日本を代表する伝統芸能の一つ「人形浄瑠璃・文楽」を題材とした北駒生先生の漫画「火色の文楽」を新感覚・音楽朗読劇SOUND THEATREとして10月5日、6日に舞浜アンフィシアターにて上演。


「火色の文楽」は、「バレエ界の星」と呼ばれ、将来を期待された青年・迫弓矢が怪我により、バレエへの夢は絶たれ、人形浄瑠璃・文楽に出会い、新たな人生を歩む姿を描きます。人生の全てを懸け、もがき悩み這い上がる、青年たちの“火”の物語です。



その「火色の文楽」を、舞台美術・照明・特殊効果・衣裳等にまでこだわり、五感を刺激することで観客の想像力を限界まで刺激する“新感覚・音楽朗読劇”SOUND THEATRE(サウンドシアター)として上演。なんと劇中内ではプロによる文楽(人形浄瑠璃)シーンもあるという豪華で贅沢なステージとなっています。


メインキャストは、文楽の舞台に衝撃を受け義太夫を志す・迫 弓矢役に天﨑滉平さん。幼い頃から三味線一筋の三味線奏者・柳川 弦治役に熊谷健太郎さん。身体能力が高く明るい性格の人形遣い・大楠 柑太役に市川太一さん。



3人に今作への意気込みやそれぞれの師匠について話を伺いました。


初心者にもわかりやすい!文楽の扉を開いてくれる作品


――文楽をテーマに扱った作品ですが、原作を呼んだ印象・感想を教えてください。


天﨑:僕自身、文楽に触れさせていただくことが初めてだったので、最初は自分が知っているジャンルの漫画を読むときよりも少しハードルが高かったのですが、読み始めてみると、人間ドラマも面白くて、知らない世界のはずなのに馴染んで共感できる部分も多くて。それに、僕らがわからない文楽の疑問に思うこともすごく丁寧に説明してくださっていました。主人公の弓矢自身が初めて文楽に触れるシーンが描かれていて、知らない僕でもすごく読みやすいんです。文楽には、本当にまだ触りの部分しか僕は触れられていないと思っているのですが、その最初の入門部分の扉を開いてくれたなと感じました。


熊谷:僕自身も文楽は今回の原作を読ませていただいて初めて触れました。原作は、文楽という芸事に対しての入門編というか、とてもわかりやすく、楽しく知るきっかけになりましたし、一人ひとりの登場人物が非常に魅力的で、人の真剣になる熱が伝播していくのを感じられました。弓矢の場合は文楽の太夫としての言葉として伝播していく。荒削りなところは荒削りなりに、変わっていく中で熱が伝わってまた大きな火になって……と、人間同士の繋がっていく様が情感たっぷりで素敵だなと思いました。


市川:僕は以前、歌舞伎を題材にした作品(「カブキブ!」)に出演させていただいたんですけど、そのときに似た感覚があって。伝統芸能ってなると、どうしても敷居が高いという印象を持ってしまうんですけど、原作のある漫画から入ると、わからないことを初心者にも楽しんでもらえるように作られているので、スッと文楽について興味が惹かれていきました。ストーリーにのせて、キャラクターたちが一生懸命のめり込んでいる文楽の魅力が伝わってきて、一生懸命頑張る姿ってやっぱりいいな、と思わせてくれる作品ですね。


――みなさん文楽に初めて触れたそうですが、文楽に限らず、伝統芸能に興味はありましたか?


熊谷:それこそ歌舞伎は沖縄にいたころに観てみたいな、という気持ちはありました。中村勘三郎さんの歌舞伎が観てみたいと思いつつも、それが叶わなかったり、落語を聴きに行きたいと思いつつ、なかなか足を伸ばすに至らないというのが正直なところです……。


市川:知識がないがゆえに、どこで観られるのかなど、そういった情報を探るところからだと思うんですよ。だけど、作品を通じて、意外と身近に観られるんだ、感じられるんだ、というのを知ることができた気がします。


――確かに、そもそもどこに行けば良いのかわからないですよね。


天﨑:原作の巻末に北駒生先生が実際に文楽を観に行かれたときのお話も書いてあって、それを読むと読者の方々も観に行きやすくなるのではないかな、と思いました。


――SOUNDTHEATREを入口に、原作に触れて文楽に触れていくのもいいですよね。では、演じるキャラクターについて印象を教えてください。



天﨑:弓矢はバレエの道を諦めて今まで1人でストイックにやってきていたのですが、文楽に出会い、徐々に人間らしくなっていくというか(笑)。出会った人間も良かったのだろうなとも思いますが、少しずつ表情や言葉も人間らしくなっていって、良い意味で一番成長がみられる。文楽の技術的なところもそうですけど、人間・迫弓矢として、とても成長していく姿が描かれるキャラクターだなと思うので、読んでいて共感も一番できるだろうし、好きになっていただけるキャラクターだと思います。



熊谷:弦治について、三味線ばっかり弾いている変な子がいると(弓矢の幼馴染の)湊が言っていたり、確かに傍から見たときに「あの子、変わっているよね」と言われるのは納得できる部分はあるんです。でもそれは、文楽の三味線が好きで好きで、そこしか見えずかなりストイックで……という結果、傍から見ればそう感じるかもしれないですけど、ものすごく熱いものを胸の内に秘めている。それが一気に開放されるのが三味線を弾くあの瞬間に集約されるのかな、と思うので、見えにくいけれど「好きなこと」に素直で、曲がらない、歪んでいない子ですね。だから、そういう好きが合致したときに、すごく分かり合える人なんだろうなと思います。



市川:柑太くんは現代っ子でSNSとかもよくやっている子で。いきなり出会って早々お好み焼き屋に連れて行ったり、周りを振り回すような行動をとるんですが、それには嫌味がなくて、どこか愛嬌があって許されちゃう。そういうところが彼の魅力なのかな、と思います。また、普段は楽観的に見えますけど、実はちゃんと自分の中に芯があって考え方がしっかりしていて、好きなものに対してはちゃんと向き合って深く考えていける年相応な一面も見えたりするので、どこか掴みどころのないキャラクターなのかな、と思っていて、そこがまた演じていて楽しい部分です。


キャラクターの関係と3人のキャスティングに「すごくしっくりきた」


――最初に台本の読み合わせをしたときの感想を聞かせてください。


天﨑:読み合わせを初めてさせていただいたときに、柑太くん以外はみなさんが関西弁を使って話せているところに驚きました。僕自身大阪出身なので、そこのハードルがない状態というか、関西弁にしっかりと馴染みがあるので関西弁のセリフで詰まるところはないのですけど、関西出身ではない方達も読み合わせでしっかりと関西弁を学ばれてきていたので、すごい作業だなと驚きました。


――方言などは、演じる前のひとつのハードルではありますよね。


天﨑:そうなんですよね。


市川:その言語に馴染まないとお芝居もできないしね。


天﨑:極端な話を言えば、外国語でお芝居をするのと近い感覚のものがあるなと思っているんです。1つその作業を挟まれているのがすごいな、と思いました。


熊谷:やはり先輩方はすごいな、と思いましたね。僕は(赤ちゃんに例えると)ハイハイから壁につかまってようやく立ち上がれたかな、でもまだおぼつかないな、という状況ですので。きちんとお芝居の段階にいけるように頑張っていきたいと思う所存でございます(笑)。


天﨑:急に言葉が変わった(笑)。


市川:僕だけ標準語の役柄なので、みなさんがいろいろ苦労されているところも見てはいるんですけど、逆にちょっと羨ましいなと思ってきたり。関西弁のアクセントの指導があったときに、やらないのになぜか僕も復唱してみたりとか(笑)。だから、なるべくつられないように頑張ろうと思いますね。周りが関西弁で会話しているので、その会話に合わせて話しをしようとすると、ちょっと言語が寄っちゃうこともあるので、僕は僕としてちゃんと標準語でお芝居ができるようにしなきゃいけないなと感じました。



――お互いのキャラクターのキャスティングを聞いたときはどう感じましたか? この役がこの人なんだ!など。


天﨑:他のキャストの方もそうなのですが、この3人においては特に、ものすごくしっくりきました。キャラクター3人の関係値と僕ら3人の関係値を見たときにしっくりきましたね。イチはイチで行動力が意外とあって引っ張ってくれる感じがしますし、少し怖いこともあるんですよ。


市川:あはは! どういうこと!?


天﨑:柑太くん的な怖さを持ち合わせている(笑)。そして、弓矢と弦治はニコイチな感じがしていて、それが熊谷と話しているときと似ているので違和感なく演じられる気がしていて。


熊谷:会話の感覚は割りと素に近いところがあるかもしれないですね。


天﨑:すごく自然な感じがして、僕らの関係値を知った上でのキャスティングだったのかな、と思うくらい、僕はとてもしっくりきました。



――天﨑さんは義太夫を目指す役どころなので、言葉の言い回しや発声なども練習されるんですか?


天﨑:そうなんですよね。実際弓矢が文楽の舞台に立って独特の言い回しを使うシーンが原作にあったりするので、そこをどこまで学ばせていただけるのか。実際に文楽をやられている方は、もう人生じゃないですか。それを生業(なりわい)とされている方々の技術を僕は短い期間で学ばせていただくことになるので、そこは本当にできる限り精一杯やれることをやりたいです。弓矢自身が文楽に出会ってこれから学んでいくという物語なので、同じように観ている人に弓矢が成長していく姿を少しでも見せられるように僕自身もゼロから学ばせていただければなと思っています。


――貴重な機会になりますね。


天﨑:緊張感ありますね(笑)。プロの方にこうしてご指導していただくのは、なかなかないことなので、しっかり前向きに勉強させて貰えればなと思っています。


――義太夫の発声などが身についたら、声優としてもお仕事の幅がとても広がりそうです。


天﨑:本当にそうですよね! なので、いい機会をいただけてありがたいなと思っています。


SOUND THEATREならではの衣装や音楽も楽しみ!


――今回、文楽も劇中で上演されるということで、かなり贅沢なステージになると思いますが、どんなステージになりそうでしょうか?


天﨑:想像もつかない……というのが素直な感想です(笑)。ポジティブな意味で想像がつかないというか、一体どんなものを見せてくれるんだろう!?という期待値が僕の中でとても高いですね!


熊谷:SOUND THEATREの過去の公演を何度か観させていただいていますが、心情的にというよりも、実際に(炎の特効で)「熱い!」と肌で感じる朗読劇ってSOUND THEATREくらいだと思うんですよ。そういうところで、視覚、聴覚だけじゃなく五感を刺激していく演出をやってくださるんじゃないのかなと思って、板の上に立たせていただく身としても非常に楽しみです。


――まだ詳しく決まっていないそうですが、衣装も豪華になるようですね。


天﨑:どんな衣装を着ることになるのでしょうね! いろいろな状況でのシーンがあるので、どういう服を着るのか気になっています。でも柑太くんはずっと制服かな……(笑)。


熊谷:文楽のシーンやってるのに、柑太くんだけ制服(笑)?


市川:嫌だよ、水を差してるよ!


熊谷:僕だって紫のスパッツだもん(笑)。


市川:やばいよ! それ2人やばすぎる(笑)。


――こんな衣装だったら良いな、など希望はありますか?


熊谷:まぁ紫のスパッツは穿きたくない(笑)。


プロデューサー:ごめん、熊谷くん、それだけ決定だわ(笑)。


天﨑:あれ、決定しちゃった!?


市川:すごく良いセリフ言っていても内容が入ってこないよ(笑)。でも、舞台の出ハケ(移動)とかを考えたら動きやすいほうがいいのかな。



天﨑:僕は以前出演させていただいたときには、自ら衣装を脱ぐシーンがあって。大きく心情が変わるシーンで、衣装を脱ぐという形で見た目が変わる演出があったので、もしそういうものがあれば、上手くいくのかなと思います。制服から上手く着物に……できるかわからないですけど(笑)。でも、きっといろいろなアプローチがあって、服装も光の表現も、SOUND THEATREはいろいろな魅せ方をしてくれるので、僕は信じていただいた衣装を着るのみです!


――また、文楽らしい和楽器に加えて、ヴァイオリンやピアノなどで舞台音楽が奏でられるのもSOUND THEATREならではだな、と思いました。


天﨑:文楽のシーンと、SOUND THEATREのチームが作ってくださる音楽がどう馴染むのかな、と僕自身もすごく興味があります。


熊谷:今の世の中って日本といえども、欧米的な文化がすごく入ってきているので、そういう部分が伝統芸能と日本の日常のコントラストとして、楽器、音楽のトータルで表現できると思います。同じ弦楽器でも和の三味線とどう混じり合ってくるのか楽しみです。


3人にとっての師匠とは?


――伝統芸能のお話で3人のキャラクターには師匠がついていますが、みなさんにとっての師匠と言える存在はどなたですか?


熊谷:僕はやっぱり今この道(声優)を歩む上ですごく後押しや経験を積ませてくださった、沖縄の専門学校時代の恩師です。その方が、とても厳しくも愛のある言葉でいろいろ教えてくださいましたし、本来だったら仕事を始めないとできない経験などもさせてもらったので、僕にとっての師匠というか、恩師はその先生ですね。



市川:僕も養成所時代の恩師で、入ったときに教えていただいたアーツビジョンの福島潤さんです。僕は最初はラジオがきっかけでこの業界に入ろうと思っていたので、そもそも人前でお芝居をするということが恥ずかしかった時期がありまして。その時期に出会ったのが福島潤さんで、お芝居の楽しさや役を演じることの魅力をレッスンを通じて教えていただいて、そこで大きく自分の中で変化があって、そのおかげで今こうやって活動できているわけですし、一番の恩師は福島潤さんかな、と思います。


――その後、共演はされましたか?


市川:アニメ『メジャーセカンド』でライバル校で因縁のある敵同士の役で共演させていただいたんですけど、やっぱり教えてくれた方と肩を並べてお芝居ができるというのはすごく自分の中でも嬉しかった出来事です。収録前にメールで連絡をくださったりもして、嬉しかった思い出がありますね。


天﨑:僕は何名か思い浮かんだのですが、師匠という言葉が一番合うなと思う方は、養成所時代の恩師で、アーツビジョンの西前忠久さんです。声優としての技術のほかに、精神的なことをたくさん教えていただきました。挨拶する大切さや、人に対してだけじゃなく、スタジオやマイク、台本など使うものに対する感謝の気持ちみたいなものも教えていただきました。「台本を貰ったらすぐペラペラめくって読むんじゃない! ちゃんと居住まいを正して『よろしくおねがいします!』と言ってから読むんだ」とか、そういう本当に精神的な未だに僕の中にある大事にしているところを作ってくださった方です。最近、同じ作品で共演させていただけて、現場でご一緒はできていないのですが、それが僕の中で少し誇らしかったというか、嬉しかったのを思い出しました。


――現場ではご一緒できなかったようですが、共演作品について何かお話はされましたか?


天﨑:まだなんです。たぶんお師匠様は僕と共演したことを存じ上げていないと思うんです(笑)。「SAMURAI SPIRITS」というゲーム作品だったので、掛け合いなどはないのですが、キャラクターを選べば戦えるので、西前さんが演じている服部半蔵と、僕の演じた鞍馬夜叉丸というキャラを選んでゲーム内で戦いました(笑)。



――最後に、今作をどんな方に観ていただきたいですか?


熊谷:「火色の文楽」の作中で翼くんという弓矢が病院で出会う男の子がいるんですが、後に弓矢が板の上で言葉を紡いでいる姿を見て、「自分も太夫になるんだ」と決意するんです。文楽を志すかは関係なく、やりたいことやこれからの進路をどうしようかな、と思っている学生さんなどが観て、ポジティブになっていただけるような作品に出来たら素敵だなと思っています。そういう選択の岐路で迷っている方に息抜きも含めて観ていただけると楽しいんじゃないかなと思います。


天﨑:弓矢もそうして文楽に出会ったので、もちろんそういう方にも観ていただきたいですし、受け取った方によって全然感想も違うと思うので、いろいろなジャンルの方に観に来ていただきたいです。実際に太夫をやられている方や、人形浄瑠璃、三味線をやられている方が、もし観に来られたときに、どういう感想を持たれるのかも興味がありますね。いろいろな感想をいただきたいなと思います。


市川:文楽を知らない方に一番観ていただきたい作品だとは思うので、僕らと同様に作品に触れてみたら、文楽の魅力について理解していただけると思います。作品を通じて心に残るものは必ずあると思うので、立体的な音響に合わせて、音が質量になって身体に心に届くように我々も一生懸命やっていくので、今まで触れたことがない人にも観ていただきたいですね。


――ありがとうございました、楽しみにしています!


五感を刺激する豪華な朗読劇と伝統芸能の文楽まで楽しめてしまう「SOUND THEATRE × 火色の文楽」。チケットはチケットぴあとeプラスでまだ事前購入可能(※チケットぴあは10/3 23:59まで)なので、ぜひ、このチャンスをお見逃しなく。


<公演概要>

タイトル:SOUND THEATRE × 火色の文楽

会  場:舞浜アンフィシアター

公演日時:2019年10月5日(土)  開場 17:15 / 開演 18:00

     2019年10月6日(日)  開場 11:15 / 開演 12:00

チケット:9,000円

朗  読:天﨑滉平 / 日笠陽子 / 熊谷健太郎 / 市川太一 / てらそままさき / 井上和彦 / 秋元羊介 / 高橋広樹 /植田佳奈

演  奏:土屋雄作 (ヴァイオリン) / ほか

原  作:北駒生「火色の文楽」(ゼノンコミックス/ノース・スターズ・ピクチャーズ)

脚本・演 出:キタムラトシヒロ

音楽監督:土屋雄作

主  催:サウンドシアター事務局

制  作:アハバ クリエイティヴ パーティー

お問合せ:DISK GARAGE 050-5533-0888 (weekday12:00~19:00)


公式サイト:

http://hiiro-no-bunraku.soundtheatre.jp


(C)北駒生/NSP 2017


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 朗読劇×人形浄瑠璃!?「SOUND THEATRE × 火色の文楽」天﨑滉平・熊谷健太郎・市川太一インタビュー