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トラックもエレベーターもない江戸時代。重い家財や武器など、ありとあらゆる荷物を城から人力で下ろしては上げ、はるか遠い地へ自ら大量の荷物を持って藩士とその家族全員が藩を移動する「国替え」という、考えるだけでも気の遠くなる大規模な引っ越しを題材にした映画『引っ越し大名!』が現在公開中。本作はあまりの大変さに参勤交代をはるかに上回る費用と労力がかかる、この超難関プロジェクトを成功させるために主演の星野源をはじめ豪華キャストたちが奮闘する笑いと感動の物語となっています。
主人公は、片桐春之介(星野源)という引っ越し総責任者である「引っ越し奉行」に突如任命された引きこもり侍ですが、タイトルにもなってる”引っ越し大名”こと松平直矩はなんと実在の大名。過酷を極める国替えを生涯に7回も幕府から命じられ、その引っ越し回数の多さから実際に”引っ越し大名”というあだ名をつけられていたという悲運の大名です。本作では及川光博が演じ、悲運な大名と呼ばれながらも、その麗しい姿はベイベーならずとも魅了されること間違いなしのチャーミングな魅力を放っています。
とはいえ、学校の歴史で習う機会はあまりない松平直矩。一体どんな人物だったでしょう?今回、そんな直矩と浅からぬ縁があるという方から、お話を伺うことができました。その人物とは…かの有名な武将であり、大名の石田三成(@zibumitunari)さん。自身も豊臣秀吉政権時には五奉行の1人として活躍し、のちに打倒徳川家康と西軍を率いて決起、関ヶ原の戦いに挑んだ過去を持ちます。現在は確かな歴史の知識と、時事的な話題を絡めた秀逸なツイートで多くのファンを抱える人気ツイッタラーとして活躍中。今回はそんな石田三成さんに松平直矩との浅からぬ縁から、当時の引っ越しの過酷さについて、さらには今年もやってくる9月15日の関ヶ原の戦いに備えて意気込みも伺いました。
──松平直矩は江戸幕府5代将軍、徳川綱吉の時代に生きた方です。石田三成さんといえば因縁深いのは、江戸幕府初代将軍の徳川家康かと思いますが、一体どんな縁が?
石田三成:いやー。家康は大敵だしもう何度挑んだかわからないくらいだけど。家康の次男・結城秀康殿とは深い縁がある!かつては殿下(豊臣秀吉様)の養子でもあり、豊臣ともゆかりある秀康殿。殿下の死後、儂の屋敷が豊臣家のバーサーカー達に襲撃される事件が勃発するんだけど、これを仲介したのが家康だった。
──いわゆる石田三成襲撃事件(七将襲撃事件)ですね。
石田三成:そう。家康は、秀康殿に護衛を命じて儂を佐和山まで送り届けた。儂は秀康殿の真摯な護衛に感謝…!佐和山での別れ際にて、護衛のお礼に名刀「正宗」を譲ったのだ。秀康殿は大層喜んだらしく、徳川時代では使うことすら忌避された「石田」の名を冠して「石田正宗」と名付けて愛用したようだ。そんな命の恩人でもある秀康殿の御孫が松平直矩殿であり、徳川の時代に「石田」の名を有する稀なる刀「石田正宗」も子孫たる彼の元へと受け継がれていく…!だから、『引っ越し大名!』は儂のズッ友の御孫の話であり、数少ない儂の生きた証(石田正宗)が残っている大名家の大ピンチ映画でもあるのだ!!
──なるほど、それは確かに浅からぬ縁ですね。そんなズッ友のお孫さんである、松平直矩は過酷を極める国替えを7回も耐えているそうで、かなり辛抱強い方なのかなと想像もできます。石田三成さんの時代は、まだ国替えはなかったかと思いますが、映画をみて引っ越しの過酷さをどのように感じられましたか?
石田三成:徳川時代ほど多くはないけど、儂らの時にもあったぞ!まさに松平直矩殿の先祖・家康も有名な引っ越し大名といえよう!三河・遠江という現在の静岡県あたりから関東へのお引っ越しを命じられ、見事現代にまで続く江戸の基礎を築き上げた家康。それに対し、家康の旧領には尾張清洲の織田信雄様(信長公次男)がお引っ越しする予定だったんだけど…
織田信雄様は父祖の地である尾張からの移動を嫌がって拒否、殿下をブチ切れさせて改易処分にされてしまうのだ…。ほんと引っ越しは命がけ…。映画を見ても、上が勝手に決めた引っ越しに「No!」をいえない松平直矩殿の苦労が凄く伝わってくるな。
──絶対に逆らえない上からの命令。現代でいうと悪魔的パワハラですね…。
石田三成:ちなみに映画では播磨国姫路から豊後国日田への引っ越しが描かれておるが、実は儂も近江国佐和山(現・滋賀県)から九州の筑前・筑後へ引っ越しする計画があったのだ。しかし、「佐和山から三成が引っ越しちゃうと誰に佐和山任せればいいの…?」「中央に三成いないと不安じゃない…?」という殿下の御意によって引っ越し大名にはなれなかった。優秀すぎるが故に引っ越せなかったというところですかね(ドヤァ
──(笑)。それでは、ずばり!石田三成さんの思う、本作の見どころはどこでしょうか?
石田三成:ずばり!!!!!奉行の働きを緻密に描いている点にある!!!!片桐殿(星野源)が申したように、引っ越しとは戦。そう、合戦で華々しく戦うことだけが戦ではないのだ。儂もどちらかといえば日常政務や兵糧補給、検地といった面で働く奉行。しかし、これらも容易ならざることであり…。例えば検地は測量ばかりのイメージが根強いが、実際は在地に潜む反対勢力との衝突・説得の繰り返しなのだ。この映画でも同じく、頭で思い描いた引っ越しの算段についても、実際には多くの登場人物の心情が織り交ざって事が停滞する。故に、必死の説得を要する場面や、妨害行為に悩まされる場面も描かれているだろう。頭で考えただけでは一筋縄ではいかぬ、いかに行動に移して壁を乗り越えていくかという点が最大の見どころであり、今を生きる皆々にとっても重要なテーマかもしれんな…!
──いつの時代も総責任者の苦労は変わらないということですね!それでは最後に、今年も9月15日の関ヶ原の戦いの日が近づいています。もし今年関ヶ原の戦いに勝利したら松平直矩が生涯に7回も国替えはすることはなくなるかもしれませんが…今年の関ヶ原の戦いに向けての意気込みもぜひ!
石田三成:勝つしかないですね。令和最初の関ヶ原…!儂らが勝ったら松平直矩殿は七回の引っ越しどころかもっと大変なことになりそうだけど…!!原作では関ヶ原以降、島津や毛利といった旧西軍大名を抑える要所の姫路に松平直矩殿を置くことはできないとのことが名目上の理由であったが、西軍が勝てば問題はないのです。引っ越しはなくなります。いやまぁ儂らが勝ったらどう考えてもそれどころではなくなるけどな(二度目)。ともあれ、「石田正宗」で繋がる結城秀康殿や越前松平家の皆々との縁、西軍諸大名との縁、更には常日頃から干し柿を投げつけてくるふぉろわー衆との縁、多くの縁を信じて勝利を掴むことを、ここに宣言しよう。
令和こそは…!!!西軍勝利!!!!!!!!
生きた時代は違えど、『引っ越し大名!』とも深いつながりのあった石田三成さん。奉行や総責任者はいつの時代も苦労の絶えない役職ゆえに、映画に共感できるところもあったそう。「頭で考えただけでは一筋縄ではいかぬ、いかに行動に移して壁を乗り越えていくかという点が最大の見どころ」という石田三成さんも語る通り、時代劇と侮ることなかれ!これは現代に生きるわたしたちと同じ悩みを抱え、戦った者たちの物語でもあるのです。
ムスカ大佐が地上波でバルスされた総数:17回
儂が大河関ヶ原でバルスされた総数:14回
辛うじて儂の方がまだ少ないですね。
—石田三成 (@zibumitunari) August 30, 2019
『引っ越し大名!』
http://hikkoshi-movie.jp
(C)2019「引っ越し大名!」製作委員会