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どうも、特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
働けど働けど、下流社会から抜け出せない人々が頼るもの、それが“金融業者”です。
今回も、手を変え品を変え債務者の骨までしゃぶりつくす“ヤミ金融”にやってくる客たちの素顔に迫りたいと思います。
6人目……女性(40才/弁当工場パート主婦)
独立して精密機器の組み立て職人をしている夫が、取引先と揉めて失業。彼女は私立の高校に通う娘のために弁当製造工場の深夜勤務にパートに出ているという。工場ではマルチ商法が流行していて、“ノニ”という果実の健康ジュースビジネスをはじめました。
しかし、援助していてくれた実家や親戚一同にはこの副業が原因で勘当され、孤立してしまいます。娘は学費が払えず中退し、地元のお菓子工場で働きはじめ、家計を支えているというのです。爪に火を灯すような生活の中、夫は以前から仲が怪しかったスナックのママと住みはじめ、借金だけは彼女のもとに残りました。
「私は本当に不幸でどうしょようもないんです……。離婚もしてもらえないし……。今度、娘を連れて『T教』の教会に出家しようかなと思ってるんですぅ~! ウウウゥ~……」
彼女は返済分を渡すときも、書類を書いているときも、金を受け取るときも、終始泣きじゃくっていました。N氏は鬱陶しい顔ひとつせず、肩を叩いて慰めていたのが印象的です。
ほつれにほつれた合皮の財布に3枚の1万円札を収めた彼女は、作業用にしている娘が履いていた高校の靴のかかとをトントンと直して、帰っていきました。
7人目……男性(51才/警備員)
毛玉が目立つセーター姿の男は、暗い目でこちらを見ていました。彼の職業は警備員で、少ない収入を男手ひとつで障害を持つ娘を育てているそうです。夜勤はできないので、昼勤の貴金属店警備。立哨(りっしょう)で持病のヘルニアがうずく中、彼は一生懸命に立ち続けます。
「現金扱ってるんでしょ? 高級なアクセサリーもあるし、警備の内通者として外の連中と組んで、宝石強盗でもしたらよろしいのに……。闇職にいくらでも、その手の連中がいてますよ」
というN氏の言葉にまんざらでもない顔になった男性。生活費の補てんに借りた5万円を半分に折り曲げて、彼は帰っていきました。あの最後の笑顔と不幸を絵にかいたような話が非常に印象的でした。
8人目……最後の客は、女性(19才/フリーター)
やってきたのは、幼い顔の女の子でした。親からの仕送りを頼りに、バイトをしながら一人暮らしをしていたのですが、父親が脳梗塞を患い送金がストップ。
家賃が払えなくなって、4ヶ月分の賃料を滞納後夜逃げ。友達の家を泊まり歩く生活ですが、荷物を預けるトランクルームの利用料を借りにN氏のヤミ金に手を出しました。
あっけらかんと若い娘らしいキラキラのショルダーバッグから取り出したハンコを、何も書かれていない借用書と委任状に押す彼女。「おじさん、10万円もソッコーで用意してくれてありがとう!」とでも言うように、彼女はにこやかに帰っていきました。
「支払いが滞った場合、いや、もう少し貸し出して、がんじがらめにする。で、あの子は知り合いがやっているヘルスで働せる。もちろん、そのあとは回収をつけながら贅沢を覚えさせて、また金を借りるように仕向けるわけや。で、オレがやってるホストクラブの男とくっつけて、店にも借金させる。借金ループのあとは、ソープと遊郭行きやな。金をナメてると痛い目に遭う」
N氏はそう言って、インプラントで揃った白い歯を見せて笑いました。正直、僕の背筋にぞぉ~っと冷たいものが駆け上がりました。
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ヤミ金を訪ねてくる客たちというのは、いたって真面目に働き、平凡に暮らしている人間たちが多いということがわかりました。
以前はギャンブルなどの遊興費が原因で借金を拵えるお客が多かったらしいのですが、昨今では足りない生活費の穴埋めの理由で借り入れを重ねるお客が多く、借金とは無縁だった正業を持つ顧客が格段に増えているとN氏は言います。
厳罰化された【貸金業規制法】が施行されているこのご時世に「こんな危険なヤミ金融を営んでいても大丈夫なんですか?」と僕は質問しました。
「チケット金融やらソフトヤミ金、カード金融、自動車金融、レンタル金融、質屋ヤミ金……脱法が利くいろんな形態を業者は毎日考えてる。いわば、こんなもん“ザル法”や。そうなってくると警察やら弁護士では、手が回りきらんよ。人手不足やのに……。それに、金を借りに来てる輩は弁護士なんか、そうは立てへん。協力的に見える弁護士たちもキッチリ手付けと謝礼を取ろうとするし、悪どいのはお互い様やわ」
やはり、ヤミ金融はさらに力をつけるのか。N氏の答えに漲る自信を感じました。
(C)写真AC
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