階への階段をのぼってくる幻覚をみるなんてことはないだろうな……。
子供たちを風呂に入れ、午後9時。寝室で、水分を摂りながら本読んだり、スマホで原稿をまとめたり、調べ物をしながら時間を潰します。知らぬ間に寝息を立てている妻と子供たち。
午後11時、ウトウトとしはじめ、つかの間のまどろみ。それから、2時間後の午前1時。やはり自然と目が覚めます。それからはなかなか眠れるものでもなく、できるだけ昨晩の出来事を忘れようと目を強く閉じます。
知らぬ間に自分が眠りの世界にいることがわかりました。
階下にいる自分。我が家にはテラス席があり、そこには大きなガラス窓がはまっています。そこをコツコツと拳で叩くような音。ロール―カーテンを少し指で押しのけ、外を確認すると、赤ん坊を抱えた濡れそぼった女たちが犇めいています。
「ウチの子、入れてやってくださいよ」「子供だけでいいから」「あなたのところにも子供いるんでしょ?」
コツコツという音がだんだんと大きくなって、ガラス戸がピシピシとひび割れてきます。マズいと思った瞬間、2階にあがろうと階段に差しかかったとき、昨日階下にいたブツブツ呟く女が居座って邪魔をしている。なんだ、こいつ……。
「勝手に人の部屋に入ってくるな! やんのか、この野郎!」
虚勢を張っていますが、へっぴり腰で恐ろしさが背筋を駆け上がってきます。うずくまった女を飛び越え、2階へと駆け上がり、寝室の扉を閉めようとする。
しかし女の長い指、扉のすき間に光る女の眼。奇声を発しながら、常人とは思えないチカラで思いきり開け放たれる扉。うずくまっていたあの女は、扉の中に入れないほどの3メートルを越える大きな体躯になっていて、巨大な顔面を無理に扉にねじ込もうとしています。だ、ダメだ!!!!!
そう思ったとき、その悪夢から目が覚め、ちょうどうつぶせ寝になった姿勢の正面にある化粧台の椅子の間に、白い影だけの男が異常なスピードで手足をばたつかせていたのです。
「うわ、わわ~!! 助けてくれ~! 部屋の中に男がいる!!」
妻が筆者の大声に目を覚まし、飛び起きてきます。これこれこうと今までのいきさつを話すと、妻がキッチンからよく冷えたお茶を持ってきてくれました。どうやら妻も、アルコール離脱症状を心配して、ネットでいろいろと調べていたようです。
「1週間の辛抱。ヘタをすると、パパは2週間かかるかもしれないから、頑張ろう」
そう、深夜に励ましてくれました。
そのあと、夢から醒めたあとに見た化粧台の下でうごめいていた人影は、高アドレナリン作動状態が引き起こす《振戦せん妄》症状だということがわかりました。
興奮してしまい、それから気持ちを落ち着けるのに数時間を要しました。この症状は、一番深刻な離脱状態で、アルコールの解毒を図った5%~20%の患者が経験した発作のひとつだといいます。アルコール中毒者の約3分の1が経験するそうです。
朝さえ迎えられれば……そんな気持ちで、日の出を待ち、階下にやっと降りることができました。アルコール離脱症状は、視覚や聴覚、触覚的な一過性の幻覚を見ることはあっても、それ以外の昼間などは意識ははっきりとしているとのことです。
次の日も寝不足だったことを踏まえ、少し仮眠をとり、原稿執筆。昨日のことは夢なのです。しかし、いつもの夢とは違い、起こった夢の出来事は寸分たがわぬほど記憶してしまっています。
しかし、このアルコール離脱症状、さらにヒドい状態がまだまだ果てしなく続くのでした。
※本記事は筆者の体験に基づくものであり、飲酒行為について肯定や否定をする内容ではありません。また、記載された内容は一般的なアルコール離脱症状すべてにあてはまるものではありません。
※アルコール飲料を販売している酒造メーカーの注意喚起に基づいた適度な飲酒量を守るようにしましょう。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)