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年齢も性格もバラバラな男女6人が、寂れた港町に転居してくる。彼らは全員元・殺人犯だった……。
山上たつひこ原作・いがらしみきお作画の同名コミックを実写映画化した『羊の木』は、静かなのに不穏な雰囲気を持つヒューマン・サスペンス。彼らの受け入れを担当することになった市役所職員を演じる錦戸亮さんを筆頭に、木村文乃さん、北村一輝さん、優香さん、市川実日子さん、水澤紳吾さん、田中泯さん、松田龍平さんら豪華役者陣が集結しています。
本作の監督を務めるのは、『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』等を手がけた吉田大八さん。「これまでの作品で一番脚本に時間をかけた」と語る、作品作りについて、キャスティングについて色々とお話を伺ってきました。
――作品拝見して、とても素晴らしかったです。この話、将来現実に起こりそうだなと思いました。
吉田監督:原作が、人口が減っている地方都市と、元受刑者の更生にかかる経費を削減したい国による極秘プロジェクトがスタートするところからはじまるお話で、もちろん架空なのですが、妙なリアリティがありますよね。
――原作の「羊の木」も、ギャグ漫画を手がけてきた、山上たつひこ先生といがらし先生がタッグを組んだミステリーということで大変話題になりましたよね。
吉田監督:山上先生といがらし先生、お二人には映画をすごく気に入っていただけました。山上先生の原作を基に漫画を描かれたいがらし先生いわく、3つの『羊の木』があると。「原作の羊の木、漫画の羊の木、そして映画の羊の木。映画にしか出来ない事にチャレンジしていて面白かったです」と言っていただけて、感激しました。子供の頃から熱狂的に読み続けて、間違いなく影響を受けたお二人の仕事に関われたことも感慨深かかったです。
――登場人物も、原作のそれぞれの役割は活きていながら、人数や年齢などは変わっていて。そういった部分ではどんな事を工夫しましたか?
吉田監督:原作の形を守ろうとはあまり思いません。大事なことは、自分が原作を読んでつかんだコアの部分に忠実であることです。今回、錦戸君が演じた月末は、原作の主人公である島原(魚深市長。元受刑者たちの受け入れを決断する)と、島原の友人・月末(魚深の仏具屋店主。島原を手伝い、受刑者たちを受け入れる)を合わせた上で、年齢をかなり下げています。理由は、より若く未熟な人間がこの事態と向き合うことで変化していく様子を見たい、と思ったからです。脚本のあらゆるところで、似たようなプロセスをコツコツ積み上げていきました。
――プレス資料の中でも「これまでで一番脚本に時間がかかった」とおっしゃっていますね。
吉田監督:それだけの時間をかける甲斐のあるテーマであり、物語だったということだと思います。
――錦戸さんが見事に「普通の青年・月末」を演じていらっしゃいますね。
吉田監督:錦戸君はその場面の空気を瞬時に心と体に反映させることができるから、市役所職員だったり、父親と二人暮らしの独身の息子だったり、呼吸するような自然さで観る人にそれが伝わります。特殊な才能だと思いますね。