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今回は石堂ゆみさんのブログ『オリーブ山便り』からご寄稿いただきました。
国華産業(パナマ船籍)のタンカー 写真出展:Jerusalem Post
安倍首相のイラン訪問、日本企業に関連するタンカーが軍事攻撃を受けてイランとアメリカが、非難しあい、これまで以上に緊張がたかまっている。
12日、日本の安倍首相が、ロウハニ大統領に面会。続いて13日には、イランのイスラム最高指導者ハメネイ師と直接会談を行った。ハメネイ師にまで直接対談できたのは、日本のこれまでからにイランとの良い関係によるものである。
アメリカとイランの緊張が高まっている中での訪問で、アメリカとイランとの交渉再開の橋渡しになる可能性も日本では期待されていた。
安倍首相は、アメリカ、イスラエル、ロシアの首脳とも電話で連絡を取り、イラン首脳との会談に臨んだが、結局ハメネイ師は、アメリカとの交渉については明確に拒否した。これまでのイランとアメリカの長い確執の経過を見れば、日本が要請したぐらいで、両国がすんなり交渉の場につくはずもなかっただろう。
逆に、安倍首相のイラン訪問に合わせて13日、ホルムズ海峡に近いオマーン湾で、ノルウェーの船と、日本企業関連のタンカー(サウジのメタノールをシンガポールへ運搬中)が、2回にわたって軍事攻撃され、緊張緩和どころか、緊張を悪化させる結果になった。
被害を受けた国華産業の堅田社長によると、船はパナマ船籍で、旗じるしも日本ではなくパナマであったとして、特に日本をねらったわけではないとの見解を述べているが、イランが、船の情報を持っていなかったという確証はない。
被害を受けたタンカーの乗組員らはいったん船から避難したが、沈没の危険はないとして、現在は船に戻り、アメリカ軍の保護の中、アラブ首長国連邦へ曳行の途上にある。
この一連の出来事から、ホルムズ海峡閉鎖への恐れから、原油先物価格が4%上昇した。
ホルムズ海峡とは
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾の間にある幅33キロ、深さ75-100メートルの狭い海峡である。サウジアラビアなど中東から輸出される原油を乗せたタンカーの8割は、この海峡を通過している。BBCによると、この海峡のタンカーの通路は、2レーンしかなく、その間は2マイル(約3200メートル)しかない。
1980年代、イランとイラクの戦争中、それぞれが相手の原油運搬を阻止するために、ホルムズ海峡を通過するタンカーを攻撃。BBCによると、タンカー240隻が攻撃を受け、55隻が撃沈された。
現在、イランは、アメリカとの危機に及び、ホルムズ海峡の閉鎖を示唆している。
https://www.bbc.com/news/world-middle-east-48633016
問題は、だれが、タンカーへの攻撃をしたのかだが、アメリカのポンペイオ国務長官は、この攻撃は、5月にアラブ首長国連邦で、サウジアラビアのタンカーが、妨害攻撃された時と同様、イランによるとの見解を公式に発表した。
イランはこれを毅然として拒否。逆に、タンカーの乗組員は安全に避難させたとして、タンカーの乗組員らが、イランによくしてもらったとコメントする映像まで出した。
https://www.timesofisrael.com/iranian-tv-shows-crew-of-attacked-tanker-in-full-health/
14日に、アメリカ軍が、日本のタンカーから(証拠隠滅のために)不発のリペットマインと呼ばれる密着型機雷らしきものを撤去するイラン革命軍の映像を公開すると、イランは、「ホルムズ海峡の安全を守るのはイランの使命だ。できるだけ早くその危機を取り除いたのだ。」と返答した。
イランは、アメリカは早急にイランによるものと発表したが、お互いが同意できる証拠はいっさいないと主張している。
一方で、イランのザリフ外相は、「Bチームが、外交を妨害して、イランに対する経済テロを隠蔽しようとしているのだ。」とツイッターに書き込んだ。
ザリフ外相が時々使うBチームとは、アメリカの治安顧問ジョン・Bボルトン補佐官、イスラエルのBベンジャミン・ネタニヤフ首相、サウジアラビアのモハンマド・Bビン・サルマン皇太子、アブダビのモハンマド・Bビン・ザイード・アル・ナヒャン皇太子をさしている。
https://www.timesofisrael.com/after-tanker-attacks-iran-claims-us-israel-plotting-to-sabotage-diplomacy/
イランとアメリカが、お互いに正面から非難しあっている状況だが、この問題については、国連安保理で議論が行われる予定である。しかし、安保理では、ロシアと中国が、アメリカのイランへの制裁に反対しており、拒否権を発動すると思われるので、結局何の手立てもできないだろう。
ここからどう発展していくかは不明だが、突発的な衝突から大きな戦争に発展する可能性は続いている。その際、イスラエルでは、イラン配下のヒズボラやハマスにより、南北国境から1日に1000発以上のミサイルが、連日降り注ぐ可能性があると懸念する声もある。
かつてイスラエル人がバビロンで捕囚になっていた時代に、イスラエル人をエルサレムへ帰らせ、神殿と国の再建を実現させたのは、ペルシャ、つまり今のイランであった。今は、イスラエルの宿敵となっているイランだが、イスラエルの祝福になる可能性も秘めている。神の前に、本来のイランの姿を取り戻せるようにと願う。
執筆: この記事は石堂ゆみさんのブログ『オリーブ山便り』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2019年6月25日時点のものです。