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人気アイドルグループ「BiSH」「BiS」「GANG PARADE」「EMPiRE」「WAgg」が所属する音楽事務所「WACK」が2019年3月に開催した合同オーディション合宿の密着ドキュメンタリー『IDOL-あゝ無情-』が11月1日より公開となります。
監督は同じくWACKオーディションを撮影した『世界で一番悲しいオーディション』の監督を務めた岩淵弘樹さん。候補生の他、現役生である「BiSH」のアユニ・D、「GANG PARADE」のヤママチミキ、「EMPiRE」のMAYU EMPiRE、「BiS」のYUiNA EMPiRE、そして「WAgg」のメンバーも参加。九州の離島・壱岐島に集結したアイドルを目指す少女たちが、過酷なオーディション合宿に挑む様子はニコニコ生放送でも配信され大きな話題になりました。
WACK社長であり、本作のプロデューサーである渡辺淳之介さんに作品ついて、公開オーディションを行う理由、合宿の裏話などお話を伺いました。
――『IDOL-あゝ無情-』拝見しまして、渡辺さんはこれまでもWACKの映画をプロデュースしていますが、ドキュメンタリーや記録を映画にする理由はどんな事にあるのでしょうか。
渡辺淳之介(以下、渡辺):最近はサブスクリプション(Netflix、Huluなど)で映画が手軽に観れますけれど、僕の時代は映画は映画館でしか観れなかったし、見逃したらレンタルビデオ屋さんに出てくるまで待たなくてはいけなくて。なので、未だに映画は好きな人が観るという印象が強くて。後は、僕自身もともとドキュメンタリー作品が好きで、『ゆきゆきて、神軍』(1987)とか、興奮して観ていました。僕らが行なっているオーディションって非常に残酷な部分も多くて、その現場を映したドキュメンタリーを、映画を観る人達にもドキドキして欲しいなと思うのが理由です。映画にすると1時間半ギュッと集中して観ないといけないじゃないですか。そうやって人の時間をもらう事が結構好きというか。
――渡辺さんご自身が元々映画好きというのも大きいのですね。
渡辺:好きです。大学の時は1日4本観たりとか。一番好きなドキュメンタリーが『DIG!』(※)で、すごく面白くて。そこからドキュメンタリーにハマっていったのは。ダニエル・ジョンストンのドキュメンタリーもすごく面白かったです。
――渡辺さんは『IDOL-あゝ無情-』の作品作りにはどの様な関わり方をされたのでしょうか?
渡辺:この作品に関して、編集とかはあまり口を出していなくて、自分が出演している分客観的に見えない部分もあって。ドキュメンタリーの定石でいうと、5年間から10年間撮らないと面白くないのかなと思う部分もあって、監督は難しかったと思います。でも合宿の特殊な状況の中、1週間で絶対何かが起こるから、それを岩淵監督の視点で構成してもらって。僕自身が岩監督のファンなので、自分が制作に携わっていながらも、完成を楽しみにしていました。……と、話していて、編集にすごい口出していたのを今思い出しました(笑)。「ここをカットしてくれ」とかは無いですが、監督自身が悩んでいる部分についてだったり、「90分以内にして欲しい」とか「ここはちょっと伝わりづらいかも」とか意見は出させてもらいました。
――なるほどなるほど、内容というよりも見せ方の部分で相談しながらだったのですね。岩淵監督のファン、という事ですがどの部分に魅力を感じますか?
渡辺:彼の常に自分を冷静に保とうとする部分ですかね。いわゆる、他者の様な目線で描き出せるところ。ドキュメンタリーの監督って、自己投影が入る方が多いと思うんです。ドキュメンタリーという事象をとらえている作品であっても、どうしても演出は入るものなので難しい部分もあるのですが、岩淵監督はその自我が見えづらい。血が通ってないというか、悪口っぽいのですが(笑)、そこが非常に魅力的だなと。
――完成した作品をご覧になっていかがでしょうか。
渡辺:作品を世に出す人間として、いつも最新が最高だと思って仕事をしているので、今回が一番面白いなと思います。この作品は、今までで一番アイドルの進退であったり、アイドルをやっている子たちとアイドルになりたい子たちの対比がうまく出ているのでは無いかなと思います。より一般的というか、アイドルシーンにあまり詳しく無い観客の皆さんにも伝わりやすいかなと思っています。
――アユニ・Dさん、ヤママチミキさん、MAYU@EMPiREさん、「WAgg」のメンバー、合宿前のライブにて戦力外通告を受けた「BiS」のアヤ・エイトプリンスさん、YUiNA EMPiREさん、トリアエズ・ハナさん、ムロパナコさん、と現役生が参加していますが、人選はどのように決めたのでしょうか。
渡辺:基本的には何となく、なんですけど。頑張って欲しい子。合宿が一週間あるので目立って欲しい子。WACKで今アイドルを何十人も抱えているので、一人一人とちゃんと話す時間ってなかなか無いので、話したい子。でも、一番は直感ですね。
――映画を観ていて、現役生の言動であったり、候補生と関わり方などそれぞれのカラーが出ていたので、個人的に見所の一つでした。「公開オーディション」にする理由は何かありますか。
渡辺:僕が中学生くらいの時って『ASAYAN』が全盛期で、モーニング娘。とかCHEMISTRYとかのオーディションをテレビで観ていたので、公開オーディションって当たり前の様に自分の中に根付いているんですよね。当時すごく興奮していた自分がいて、今そういうのが無いので自分たちがやろうっていう感じです。
――私も『ASAYAN』世代なのですごく分かります。候補生時代から応援してハラハラドキドキして……。今回の合宿でも何度かルールの変更や追加がありましたが、そう行ったアイデアはその時にパッと思いつくのでしょうか?
渡辺:そうですね、その場で。何でもそうですが、やってみないと分からないことばかりなので。事前に準備したことって大抵うまくいかないんですよね。トライアンドエラーの繰り返しなので、その場でひらめいた事を大切にするようにしています。今回も、本当自分でも意地悪いなと思うんですが、「グループ対抗で最下位のグループは問答無用で脱落」という形にした時に空気がガラッと変わりましたね。「近頃の若いもんは」じゃないですけど、それまではどこか他人事というか、せっかくここまで来たのに必死にならないんだって感じてた部分があったので。それが皆の目つきも変わって。
――必死さが顔に出るというか。
渡辺:これまでのオーディションで述べ1万人くらいの女の子たちを見てきて、やっぱり顔、顔つきで判断する部分が大きいんですよね。それはアイドル業界だけじゃなくて、経営者の方や面接官って顔を見るしかない部分も多いと思うので。一生懸命じゃない、必死じゃない部分って絶対顔に現れてくるので。
――歌やダンスに限らず、挨拶や食事を残さないといった、生活の根本的な部分の教えがあるのも合宿特徴ですよね。
渡辺:ここも最近のコンプライアンスにうるさいご時世の中で、嫌いなものは無理に食べなくて良いとか常識が変わってきていると思うので難しいんですよね。でも、常識的に考えたら人に出してもらったご飯を残すっていうのは、僕からするとありえない。すみません、時代遅れなんですよね、僕。
――渡辺さんの子供時代、学生時代の経験が生きていたりするのですか? 学校がすごく厳しかったとか。
渡辺:それが、酷い話で、僕は小学校の時から給食は残すし、掃除はしないし、規律を守れていなかったんです。それの反動が大人になってから来ていて。高校中退して、大学もなじめなくて6年かけて卒業して、就職活動する時に大手のレコード会社とか、どこからも断られて。それまでは、勉強だけ出来ていれば良いって思っていたけど、守らないといけない部分はちゃんとしないとダメなんだって気付いたんです。面接とかの場ではコンサバティブな部分が求められている。今考えると当たり前のことなのですが、彼女達も分かっていないと思うんです。「自分はちょっと変わっているから、アイドルになりたい」「社会には馴染めないけどここだったらいける」とか、そう思っている子が多いと思うけど、規律をしっかり守ってこその逸脱があるというか。偉そうな事を言うつもりは無いのですが、そういった事を学べる場所なのかなと考えています。
――今回のオーディションで脱落してしまっても、「合宿で自分のダメなところが分かった」「変われた」「また挑戦したい」と言っている子も多かったですものね。
渡辺:一度世間からはみ出しちゃうとそこから戻るのって結構大変なんですよね。僕自身が20代後半まで、変な自分のままで良いんじゃないかと思っていて、守るべき事はあるのだと気付くのに結構な時間がかかってしまったので。WACKのオーディションを受けに来てくれる子はそういう事に悩んでいることが多いと思うから、そういう事に気付く場所であったら合宿も有意義だったのかなと。
――オーディションでは、第一印象でピンときた子よりも、合宿での成長を重視していますか?
渡辺:今回は、合格させようと思っていた子がダメで、合格させる気なかった子が良かったり。合宿内での成長をすごく感じましたね。今NOW@EMPiREのテラヤマユフも、合宿3日目でルール変更があった時に、彼女が目に見えて変わったのですごく印象的でした。脱落してしまった子達を見ていてもそうなのですが、ちょっと変わった事とか変な事をしたら良いというわけじゃなくて、目に見えた変化、大きな成長を求めているので。合宿中にも話したのですが、例えば僕が浮気をして彼女を悲しませてしまった時に「もうしないから」って言っても相手は信用しない。なのでこれは極論ですけど、ちんこを切ってしまうんだと。そうすればもう浮気をしないと絶対的に信じてもらえる。そういう事をしろと言っているわけではないけど、一度落ちてしまった信用を取り戻すという事は、小手先だけで何かを変えるのではダメなのだと。
――それはアイドル業界のみならず、他の職業、人間関係の部分にも通じることですよね。渡辺さんは、アイドルのファンの方から批判をされる事もあるかと思います。言ってみれば、嫌われ役をやることも多いと思うのですが、恐くは無いですか?
渡辺:いやあ、恐いっすよ! 夜とか俺の背後に立つなって思います。5ちゃんとかは見ない様にしているんですけど、Twitterで「渡辺淳之介は無能だ」とか「犯罪者だ」とか書き込みを見ると気にはなるので。でもそれ以上に信念を持って仕事はしていて、ワンマンな言い方ですけど、僕の会社なのでついてこれないなら辞めて他で成功した方が良いと思うんです。合う合わないって絶対あると思うから、うちのカラーに合わないのであれば無理はしないほうがいい。(2期)BiSに関しても、無理して我慢しているつもりはないし、本人達もファンの皆さんも非常に狭い視野になっている気がしていたので。でも、それで良いので、自分たちの信じる道を行って欲しいし。全員にむけてやっているつもりではありますけど、どうしても合わないなって人がいて当然だし、そういう方は近づかなければ良いのになとは思います。
――先日『アメトーーク!』で「BiSHどハマり芸人」が放送されて、ますますWACKのグループ、渡辺さんへの注目度が高まりそうですよね。
渡辺:『アメトーーク!』はリアルタイムで観て、楽しかったです。いああ、あれはすごい大人の力が働いているんじゃないですかね(笑)! BiSHを好きになってくださった千鳥のノブさんをはじめ、芸人さん同士のネットワークがあって、広がっていったのだと思うのですが、それは他のグループだったかもしれないし、非常に運が良かったなと思います。「ここまできたんだな」ってしみじみするよりは、ラッキーみたいな気持ちです。
オーディションも、これまでは、BiSが好きとかBiSHに憧れてという子が多かったのですが、最近は「乃木坂46みたいになりたいです」「欅坂46が好きで」とかそういう子が来る様になって、まだまだなんですけど、ちょっとお茶の間に近づけたのかなという気がしています。でも、まだまだなので。やりたいこともたくさんありますしね。
――次はどんな事を見せてくれるんだろう、といちファンとしても楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました!
※渡辺さんの一番好きなドキュメンタリー映画『DIG!』
https://www.amazon.co.jp/DIG-DVD-%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B5%E3%82%AB%E3%83%BC/dp/B000GIWLQW [リンク]
撮影:周二郎
映画『IDOL -あゝ無情-』11月1日公開
https://aa-mujou-movie.jp
【動画】映画『IDOL-あゝ無情-』120秒予告 WACKオーディションドキュメンタリー
https://www.youtube.com/watch?v=PlKCZpDVOpc [リンク]
(C)WACK INC.