『バイロケーション』(14)『氷菓』(17)などで各方面の称賛を集める安里麻里監督の最新作、『アンダー・ユア・ベッド』が好評上映中です。日本映画界を代表する実力派になりつつある高良健吾が、11年間女性を想い続ける、変質的で狂った繊細な主人公・三井を好演。話題を集めています。


孤独な人生を送る男がほんの微かな甘い記憶に執着する姿を純粋に、盲目的に描いた本作について、高良と、彼が演じる三井が一途に想い続ける女性・佐々木千尋を演じた西川可奈子にインタビュー。愛する女性への狂気の愛を描いた、痛々しくも繊細な男の物語について話をうかがいました。



●センセーショナルな作品で、大変な撮影だったのかなと思いますが、いかがでしたか?


高良:僕たちも事前に話し合うわけでもなく、委ね合う感じではありました。でもそれが楽しい。道のりを確かめ合う場合もありますが、お互いに「これで合っているのかな?」と不安になりながら演じ合う作業が楽しいので、もちろん大変ではあるのですが、楽しみのほうが上でしたね。


西川:西川:脚本の中だけだと想像しきれなかったものが演じる事で新しいものになって……。脚本上の決まりと現場で生まれた感情を大切に生かせた現場でしたね。監督の演出も容赦なかったのですが(笑)、それはうれしかったんです。いろいろと妥協していたのでは、この物語は成立しない。



●容赦ない(笑)


西川:いろいろなDVの表現法はあると思いますが、今回一番キツいと思ったものが、暴力描写を延々と写し出すシーンです。本当に容赦ない。


高良:僕は、暴力を隠して陰惨に見せるほうが映画としては好みですが、これは隠さないで徹底的に見せて行くタイプだなと、最初に思いました。それを僕がベッドの下から見ている。僕は、そういう現場に来ちゃったのかと、ちょっと思ったほどでした。


●なんでも高良さんは、自分の出番じゃない日も撮影現場に来ていたほど、作品に傾倒していたと聞いています。


高良:それは誰でもすることだと思うんです(笑)。僕が見つめている相手を撮るわけなので、僕も現場にいる必要があるということ。すごくストイック感がある感じになっていますが、それはたぶんやるべきことで普通のことだと思います。


西川:みんなストイックなことは変りないです(笑)。



●ところでおふたりは、どういう作品だと理解を?


西川:西川:ストーカーって一方通行に相手のことを考えずに自分の欲求に従って行動しがちですよね。でも、この映画の三井君は、千尋のことだけを思って全て行動するんです。最初の印象とどんどん違っていく。気持ち悪いと思っている主人公に感情がどんどん傾いていく不思議な映画だなと思いました。三井くんはヒーローなのか? 犯罪者なのか? っていう判断はどうでもよく、少なくとも千尋にとってはとても重要な人だと思っています。成立せずともいろんな愛の形があるんだなと。


高良:白と黒、表と裏のようにわけてはいないので、あいまいなグレーゾーンで表現しているような気がします。そこに観る者を傷つけてくる攻撃性があるわけで、そこから感じたことを考えよう、そういうメッセージを受け取りましたね。映画に傷つけられた経験もあったから、そこから初めて知ることもあったけれど、そういう映画になっていると思います。


西川:残る映画ですよね。


高良:それに誰も裁いてないんです。


●現代のSNSに見られる承認欲求問題もあると思いました。


高良:認められたいと思っている人は、多いと思うんです。三井君は非常識な行動を取っているけれど、世の中と案外フィットしていることが、この映画の面白さでもある気もします。


西川:それを高良さんが演じることで、ピュアさが際立っていて、素晴らしいと思いました。


●免罪される感じがありますよね。


高良:たぶん彼のピュアさに共感する人もいるとは思いますが、そうじゃない、この人の始まりや原因に、みなどこかで理解を示してくれていると思うんです。この人の子どもの頃は、まだ家族そのものが世の中で、その時点で認められていなかった。そこに全部の原因があり、そこにそうとうなダメージがある。みんな理解はすると思いました。



●この作品、自身にとっては、どういう作品になりましたか?


西川:作品観たあと数日は引きずりましたね(笑)。


高良:自分の感情を一回通るので、役柄の嫌な気持ちを一回通っちゃったみたいな、感想はあります。そのことが自分の問題になりすぎることもあるけれど、そうじゃないよ、と思わないと本当はいけない。


西川:もちろん毎回勝負はしていますが、今作で西川としても女優として

も、すごく成長を感じる部分が多かったです。前に進める土台が固まって

きたというか……自分の覚悟を更に強めてくれた作品だと思っています。


高良:いろいろな縁を経て自分の元に届いて、縁で出会った作品でした。30代でいろいろな出会いがあっての作品だったので、やるのであれば徹底的にやりたいという思いだけで参加しました。でもバランスも大事ということも気づいていたので、それまでのやり方とは違う方法でやれたこともよかったことかもしれないです。



タイトル:アンダー・ユア・ベッド

公開表記:公開中

配  給:KADOKAWA

コピーライト:2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会


高良健吾スタッフクレジット


【スタイリスト】

渡辺▲慎也 (Koa▲Hole▲inc)

SHINYA▲WATANABE ( コアホール )


【ヘアメイク】

高桑里圭

タカクワ リカ


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(執筆者: ときたたかし) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか


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記事名:「 「認められたいと思っている人は、多いと思う」 高良健吾&西川可奈子が語る映画『アンダー・ユア・ベッド』が投げかけるもの